ヘタフェバルサ走行距離

ヘタフェ柴崎、周りのレベルで引き出される「本気」【1-A】

ヘタフェ柴崎がバルサ戦で活躍した。

中継の中で、解説の人が何気なくこんなエピソードを紹介していた。
「現地スペインでは、柴崎のことを表現するのによくRapid(速い。素早い。)という形容が使われているのですが、鹿島にいた頃はあまり速いというタイプ・印象ではなかったように思いますが。。。」と。

その通りだ。
そしてこれこそが、今回の柴崎の海外移籍における重要な論点のひとつでもある。

ヘタフェで柴崎は、ファイナルサードに意外性をもってスルスルと進入したり、一瞬のタイミングで味方に鋭い縦パスを送ったり、ポジションを流動的に変えながら仲間のボールを受けにいき素早いワンタッチパスで相手のフォーメーションをかく乱している。判断の速さと素早い動きはたしかに場面場面で目を引く。

怪我でOUTする前の前半の走行距離は6.0kmで、両チームあわせた全選手中トップ。瞬間最大速度は32.3km/hで、チーム2位、両チームあわせた全選手中4位だった。
印象だけではなく、実際にこういった数字にも表れている。

ド派手な得点シーン以外にも、ボールをもったイニエスタに猛然と体当たりして慌てさせバックパスを誘発したり、ピケに激しいタックルを見舞って倒したり、ホルヘ・モリーナにあと10cmのところで合わなかったクロスなど、インパクトを残すプレーが沢山あった。

多くが鹿島では見られなかったタイプのプレーだ。
持ち味のゲームコントロールだけでなく、いろいろな面でJリーグの試合では見られなかった「本気」が引き出されている感じがする。

ヨーロッパ4大リーグに移籍して、日々全力で生き残っている日本人選手はみんな本当に凄い。しかし逆にいうと、上のレベルに放り込まれればもっとやれる選手でも、Jリーグでは周りのレベルが低いために、それを思いきり出すことができずにいたことを表してもいる。
柴崎もスペインに行って成長したというより、周囲のレベルによって元々持っていた能力が100%引き出され、かつそれが正しく称賛されている、というほうが的確な気がする。
久しぶりに本気を出せたのかもしれない。

サッカーはチームでやるスポーツだから、上手い選手がひとりでムキになってもしょうがない。周りのチームメイトと戦術理解や創造性、柔軟性、プレースピード、判断力などの面で差があると、チームとしてなかなか結果に結び付けられない。
そのため一人でも突破できる一部の恵まれた“個の力”を持った選手たちを除いて、ふつうの一般的な上位選手は無意識的に自分のレベルを周りに合わせてほんの少し下げることになってしまうのだと思う。

そういう意味で、サッカーは周りのレベルがとても大事だ。
人は同じ環境に長くいると、力の使い方が分かってきて本気を出す機会がなくなってくるし、何が自分の全力だったか思い出せなくなるものだ。

スペインでの柴崎を見ていると、つくづくそう思う。

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