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ズボンを履かずに祝った誕生日



シャワーは良い。
気持ちがいい。

僕は風呂にスマホを持って入る。
でも持続力がないのですぐ出てしまう。

風呂の話だぞ。

最近はずっと海外ドラマの「フラッシュ」を見ている。

コロナの影響であらゆる予定が飛んで、たまに入るオンラインの予定を覚えておくのが逆に大変だ。
いくつもある中のひとつなら、常に手帳を開いているし忘れない。

しかし、ぽっと入った予定ほど飛ばしやすい。
19時からオンラインの予定が入っていた。
マレーシアの児童養護施設の子供が誕生日を迎えたのだ。めでたい。
それをみんなでビデオ通話で祝おうというものだ。
素晴らしい。嬉しい。


僕は18時半に風呂入りした。
あと30分あるし余裕だろうと思い風呂に入った。


風呂に入りながらドラマをみていた。

『フラッシュ』は本当に面白い。
僕はウェルズとソーンが好きだ。

敵と味方なんていう陳腐な言葉ではいい表せないような関係性の中で、それぞれが美学の中で生きている。
ああ最高だ。
人間誰しも、いいやつとも悪いやつとも言い切れない間で生きているのだ。
そしてむやみにヒーロー集めをしないで、フラッシュ中心に回っていくのもまた良い。
あとCG、カメラワークなど監督の技も光る最高のドラマだ。

そんなことを考えていると時間を忘れる。
そろそろかなと時計に目をやった。






18:59


「やばい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

僕は秒速で風呂を出てパソコンを開いた!

よかった!!間に合った!!!



「ハッピーバースデーーイ!!!おめでとう!」

と僕は言った。






ズボンを履かずに。


もうこのビデオ通話が終わるまで席を立てない。
何があろうと席を立てないのだ。

Tシャツにパンツで異国の友人の誕生日を祝うことがあって良いんだろうか。
祝われる側にも大変申し訳ない。


ズボンを履き忘れた男のメッセージなど、部活引退の時にもらう色紙に書いてある「卒業おめでとうございます!高校でも頑張ってください!」くらい中身がない。

自分の見えている世界なんて、まるでパソコンの画面のように小さなものなのだ。
当たり前のように笑っているあの人も画面の向こう側でズボンを履いていないかもしれない。



70人を超えるビデオだった。
司会の人が「チャットでおうち時間の過ごし方を教えてね」というので

「長湯がおすすめ!19時の1分前まで入っていて光の速さで出てきました」

と書いたらなぜか僕のコメントだけ77人にスルーされたことも記しておく。



5月なのにやけに暑い日のことだった。


どうも。 サッと読んでクスッと笑えるようなブログを目指して書いています。