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『DUNE 砂の惑星』

見よう見ようと思ってなかなか行けてなかった『DUNE 砂の惑星』、やっと映画館で見ることができました。不勉強で調べて初めて知りましたが、duneという単語は一般名詞で単に「砂丘」を指すんですね(鳥取砂丘であれば The Tottori Sand Dunes)。

映像、美術、音楽

映像の質の良さは真っ先に印象に残りました。メインビジュアルとなる黄色ろく烟る砂漠は非常に美しく、場面場面のアングルや絵作りもかなり工夫されています。サンドワームが出現する前の砂が波打つ様子や、主人公親子が放浪する際に超える巨大な砂丘、砂嵐の重量感など、砂漠のさまざまな表情をミクロとマクロを使い分けながら写し、単調にならないようなこだわりが見て取れます。

服装やメイクも白眉の出来でした。ハルコンネン軍の昆虫のような鎧やベネ・ゲゼリットの中世風のローブは、砂や風などの環境とうまくマッチしており、全体を通して一貫したエキゾチックなスタイルは率直にカッコ良いです。

敵役のハルコンネン男爵の特殊メイクもインパクトありました。「強欲で肥満体の敵役」というのはいろんなメディアで登場するあるあるモチーフですが、今作のハルコンネンは丁度人間とモンスターの中間くらいの絶妙なデザインで、特にユエ医師を殺害するシーンなどはその威圧感を十二分に表現できていたと思います。急に伸び上がったり石油みたいな液体に浸かって療養しているのも面白かった。あとはいろんなところで言われていますが、ロゴは秀逸(⊃∪∩⊂)。

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ストーリーと世界設定

原作を読んだのは中学生のころであまり記憶に残っていないのですが、英雄物語+SFは今でも通用する王道ですね。ただ、本作はアクションやドックファイトの描写がかなり削ぎ落とされていて、ドキュメンタリーのように場面場面を淡々と写しているのはかえって面白かったです。わかりやすい娯楽シーンはダンカンの大立ち回りくらいでしょうか。

登場人物の人間関係でいうと、父子関係は結構あっさりとしている一方で、主人公の母のレディ・ジェシカに設定が盛り込まれているというのはこの手のストーリーでは珍しいかもしれません。それだけに都落ちのあとにポールが(男性の)当主として母親を庇護に置き、ジェシカがそれに当然のように従う中世的な母子関係には違和感を覚えました。

また、これはSF映画あるあるではあるのですが。人口が世界設定の規模に比べて小さく、惑星レベルの権益を持っている貴族同士の争いが数百人同士の戦いとして表現されているのは気になりました。全体的に世界が疎で寂しげです。ただ、人口増加スピードを大きく超える速さで人類の活動領域が広がればあんな感じになりそうですし、そもそも人口は必ずしも増えるとは限らないという点からすると2021年ではかえってリアルな設定かもしれません。

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