月記:2022.03
仕事の都合で今月からニューヨークに引っ越しました。書類手続き地獄でバタバタしていてあまり小説も読めてないですが、今月楽しんだコンテンツについて書きます。
Squarepusher『Go Plastic』
『ドライブ・マイ・カー』の名前をいろんなところで目にする影響か「My Red Hot Car」が聞きたくなり(肝心の映画自体は見ていない)、久々にアルバムを通して聞きました。プラスチックのようなチープさにかっこよさを見出す、というのがアルバムのテーマとのこと。実際、ドラムンベース+カノンコードで構成された、「I wish you could talk」はベタで安っぽいのになぜか泣ける。
原田眞人 監督『燃えよ剣』
飛行機の中で見ました。五稜郭に追い詰められた土方がでこれまでのことを振り返る、という構成なので、名場面集的な側面が強く出ています。
とはいえ、清川八郎の演説が仏閣で行われたり、お雪さんが無残絵をかいていたり、あまり浅葱色の羽織を着ていなかったりとアレンジが効いていて映像的にとてもよい映画でした。セリフはほとんど原作由来ですが、現代では古びた原作小説の価値感覚に沖田総司が反論するシーンもあります。
D・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』
湿地帯で孤独に生きる少女の成長を描く野生児ものです。恋愛やミステリ要素はかなり薄味な一方、湿地帯の生態系の美しい描写は圧巻。作者はもともと動物学者で、フィールドワークをもとにしたノンフィクションを書いているそう。専門家だけあって、『湿地は、沼地とは違う...』(7頁) という分で始まるプロローグから、すでに説得力を感じます。
ディスカバリーチャンネルとクラシックなアメリカ映画を同時に見たようなというと語弊があるかもしれませんが、ともかくそんなような良い読書体験でした。
岡本かの子『鮨』
いろいろな人に薦められながら、岡本かの子を読むのはこれが初めてでした。寿司屋の常連客の身の上話と言ってしまえばそれだけのストーリーだけれど、文章のリズムが完璧に均整がとれており、ページをめくるののが心地よい。樋口一葉の『十三夜』もそうだが、こういうリズム感はどうしたら身に着けられるのかと思う。とりあえず地の文の描写を現在形にすると、繰り返される日常の感覚がでてよいというのは勉強になりました。あと寿司がとても食べたくなります。
FROM SOFTWARE 『ELDEN RING』
引っ越しの直前に買ったので、あまり遊ぶ時間もなかったのですが、From Softwareゲームは2009年の『Demon's Souls』から欠かさずやっているので半ば反射的に買っていました。現代のファンタジーコンテンツには珍しく『指輪物語』などの20世紀前半の古典ファンタジーから(間接的にではなく)直接影響を受けた新古典的な雰囲気があり、それがかえって新しく感じます。
文字にするといろいろと気づくことがあるので、今後もできれば続けていこうと思います。
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