糸雨に濡れる夜の往還

糸雨に濡れる夜の往還
多くの子の手形が刻まれている

朽ちたベンチには襤褸切
包まれた人形が大きな目で微笑む

煌々とした奥の店から
皿やグラスの音に歓声が混じる

脚下に埋もれた板紙
幽かな痕跡は、パンを下さい

ベンチを見返すと
赤子を胸に抱く母親

虚空を仰ぐと雨は針
舗道の楓は赤黄の濁流

【ATAEOB0】