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彼女は止まり木から墜ちた

彼女は止まり木から墜ちた
さいごの力ではばたいて
折れた白羽が籠に舞い
綿雪のふるしずけさにつつまれた

雪の野に横たわる彼女を掌に拾う
拍動も筋肉の衝動も絶え
たちまち趾は空をとらえて硬直し
舌のみえる嘴から氷の泉がながれでる

光をためた黒水晶を闇が浸食し始める
開いた瞼は凍りつき添えた手ではしまらない
ふき払われた雪原の下は凍結した湖
気泡ひとつない純氷の漆黒

そのまるい密な結晶はもう
ためた光を放たず、私のかげも映さない
笑おうとも、怒ろうとも、お道化ようとも
彼女は私のかげをうつさない

雪降る湖上の厳粛な絶対沈黙
六花のふれあう音が湖に沈む

この氷原にたつ者は私だけだ

白箱に庭から切った花を添え
周囲のさみしい空白を埋める

冬花の色彩豊かな香が部屋にみちる

一つおくたびに
花弁がちいと啼き
百花となって飛びまわる

扉が開き香がぬけ散華が紙花と変じて消えうせる

帰宅した家族の沈黙 と号泣
氷柱が家を貫き立ち墓標となった

【AN0DJB1】

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