見出し画像

この窓枠だけが世界に開かれていた

この窓枠だけが世界に開かれていた

先月いや昨日、手前の緑深い立木には
鳥たちが枝枝の間を縫い跳び呼び交わしていた

家々の連なる向こうには
高層ビル群が立ち並び、鮮紅色の夕闇が
影画でその街並を浮き彫りにしていた

窓外を見るソファには尻型が刻まれ
何度もうたた寝をした

今日いや今、何かが身体を貫いた
世界は白くなった
風が通り抜けた
世界は黒くなった

立木は朽ちた根株となり
砂埃はただ昏く
ガラス片から染み出す黒い血が
足下に溜まり
前のめりに倒れた瞼はただただ重く
死鳥の黒羽が舞い翻る

砕けた窓枠が、焦土に埋もれていた

【AT0MDAI】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?