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東北一周自転車旅(27)山形県天童市〜山形市

東北一周自転車旅
第27ステージ
山形県天童市〜山形県山形市(27km)

ホテルの朝食バイキングでは山形名物の芋煮や玉こんにゃくを食べられた。食後、朝風呂を浴びて、1時間ほど日記を書いてから10時に出発。

玉こんにゃくと芋煮
ホテルに無料のコーヒーサーバーがあるとダメになってしまう

まずは再び「腰掛庵」を訪れ、取り置きしてもらっていたわらび餅、柚子わらび、栗名月を購入した。わらび餅は常温保存で大丈夫だが、残りの2つは要冷蔵のため、近くの「山形県総合運動公園」のベンチですぐ食べることにした。

ベンチに腰掛け、あ〜んwww

柚子わらびのひんやりとしたプルプル感と柚子の香りが良かった。栗名月は甘過ぎず、上質な味。わらび餅はホテルに着いてからのお楽しみ。

「栗名月」と「柚子わらび」

今度は松尾芭蕉の句「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」で有名な山寺(立石寺)を目指す。途中、青いユニフォーム姿の人々が続々と公園に入っていった。「何のイベントだろう?」と思ったら、ここはサッカーJ2「モンテディオ山形」のホームスタジアムで、今日これから「SC栃木」との試合があるようだ。

モンテディオ山形のホームスタジアム

さらに、左右に農園が広がる小道を進む。木々にはリンゴや山形名産のラ・フランスがたくさん実っていた。ラ・フランスは木の下にもたくさん転がっていて、農家のおじさんが拾い集めていた。昨日の強風で落ちてしまったらしい。一方、リンゴは全然落ちていないから、ラ・フランスは風に弱いのだろうか。

まるで打ちっぱなしのゴルフボール

そういえば、ラ・フランスはもちろんのこと、リンゴがこのように木に実っているのを、もしかしたら初めて生で見たかもしれない。

リンゴって重たいのに、よくこんな細い枝で耐えられるな

30分ほど緩やかな傾斜を登り続け、山寺駅に到着。連休中日ということで、たくさんの観光客で賑わっていた。

山寺への道
「面白山」という山を発見

駅から正面の山を見上げると、上の方にお寺の施設がちらほらと見えた。あそこまで、1080段の石段を登って上がるのだ。

山寺駅からの景色。あの山に立石寺がある
わかるかな?

駅に自転車を停めて、出発。

ぼくが立石寺に来たかったのは、中学の国語の授業の影響だ。松尾芭蕉の「奥の細道」を学んだとき、題材として取り上げられたのがこの立石寺、通称「山寺」の話だった。

以下が「奥の細道」の原文と現代語訳。

<原文>
山形領に立石寺といふ山寺あり。
慈覚大師の開基にして、ことに清閑の地なり。
一見すべきよし、人々の勧むるによりて、尾花沢よりとつて返し、その間七里ばかりなり。

日いまだ暮れず。
ふもとの坊に宿借りおきて、山上の堂に登る。
岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音聞こえず。
岸を巡り、岩をはひて、仏閣を拝し、佳景寂寞として心澄みゆくのみ覚ゆ。

閑かさや岩にしみ入る蝉の声

<現代語訳>
山形領に立石寺という山寺がある。
慈覚大師の創建した寺で、とりわけ清く静かな地である。
一度見るほうがよいと、人々が勧めるので、尾花沢から(予定を変えて)逆戻りし、その(山寺までの)間は七里ぐらいの距離である。

日がまだ暮れない(うちに着いた)。
麓の宿坊に宿を借りておいて、山上にある堂に登る。
岩に岩を重ねて山となっており、松や柏などが樹齢を重ねて、土石も古びて苔が滑らかに(覆っていて)、岩山の上のいくつもの支院は全て扉を閉じていて、物音ひとつ聞こえない。
断崖を巡り、岩をはうようにして、寺院を参詣すると、素晴らしい景観はひっそりと静まりかえって、心が澄みきってゆくのだけが感じられる。

なんという静寂であろう。その静寂の中で、蝉の声だけが岩にしみこんでゆくように感じられる。

芭蕉の句

うろ覚えだが、この本文と一緒に、立石寺が小さな写真で紹介されていた。中学生ながらに「すごい場所だなあ」と思ったのを覚えている。その印象が強く残っていて、寄り道にはなるが訪ねてみたいと思ったのだ。

ところで「立石寺」の読み方は、「りゅうしゃくじ」と覚えていたが、それは古い読み方のようだ。現在は「りっしゃくじ」と読むそう。でもぼくは馴染みと愛着があるので「りゅうしゃくじ」と読みたい。漢字で書いてしまえば同じだけどね。

山のふもとにはお土産物屋さんが並び、そこを通り過ぎていくと登山道が始まる。

立石寺の山道

ひたすら石段を登るので軽い登山だったけど、自転車旅で鍛えられたため、呼吸も乱れず余裕で登れた。でも周囲の方々は息を切らして休み休み登る人も多く、「え、まだ3分の1なの?」「明日は筋肉痛だね」といった声も聞こえた。ぼくはこの1ヶ月間、毎日筋肉痛なのである。この石段を登っても登らなくても明日は筋肉痛だろう。

1080段の石段を登る

でも、山道は美しかった。歴史を感じさせる木々に、ときどき巨岩も。細い道を、登る人と下る人が行き交う。それは何百年も昔から変わらない立石寺の光景なのだろう。

行き交う人々

ようやく山の上に到着。五大堂は展望台になっていて、周囲を一望できた。風情のある景色だ。

展望台からの眺め

また、国語の教科書に使われていた写真の風景も目にすることができた。記憶が朧げではあるが、おそらくこの納経堂の写真だったのではないかと思う。この巨大な岩が印象に残っている。

この景色が見たかった

見たかった立石寺。20年越しの生の景色に、「ああ、これだ〜」と立ち尽くして感動した。

奥之院と大仏殿を参拝してから山道を降り、下の「ふもとや」でソフトクリームを買った。「マツコの知らない世界」で紹介され、マツコが絶賛したというサクランボのソフトクリーム。おいしかった。

さくらんぼのソフトクリーム

13時半。山寺駅前のそば屋が繁盛していたので食べようかなと思ったけど、行列がすごかったので諦めた。まだ食べなくても我慢できたので、近くにある「山寺芭蕉記念館」へ行った。

山寺芭蕉記念館

芭蕉の直筆の資料などもあったが、昔の字なのでほとんど読めない。ざっと眺めたあと、研究者が「奥の細道」のルートを実際に辿りながら解説する映像資料を椅子に腰かけて観ていた。前夜5時間しか眠れなかったため、強い睡魔に襲われ、少しうとうとした。でもおかげでリフレッシュできた。まだ山形駅まで10kmくらいあるし、眠気を吹っ飛ばせたのは良かった。

「奥の細道」のルートも改めて辿ってみた。東北の土地勘がついたから、以前よりも理解しやすい。ぼくはかつて、「奥の細道」のルートを実際に歩いて旅しながら、各地で俳句を詠んでみる「新・奥の細道」という企画を思いついたことがあったが、結局実現はしなかった。俳句にまったく自信がなかったのが大きい。

奥の細道のルート

芭蕉は当初から立石寺を訪れるつもりでいたわけではなく、旅の途中で人から勧められて、立ち寄ることにしたという。もし芭蕉がこの場所を訪れなていなかったら、現在の立石寺はどうなっていただろうか。今ほど有名にはなっていなかったのではないか。

いや、しかし芭蕉の句を抜きにしてもこの場所は素晴らしいから、やっぱり結局は現在も名所になっていたかもしれない。歴史のifを考えても仕方ないけど、なんとなく気になってしまう。

山道のはじめには松尾芭蕉の銅像も立つ

山寺を出発。前半は坂を下るだけだから楽だった。後半も市街地の平地のみ。30分くらいで山形駅に到着。そして駅近くの「山形国際ホテル」にチェックイン。

JR山形駅

結局お昼を食べられなかったけど、今朝買った「腰掛庵」のわらび餅があったのでこれを食べることにした。大粒で、とろける食感がなんとも言えずおいしい。これは確かに素晴らしいわらび餅だ。こんなわらび餅が東京にあったら、人への手土産にしているだろう。

腰掛庵のわらび餅。最高だった

夕方は山形駅のスタバで作業し、駅構内の「平田牧場」で金華豚のロースカツ定食を食べた。なんでもモンテディオ山形の試合当日は割引があるそうで、「そうだ、今日試合日じゃん!」とテンションが上がった。今日もツイてる。

金華豚のロースカツ定食

そして夜はラグビーW杯のアルゼンチン戦、そしてプレミアリーグのブライトン対リバプールの一戦を観戦した。

ほろり途中下車の旅

<今日のお金>
腰掛庵 1300円
立石寺 300円
芭蕉記念館 350円
スタバ 460円
夕食 2200円
ホテル 7298円

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