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ブックオフのアプリはすごい

仕事や用事で、川崎に出ることが多い。川崎に来ると、ぼくはよくブックオフに立ち寄る。

何か特定の本が買いたいときは、最初から普通の書店へ行く。もし読みたいのが古い本で、図書館で借りられるなら、最近は図書館で借りるようにしている。これ以上所有すると部屋が本で埋れてしまうからだ。小さな部屋なのに、本棚3つでも収まりきらず、250冊くらいある。買い過ぎた。

じゃあ何が目的でブックオフへ行くのかというと、これはもう本好きの「遊び」に近い。ズラリと本が並んでいるのを眺めるだけで楽しいのである。特に好きなのは文庫本コーナー。作家ごとに作品が並んでいる。海外作品、歴史小説、SF、古典、なんでもある。

しかしなんと言っても童心に帰れるのは、文庫本の100円コーナー(税込み110円)である。ここに掘り出し物がないか探すのが楽しい。まずブックオフに入ると、ぼくは100円コーナーの「出版社別」の棚へ向かう。そこには新潮文庫、文春文庫、講談社文庫、角川文庫、小学館文庫など、大手出版社のエッセイやノンフィクション作品が並んでいる。ここには名著が多い。もしまだ読んでいなくて、小澤征爾『ボクの音楽武者修行』、星野道夫『旅をする木』、植村直己『青春を山に賭けて』、片桐はいり『わたしのマトカ』、岡本太郎『自分の中に毒を持て』、サイモン・シン『フェルマーの最終定理』などがあったら、迷わず買いである。こんな素晴らしい本がたった100円で読めるなんて。そしてそれにもかかわらず読まない人が、世の中にたくさんいるなんて。せめてここに置かれていないで、誰かひとりでも多くの人に読まれてほしいと願う。

ぼくはときどき、1万円で(正確には1万1000円で)ここにある良書を100冊買って、小さな図書館を開けたらどんなに素晴らしいだろうかと考える。普段本を読まない高校生や大学生は、まず「何が良い本なのか」がわからないかもしれない。自分が心からおすすめしたい本を並べて、「面白かった」「読んで良かった」と言ってもらえたら、これほど嬉しいことはない。ライトな自己啓発書よりも、小説やエッセイ、ノンフィクションの名作を勧めたい。

そして、ぼくが次に向かうのは村上春樹の文庫本コーナーである。これも多くの作品が100円で買えてしまう。彼の小説もぜひ読んでほしいが、まだあまり読んだことがないのなら、イチ押しはエッセイである。スキマ時間に気軽に読めるから。『村上ラヂオ』は1〜3があるが、それぞれ独立しているのでどれを買っても良い。ananで連載されていた1500字くらいの短いエッセイが50本くらい入っていて、全部面白い。エッセイのお手本である。『走ることについて語るときに僕の語ること』も素晴らしいエッセイで、かつて大きな影響を受けた。これは持論だが、村上春樹の作品には、読むだけで文章がうまくなるような効果があると思う。もしぼくの文章を「読みやすい」と思ってくれる方がいるとしたら、それは大学時代に村上春樹を読んだおかげである。ぼくの文体は彼に影響を受けている。

司馬遼太郎のコーナーへ行くと、大抵『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』などはだいたい全巻そろっている。どちらも全8巻だから、800円で揃ってしまうのである。これも「図書館」に加えたいなあと妄想する。こうしていくと、自分の好きな本だけで余裕で100冊組めてしまいそうだ。

さて、最近ぼくがすごいなと思うのは、ブックオフのアプリである。このアプリ、よく行く店舗をお気に入り登録すると、月に2回、その店舗で使える「100円引き」のクーポンが発行される。これを使えば、ただでさえお得な110円の本が、10円になってしまうのである。「お会計、10円になります」と言われるときは軽く背徳感を覚えるが、「このまま本棚に眠らせておくよりも、自分が読んで成長して、世の中に還元していった方が有益だ」と自分に言い聞かせ、10円で買ってしまう。10円に抵抗があれば、2冊買って100円引きにしてもらえばいい。

こうして掘り出し物をゲットできたときは嬉しい(結局部屋の本が増えることになるが、読み終わったら誰かにあげたり処分したりすればいい)。村上春樹のエッセイなどは、出かけるときにカバンに忍ばせておくとちょうどよい。このクーポンを使うためにまだ読んでいない良書を探すことが、月に2回のささやかな楽しみ、村上春樹の言葉を借りるなら「小確幸」(小さいけれども、確かな幸福)である。

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