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もうちょっとできると思っていた

あれは確か、ぼくが社会人になって4年目の頃だろうか。大手外資系企業に勤めていた大学の友人が、突然会社を辞めて、ひとりで事業を始めた。

会社での年収は決して悪くなかったはず。それを手放すということは、さぞかし稼げるビジネスを見つけたのだろうか。素晴らしく優秀で、ガッツのある男だから、ぼくはなんだか羨ましいなと思っていた。

それから半年ほど経って、彼と久しぶりに会った。

「ひとりで仕事を始めてみて、どう?」

と軽い気持ちで聞いてみたら、

「月5万稼ぐのがどれだけ大変かわかった」

と話したので、ぼくはガツンと大きな衝撃を受けた。

この優秀な男が、それほどまでに苦労していたなんて・・・。そんなに厳しい世界なのか・・・。

でも普通、そんなに生活が苦しそうだとわかったら、絶対に羨ましくなんて思わないハズなのに、なぜかそのとき、ぼくは彼の生き方に憧れた。

自分が「本当はいくら分稼いだのか」よくわからないまま、毎月決まった日に決まった給料が振り込まれるよりも、実感をともなった5万円を稼ぎたいと思った。

彼の言葉はずーっと頭の中にあって、それから3年後、ようやくぼくもフリーランスになり、当時の彼と同じような状況になったわけだけど、5万円どころか、最初の3ヶ月はほとんど無収入に近かった。

フリーランスになって3ヶ月目、ぼくは泣きながら、ブログに心境を吐露した。

正直、こんなに自分が何もできないとは思ってもいなかった。

もうちょっとできると思っていた。

会社の力を借りず、何もないところから5万を稼ぐのは超大変だとわかった。

想像以上に、現実が厳しいことを知った。待っているだけでは全然仕事がこないし、職業ライターの大変さも感じた。

そしてそんな状況でも甘えさせてくれるはずはなく、国民年金や健康保険、住民税などがしっかりとぼくの手元から羽ばたいていく。

しかももう、決まった日に、決まった給料は振り込まれてこないのだ。

会社員ってすごいと思った。交通費だって出してもらえる。

「ほら、だから手に職つけろって、何っ回も言ったじゃん」

かつての上司の声が聞こえてくる。

ただそれでも、辞めてみて、生身の自分を社会にさらしてみたからこそ、わかったことはたくさんある。

無能だとわかったことも、変に自信を持ったまま会社員を続けているよりはマシかもしれない。

まだまだスタートライン。

にすら立てていないかもしれないけど、道は始まったばかり。

書くしか能がないなら、書きまくれ!‬

こういうときこそ、外の世界に目を向けてみよう。外の世界に、自分の力で、何か解決できそうなことはないか、考えてみよう。自分の力が必要とされているものがないか、探してみよう。‬

なかなか結果が出せず、不安に押し潰されそうな日々だけど、だからこそ頑張ってみようと思う。自分で望んだ道だ。簡単には諦めない。

ここから上がるしかない。かっこつけたってしょうがない。現実から目を背けるわけにはいかない。とにかく自分の力で生き延びる。

どんな状況でも、あくまで前向きに。守りに入らず、攻めていきたい。

数年後、「あのときは辛かった」と笑いながら回想できるように。

ちょっとランニングしてくる。絶対負けないし。


ドン底を味わいながらも、道を諦めず、攻め続けてくれた当時の自分にお礼を言いたい。おかげで今は、「そんなこともあったなあ」と笑いながら回想できているのだから。

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