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「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない

レイチェル・カーソンの最後の著書となった『センス・オブ・ワンダー』を9月のはじめに読んで以来、ぼくは毎朝、近所の公園を散歩するようになった。

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彼女はこの本の中で、甥っ子のロジャーと過ごした日々、すなわち、小さな生命や広大な自然とのふれあいの日々を綴っている。まだ2歳にも満たないロジャーを連れて、嵐の夜の海岸や、森へと出かけていき、一緒に自然を楽しむ。

「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない“センス・オブ・ワンダー = 神秘さや不思議さに目をみはる感性”を授けてほしいとたのむでしょう」
「わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、様々な情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、驚嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけ出した知識は、しっかりと身につきます」

ぼくはスマホをしまい、公園を歩く。朝日を浴びて輝く木々、池を泳ぐカモや亀、セミの鳴き声が秋の虫の鳴き声に変わった日の涼しさ、金木犀の甘い香り、葉の色の移ろい……。そういうものを全身で感じながら、自然の尊さについて考えるようになった。

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名前も知らない花や植物はたくさんある。しかし、「知ることは感じることの半分も重要ではない」のだ。世界をよく観察し、美しさを感じる瞬間をもっと持ちたい。自然に触れる時間をもっと増やしたい。そう思うようになった。

「みんな電力」広報のちぇるさんに出会ったのも、その頃だった。彼女はキウイが大好きで、毎日欠かさず3つ食べているという。

「そんなにキウイが好きなら自分で作ったらいいじゃん」
「将来本当に、キウイ農園をやりたいんです」

と真剣な表情で言ったとき、「それなら」と、ぼくはある男のことをすぐに思い浮かべた。

「中学の同級生が横須賀で無農薬農業をやっていて、おもしろい男だし、彼に会えば何かヒントをもらえるかもしれない。今度一緒に畑を訪ねよう。ちょうどぼくも『センス・オブ・ワンダー』を読んで、土に触れたいタイミングだったんだ」

ちぇるさんと会ったまさにその前日、フットサル仲間の結婚パーティーで、農家の友人、仲野翔と数年ぶりに再会したのはまったくの偶然だった。こういうのをシンクロニシティと呼ぶのだろう。

早速、「おもしろい友達ができたので、紹介がてら農業体験をしに遊びに行ってもいいかな?」と尋ねると、「もちろん。じゃあサツマイモと落花生掘りをしようか。せっかくなら洋太の方で何人か集めてくれるとありがたい」と言うので、ぼくの仲の良い友人たちに声をかけた。思いのほか人気で、わずか一日で15人が集まった。

昨日、その友人たちを連れて、三浦半島で唯一「有機JAS規格」認証を受けている無農薬・無化学肥料の農園「SHO farm」を訪ねた。自然豊かな環境で、約100種類の野菜と果物を生産している。

仲野が飼っている大きなブタに驚き、サツマイモを掘り、空芯菜を摘み取った。

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それからニワトリを抱っこし、採れたて野菜を使ったランチを食べ、午後は草堆肥を作った。

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雑草を一箇所に積んで上から米ぬかをかけ、ジャンプして固めると、時間をかけて発酵していくのだそうだ。

知らないことだらけだったが、五感で味わった体験は、きっといつまでも覚えている。自然のなかで、みんなと話しながら身体を動かすのは心地良く、あっという間に時間が過ぎた。

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お開きのあと、ちぇるさんから「間違いなく私の将来にとって最も重要な日になりました」と言われて、企画した甲斐があったと思った。ライターという肩書きにとらわれず、自分が良いと思った企画や、素敵な人たちを結びつける活動は、これからもライフワークとしてやっていきたい。

NHK「おかえりモネ」プロデューサーの倉崎憲さんやタレントの三原勇希ちゃんをはじめ、各業界で輝く素敵な友人たちが集まってくれて本当に楽しかった。コロナ禍でイベントなどから遠ざかっていたため、このように多くの人たちと会うのは一年以上ぶりのことだった。ぼくにとってもみんなから元気をもらえる時間になった。

「知ることは感じることの半分も重要ではない」

この言葉を忘れずに、何かを全身で感じる時間を増やしていきたい。

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