母校の創立60周年記念式典で講演しました
昨日、母校である神奈川県立追浜高等学校の「創立60周年記念式典」で講演を行なった。大事な出来事だったので、振り返っておきたい。
登壇の経緯
最初に式典での登壇オファーをいただいたのは、1年以上前の2021年8月のことだった。
10年に一度の大事な行事で、しかも全校生徒(800人以上)に向けて話すことになるという。大役に不安もあったが、
「中村さんが高校を卒業されてから、今現在に至るまでの経験を話してほしい。それが生徒たちのためになると思うんです」
と先生からお願いされて、少し肩の力が抜けた。「それで良ければぜひ」と引き受けさせていただいた。
これまで都内のいくつかの高校でキャリアをテーマに講演をしてきたが、今回は母校ということで格別の思いがあった。後輩たちのためにも頑張りたい。
講演の準備
講演テーマは「人生における回り道について」
スライド作りに取りかかる前に、一度自分のキャリアを棚卸したいと思い、9月末頃から1ヶ月かけて「講演のための思考メモ」という全26回の連載を書いた。そこに、高校時代の自転車との出会いから、フリーライターとなった現在までのキャリアを紹介した。ライターになった経緯のほか、様々な経験からの学びや気付きをまとめた。
その内容を凝縮し、1時間分の講演スライドを作成した。それでもスライドは200枚を超えた。
また、過去を振り返るなかで、現在における課題も見つかり、自分にとっても次のステージに進むための機会になった。
講演当日
追浜駅に着いて、懐かしい気持ちで高校まで歩いた。町の風景はほとんど変わっていない。
すれ違う生徒たちは、みんな「こんにちは〜!」と挨拶してくれる。明るく人懐っこそうな雰囲気は、昔と変わらず追高生らしかった。
校舎は一部新しくなっていたが、それ以外は変わらない。
気になって図書館を覗かせてもらった。
漫画がたくさんあって驚いた。『進撃の巨人』、『ONE PIECE』、他にも名作がたくさん。ぼくらの頃、学校で読める漫画と言えば『はだしのゲン』か手塚治虫くらいのものだと記憶しているが、時代は随分変わった。漫画版『三国志』も全巻揃っていた。生徒たちにはぜひ読んでもらいたい。ぼくは3年前に全巻読んで、「もっと早く読んでおけば」と後悔した。歴史に興味を持つきっかけになった。
小説やエッセイ、ルポタージュなども良い作品がたくさんあった。高校時代は、一度も学校の図書館で本を借りなかった。勝手に「退屈な本が並んでいるところ」と思い込んでいたかもしれない。でも大人になって様々な本を読むようになり、改めて図書館の棚を眺めてみると、全然違って見える。何日間ここで過ごしても飽きないくらい、素晴らしい本がたくさんある。高校生の頃はそれがわからなかった。
ぼくが本好きになったのは大学生になってからだったけど、高校生のうちに小説などをもっと読めていたら良かった。追高生たちは「どんな小説がおすすめですか?」など聞きたいことがあれば、気軽にインスタで質問してほしい。そこで良い情報、良いやりとりが生まれたら、学年の垣根を超えてをシェアしていきたい。知をオープンにすることでお互いに高め合える。
講演本番とその後
さて、いよいよ講演本番。体育館には3年生と定時制の生徒が集まり、コロナ対策のため1、2年生は各教室からのオンライン視聴となった。
講演では、ぼくがこれまでの人生で経験した様々な「回り道」を紹介した。その目的は、生徒たちに「人生の回り道」に対する「免疫」をつけてもらうことだった。
誰の人生にとっても、「すべて順調にうまくいく」「成功しかしない」なんてことはあり得ない。追浜高校の生徒たちも、これからの人生で困難に直面することがあるだろう。
そのとき、「回り道」をネガティブにではなく、ポジティブに受け止めることができたら、人生をより楽しめるし、ピンチもチャンスに変えて、より良い方向に進んでいけるはず。
今はまだよくわからなかったとしても、人生のどこかで、この日の話を思い出してもらえたら嬉しい。生徒たちの感想はまだ確認できていないが、少しでも心に残る話になったことを願う。
講演終了後、先生方からとても嬉しい感想をいただけた。とくに校長先生が喜んでくださって良かった。「生徒たちからあんなに質問の手が上がることは珍しい」とのことだった。
実際、質疑応答では「これまでの人生でして良かったなと思う失敗はなんですか?」「文章を書くときにどんなことを考えながら書いていますか?」などの良い質問が出て嬉しかった。前者の質問には「結果として落ちてしまったけど、東大を目指して本気で勉強したこと」、後者の質問には「カッコつけず、素直な気持ちを書くこと」「起きた出来事だけを書くのではなく、過程を含めて書くこと」と回答した。
講演後には、OBOGの音楽家たちによるコンサートが開かれた。こちらも素晴らしかった。ドイツで活躍されるオペラ歌手の松永知史さんや、ヴァイオリニストの渡邊達徳さんらの演奏はたいへん貴重で、生徒たちも生で聴けて感動したはず。校歌も懐かしかった。
式典が終わると、体育館から出てきた3年生たちが「刺さりました! みんなで写真撮らせてください」と寄ってきてくれた。
また、夜には生徒のひとりから、インスタでDMが届いた。
講演を聴いてくれた生徒からだと思っていたら、なんと「聴けなくて残念だった」という内容で驚いた。先生や生徒たちにも読んでもらいたいので、許可をいただいて掲載することにした。
人の心を動かす、素晴らしい文章だ。また、noteに書いた全26回のキャリアエッセイを全て読んでくれたことにも感銘を受けた。本当にありがとう。彼には講演の動画をお送りした。
終わりに
この一年、常に頭の片隅にこの講演のことがあったので、無事に終わって良かった。長きにわたる重圧からようやく解放されてホッとした気持ちだ。
時間をかけて作り上げた講演用スライドは財産になった。この場限りでなく、これからも別の場所で講演する機会を持てたらと思う。
また、今回のご縁を大切に、追浜高校との交流は今後も続けていきたい。改めて、この高校が好きだなと思った。教員とは異なる立場から教育に携わり、生徒たちの挑戦、輝かしい未来を応援していきたい。
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