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リアル異世界転生おじさん

友人と岩手へ旅行へ行った。
旅行と言ってもそんな大それたものではなく、1泊2日の小旅行。小岩井農場へ行ってソフトクリームを食べて、盛岡冷麺を食べて、中尊寺金色堂へ行って、宿で殴り合い寸前のマジ喧嘩をして、秘湯(混浴)に入って、わんこそばを限界まで(111杯)食べて、、、とにかく2日間で岩手を満喫した。そして2日間の締めくくりとして今回の旅行のメインの目的であった、最強アーティストことPUFFYのライブへ行った。めちゃめちゃ楽しかった。amiyumi2人とも、「尊っ!」ってなるくらい綺麗だし歌上手いしMCおもろいしギターの新井弘毅は爆発しててめっちゃかっこよかったし、、、とにかく最強!PUFFY最強!。書き出すとキリがないので心にしまっておくことにする。

今回はこの旅行から帰ってきた時の話をしたいと思う。


PUFFYのライブを見て、そのままの勢いでカラオケへ行き、深夜に夜行バスに乗車した。本当は新幹線で帰りたかったけれどお金がないので仕方がない。

翌日午前10時、僕らは横浜駅へ到着し、その場で解散。
僕は駅の駐輪場停めてあった原付に乗って、大学へ向かおうとしていた。しかし、前の日の昼から何も食べていなくお腹が空いていたので、向かっている途中にあったうどん屋さんに入ることにした。

そこはよくあるチェーンのうどん屋さんで、トレーを持ってうどんの種類を注文して、並んでる天ぷらをとって、トレーをスライドさせてって会計をする、というタイプのところであった。


僕は肉玉うどんを注文して席に付いて食べていると、ボロッボロの見た目のおじさんが入ってきた。

白髪混じりの長髪で、毛玉だらけでゴワゴワのパーカーを着て、ところどころ穴の空いたジャージのズボンを履いていた。
たまに街で見かける「こらっあんまり見ちゃだめよっ」とお母さんが小声で子供に諭す感じの浮浪者っぽい見た目のおじさんである。

そのおじさんは店に入ってくるなり店員さんに質問攻めをしていた。
「あの、注文ってどうやって、、トレー?あっこれですか?この山からとっちゃっていいんですね?」

そこから注文口でざるうどんを頼んで受け取るとその場で財布を出そうとしていたので、店員から奥の会計口で会計を、と指示を受けていた。
「あっはい、わかりました。このままトレーを持っていけばいいんですね?はい。どーも!ありがとうございます!」

トレーをスライドさせて会計口に向かう途中の天ぷらが置いてあるコーナーで止まった。
「あのー、この天ぷらって取ってもいいんですか?あ!わかりました!ありがとうございます!」

かき揚げを皿に取り、会計口へ。会計を済ますと、次に無料のセルフサービス式の薬味コーナーがある。
「あのっこれって料金かかったりしますか?え?かからないんですか!ありがとうございます!...とる量とかって決まってますか?あ、はい、好きなだけ取ってもいいんですね?ありがとうございます!...あのっ取らなくてもいいんですか?ネギがダメなんですよ私。あっなるほど!ネギはやめておきます!ありがとうございます!」

「あの、ここってもしかしてお箸を使わないタイプのお店ですか?あっ席にあるんですね!ありがとうございます!」

「えっと、席って決まってますか?あ、どこでもいいんですか、ありがとうございます!」

「あのー...席の時間って制限ありますか?ああ、無いんですか、良かった良かった!ありがとうございます!」


えっどういう?タイムスリップしてきた人なん?けど普通に現代語しゃべるもんなあ。えっ何これ。どういうこと?は?
僕は肉玉うどんの肉が硬すぎて萎えながらもこのおじさんの生態について熟考した。意味わからないもんマジで。
なんでそんなルール確認するん?わかるじゃんだいたい。つーかどうやって生きてきたんこの人。は?


こうして僕はこの状況とおじさんの生態とを分析していき、結論づけに成功した。


異世界転生してきた人だわこれ!流行りの!転生モノじゃんこれ!なろう系の!


タイトルを付けるのならたぶん、「ルールを絶対守らなきゃいけない異世界から転生してきたら現代社会に慣れるのがむず過ぎる件について」だな。長え。
「ルル慣れ」でどうだろうか。


なるほどなるほど、と割った温泉卵を硬い肉に絡ませながら感心していると、なろう系異世界転生おじさんがトレーを持って立ち上がった。30秒くらいで完食していたのだ。席の時間気にしてたのはなんだったん?まあでも、世界から転生してきた人だから食べるペースが違うのは当たり前か。

「あのっトレーってどうすれば...?あっそこに返却すればいいんですね!ありがとうございます!...トレー返却口って書いてあるんですけど、器とかお箸はどうすればいいですか?あっ一緒で?一緒でいいんですか!ありがとうございます!」

やっぱそうだ。ルール守らないとヤバい世界線出身だわ絶対。これで小説書こ。

...書けるか?
まあいいや。


「ごちそうさまでした!ありがとうございます!」
おじさんはトレーを返却してきっちり挨拶をした。ありがとうございます!の口癖もちょっと気になるけど、おもろい体験したなあ。
「ルル慣れ」、いつか書こうかな。書けそうだな。

そうして店から去ったおじさんは、目の前の信号を余裕で無視して横断していった。


は???



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