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世界1周中(1年間22ヶ国38都市)にフト文章書き始めたらできた処女小説「ヨートピア」9/44


人間の時、月面着陸で世間を騒がせた時の映像のままで終わっていたので、月の景色は殺風景な印象だったが、いざ月に着いてみると、情緒あふれる佇まいが流れていた。それは月の砂たちがなんとも気品に溢れた佇まいでみんな楽しんでいるからだった。ここには地球のような風がない。だけど月の砂たちは風に流れるようにみんなで「エイサーコラさーわっしょいわっしょい。」と動いて楽しんでいる風だった。「みなさまはじめまして。人間の時は地球からよく見させて頂いてました。みなさんなにされてるんですか?」「おーいらっしゃい!わたしたちは風を作っているのですよ」「風をつくってどうするんです?」「風って気持ちがいいでしょ?わたしたちは風が好きだし、風を作るのも楽しいからやっているだけですよ」確かにみんな楽しそうに率先して動いている。みんなで動くことで波を作り、波動を作ることで風を作っている、そんな印象だ。「じゃああのクレーターはなんなんですか?」「あれは強くて巨大な風を作ることに成功した時にできる跡よ。巨大なクレーターほど巨大な風が作れた証なの。だからわたしたちはあのクレーターたちが誇りなのよ」「ここでは風を感じませんが、風はどこに行くんですか?」「地球よ」「え!?地球の風はあなた方が作って送り込んでくれていたんですか?」「そうよ。だから人間たちはお月見と言ってわたしたちに感謝して拝んでくれてたでしょ?あの団子は本当に美味しいわね。わたしたちはあれが食べたくて楽しみで風を作っているようなものよ笑。それに人間からは黄色に見えたはずよ。それは希望の光の色として発光してるわけ。人間はちゃんとわかっていたわよ」わたしは涙を流していた。わたしたちがどれほど風に救われたことだろう。どれだけ風の美しさ、包容力、優しさ、温かさに助けられたことだろう。その源が月の砂だったなんて、、、みんなで一丸となってセッセと健気に元気に楽しく動いているみんなを見ていて、涙が溢れていた。「どうしたの?涙を流して?」「嬉しいんです。みなさんにお会いできて。みなさんに感謝の気持ちでいっぱいなんです。本当にいつもありがとうございます」「笑 そう言ってもらえると嬉しいわ。わたしたちも動き甲斐があるってものよ。でも実はわたしたちも風の素晴らしさを教えて貰ったからこうして風を作れているの。わたしたちには風の先生が居る。それもこの先あなたは出会うことになると思うから、その時は先生によろしく言っといて頂戴ね。まーせっかくここまで来たんだからゆっくりして楽しんでいってね。わたしも戻るわ」「わかりました、本当にありがとうございました!」月の砂はみんなのところに戻り、流れにのって動き始めるとあっという間に居なくなってしまった。その後ウールと月を散策した。確かに色んなサイズのクレーターがあちこちにあった。月の砂たちによる地球のための愛情の大きさ、努力の数、仕事量、それらがありありと見て取れるクレーターの世界は静かに美しく佇んでいた。

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