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提案の型_管理部門ならどうする?

このnoteの概要

こんにちは、村井庸介です。

就職・転職における内定取り消し、自宅待機が増え今後のキャリアについて悩む方の話を聞く中、僕が世の中に貢献出来ることは何かと考え、働き方・キャリアについて、出版した2冊の著書をもとに、このnoteを始めました

前回までは、2年目社員の受注の事例でした。提案というと、営業のように企画提案する職種にイメージされやすいですが、提案の機会は社内での業務が多いスタッフにも数多くあります。今回は、私が管理部門にいた時の事例をお伝えします。

ソーシャルゲーム運営企業への転職

私が入社した時期は、売上の軸足をブログからソーシャルゲームに移行したときです。mixiやFacebookなどの普及によりSNSが一般的になりました。
ソーシャルゲームでは、GREEやDeNAといった会社が先行していましたが、私の転職先も環境の変化にうまく乗ることができ、売上が思いのほか上がってきて、すでにゲーム開発会社として成り立っていました。私は「さて、これからどうする?」という局面で入社したのです。

当時の社員数は約150名。月10名ペースで社員や常駐の業務委託が増えていました。管理部門が少ない会社では、入社手続きだけでてんやわんやです。

ソーシャルゲームは、従来のゲーム機のようにソフトを販売するのではなく、無料利用から始まり、アイテムなどの販売を通じてゲーム内課金をするビジネスモデルです。したがって、一度リリースしたら終わりというわけにいきません。常時、人員が張りついていなければならないのです。

たとえば、「1位になった人にはレアカードをプレゼント」といったイベントを常に行っていました。そうしたカードやイベントを届けないと、あっという間に新鮮味がなくなります。イベントの難易度も、ユーザーの状況を常時把握しながら調整しなければなりません。

あるいは、「1面から10面まで用意していたけれどクリアした人が予想以上に早く増えたので、大至急で15面までつくって追加しなくてはならない」といったこともあります。

もちろん、クレームも含めて、問い合わせも常に発生します。
ゲームのプログラムをつくったり、変更したりする人とは別に、自社のゲームの状況を常にモニタリングして、ユーザーに即時対応をする人が不可欠。それがカスタマーサポートです。

当時の自社が運営していたソーシャルゲームは5-6本でしたが、1本につきカスタマーサポートに3人くらい必要です。

6本としたら約20人。ソーシャルゲームの性質上、新規のゲームをリリースして本数が増えると、必要人員もどんどん増えるのです。
この急増する一方の人員コストをどうにかしなければならない。それが当時の会社が抱えている重大な問題でした。しかも、採用するということは、面談も増えるのでマネージャーや部長の業務がどんどんひっ迫することも問題の1つでした。

私は、ゲーム部門の管理担当として、この問題を解決するための提案を行うことになります。

カスタマーサポート部門の外部委託を提案

今回のプロジェクトの提案の相手となるのは、自社の経営陣です。
直接の相手となるのは、役員であるゲーム事業部の責任者(役員兼事業部長)でした。社内では私の上司にあたります。直属の上司である部長をはさんで、その上にいる責任者に提案をして、承認をもらうことが目的でした。

G:ゴール 
コストは抑えながら、業務品質の高いカスタマーサポート体制をつくる

この提案のゴールは、どちらかというとイシューから生まれています。増える一方のカスタマーサポート業務が、人員コストとして重荷になりつつありました。しかし、カスタマーサポートは顧客満足度を左右するソーシャルゲームの要であり、命綱ともいえる重要な業務です。品質を落とすことは絶対に避けなければなりません。

かといって余裕をもって採用しすぎててしまうと、あるゲームが思ったようにヒットしなくて休止した場合に、人が余ります。
そのリスクも避けたいというジレンマがありました。

そこで、人を抱えるリスクとコストをできるだけ抑え、なおかつ品質は維持することがゴールになったのです。

I:イシュー 
ソーシャルゲームのサービスを増やす中で、カスタマーサポートの人員が追いつかない。さらに、それをマネジメントする人材が社内にいない

新しいゲームができるとカスタマーサポートに人が必要になるのですが、ゲームごとにキャラクターの名前も違えば、ゲームのルールも違います。1人の人が3つのタイトルを兼任するのは難しいことです。

また、人数が増えると採用そのものも大変です。採用広告の費用が倍増する上に、人員数の問題で、毎回、部長が面接をしなければなりません。
時間給の高い部長の時間をとるという目に見えないコストも発生しています。採ったのはいいけれど、辞める人も出てきます。既存社員の時間は取られる。しかし人の数は増やさないとサポートができません。
将来ソーシャルゲームがさらに増えたら、もっと負担が増える一方です。
問題は、

①人員コストが増え続ける
②「ヒト」を管理できていない(将来できそうにない)

という2点に集約されると考えました。

S:ソリューション 
カスタマーサポートの業務をまるまる外部企業に委託し、その作業のチェックができる人材を採用する

この発想自体は、みんながうすうす考えていたことで、私の完全なオリジナルだというわけではありません。

現状でカスタマーサポートに携わっている人材に転籍をしてもらうのです。オペレーションやコールセンター業務を専門に受託運営している企業は、すでに存在していました。

そして社内には、その企業がちゃんと稼働しているかどうか、モニタリングする人を採用する。そうすれば、自社の負担は最低限になり、将来、ゲームの数が増えても対応できるはずです。

提携先は、カスタマーサポートに関する「ヒト」のマネジメントを熟知しています。経験も蓄積されています。人海戦術が必要な業務を、すべて自社で行うのはリスクもコストも高い。専門の会社に任せるということです。

O:オペレーション
メリットの試算。提携先となる企業のリストアップと交渉。マネジメントができる人材の採用

実はこの提案のキモは、オペレーションにありました。

「外部に委託したほうがいいんじゃない?」というアイデアはありましたが、実行に移す人がいなかったのです。
そこで、私が「やります!」と手を挙げた格好です。
コスト抑制のプロジェクトは過去に手掛けたことがあります。どういう試算をすればよいのか、どんな資料が必要か、ある程度の知識がありました。

その結果、現状のままの体制で会社が伸びていくとすると、将来的には年間数千万円のコストがかかることがわかりました。面接を担当する部長の時給を加えたら、さらに大きな金額になります。この提案の実行によって、それだけのコスト抑制効果があると明示できたので、説得力が生まれました。

提携先候補は、ある程度、絞られていました。交渉にあたって工夫したのは、自社データの開示でした。

それぞれのゲームに、1日にどれくらいの問い合わせがきているのか。問い合わせに対して、現状ではどれくらいのスピードで返信を出しているのか。どういうタイミングで問い合わせのピークが来るのか。

内情をありのままに開示して、提携先とかなり現実的な事前打ち合わせを行うことによって、「高品質なサービスを提供してもらえる」「正確な見積もりが出やすくなる」というメリットが考えられたのです。

そして、提携会社をマネジメントをする人材の採用は、上司である部長にお任せしました。これまでの面接経験を含め、私が面接をするよりも部長にお願いしたほうが効果的だと考えたのです。

V:バリュー 
コスト抑制プロジェクト、外部企業との交渉といった業務の経験がある

この提案の相手は社内の役員ですから、バリューは「なぜ私(村井)に任せたほうがいいのか」という付加価値になります。

いちばん大きな付加価値は、野村総研時代にコスト抑制プロジェクトを経験したことがあるということです。さらに外部との提携にあたって、どんな交渉が有利なのか(たとえば情報を開示するなど)、どうやって相手を納得させればいいのか、これらは私の得意とする仕事でした。

実際には「ほかに誰も手を挙げなかった」という側面もありました。要するに「必要だとわかっているけれど、誰もがやりたがらない仕事」です。私はそういう仕事こそやりたいと考えていましたので、うってつけだったのです。そうした背景が大きなバリューとなった事例でもありました。

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