歌詞を書いてみよう(本書き編)

では、いよいよ実際に歌詞を書いていきましょう。

作詞をする際、ラップやポエトリーリーディングでない限り、言葉はメロディーと共に歌われます。なのでシンガーソングライターの方で「詞とメロディーが同時に出てきた」というケースを除いて、大抵は歌詞を書いてからメロディーをつける「詞先(しせん)」と、既に出来ているメロディーに後から詞を乗せる「曲先(きょくせん)」のどちらかに分類されます。

今回は、詞先で進めてみたいと思います。

詞先はメロディーが無い分、文字数の制限などをコントロールしづらい難点がありますが、より言葉が伝わりやすい利点があります。今回は曲が付かないので、口ずさんでみてリズムが良ければOKというレベルで書き進めていきましょう。

まず伝わりやすい歌詞の構成ですが、下に添付した画像のような感じが素直な書き方になります。

画像1

曲は、1番2番ともにAメロ、Bメロ、サビという流れ。

書き出しは、歌詞の中でも悩む人が多い箇所だと思うのですが、前回の「下ごしらえ編」を実践して頂けていれば問題なくクリアできると思います。

サビに入れる言葉は、その作品のメインになる部分なので「下ごしらえ編」のSTEP4を参考に言葉を考えていきます。

さて、ここですんなりと言葉が埋まると良いですが、なかなかそう上手くいかないのが常です。

ノートを埋める

そこで、ルーズリーフやノートを活用する方法がおすすめです。何をするかというと、そのままずばり!そのページを言葉や文で埋めていきます。既に完成形が見えてきている場合も、更に良い言葉や表現が出てくる可能性がありますので、自由に発想しながらページを埋めていってください。まだ完成形が見えていない場合も、無理に意識しなくて大丈夫ですので、イメージにあった言葉を書いていきます。この時、前回の下ごしらえで作成した設定を見ながら作業を進めると、イメージから脱線せずに言葉を紡ぐことができます。

歌詞

上の写真のように、思いつくまま書いていきます。語呂や文体もとりあえず気にしなくて良いです。端からキレイに書く必要はないと思いますが、箇条書きスタイルや、小説のように詰めて書いていくスタイルでも良いと思います。ある程度埋まってくると、文字同士で化学反応が起きてきたりします。言葉尻があってきたり、韻を踏んでいるみたいになったり、、、もし用紙がいっぱいになってしまったら、新しいページを用意して書き足していくと良いですね。その際の注意点としては「一目で全体が見えるようにする」という事。ルーズリーフであれば、並べておけば良いですが、ノートを使う場合は、1ページ分を切って並べる必要があるかと思います。全体を俯瞰できないと、統一感が無くなったり、話が違う方向にいく可能性が高まってしまうんですね。

サビになる部分をピックアップする

そして、文字が埋まってくると、サビに使いたい言葉や文が見えて来ると思いますので、その箇所にカラーペンなどで印を付けたり、別の用紙に書き移して分かるようにしておきます。この段階で「サビに入れるメッセージ」が決まりました。また、書き出し(Aメロの頭)もサビに合わせて決まってくると思います。下ごしらえの用紙と、先ほど言葉で埋め尽くした用紙を見ながら、うまくサビに繋がりそうな情景描写を考えます。そこまで来ると、書き出しからサビに繋がる間の部分に入れたい言葉やイメージも見えてくると思います。だんだん歌詞の姿が見えてきましたね。

まだ言葉たちはブラッシュアップされていない状態だと思うので、ここから歌詞としての体裁を整えていきます。

メロディーを付けやすい文体に整える

さて、ここで少し脱線なのですが、歌は多くの場合4拍子です。もちろん3拍子やその他の拍子もありますし、名曲もたくさんありますが、それでも4拍子が王道ではあると思います。ですので、今回は4拍子で進めたいと思います。

AメロやBメロ、サビなどの各セクションは、4小節を1グループとして構成されています。その1グループの2回し(合計8小節)を区切りにして各セクションは出来ています。つまりAメロであれば、全体が8小節で、その中に4小節のグループが2つ入っているんですね。

そして、メロディーのフレーズを考える時に、この1グループは更に半分に分けらるケースが多いです。これには理由があるのですが、また別の話になりますので今回は省きます。

というわけで、絵にしてみると下のような感じになります。

グループ分け

単純に言えば、この赤丸4つで1セクション(Aメロ、Bメロなど)が出来ています。楽曲によっては、Aメロはこの8小節を更にもう1度繰り返したり、逆にBメロでは半分の4小節でサビに移行したりします。

では、先ほどピックアップした各セクション用の言葉たちを、歌詞として使えるように整えていきたいのですが、この赤丸4つを意識してみるとうまくいきます。便宜上、赤丸1つを1行に表記したとすると、各セクションが4行の文章で構成できます。配置してみてください。かなり歌詞っぽくなってきましたね。

さて、ここまで来て1つ疑問が生まれるかなと思います(1つどころじゃ無いかもしれませんが…)。

赤丸1つ分に入る文字数ってどれくらいなんだろう。

赤丸1つ分、つまり2小節に入る文字数は、端的にいえば「8拍の時間内で、言い切れる言葉の数」という事になります。…まったくピンと来ませんね。

実際には曲のテンポによって、最大でどれくらい詰め込めるのかは変わってくるのですが、無難に考えると1文字~15文字に収まるくらいが良いと思います。

ちょっと例を出してみますね。

画像4

赤丸の部分を赤のアンダーラインにしています。歌詞の変遷を3段階に分けて表しています。

上段の部分

上の段では、「このセクションではこう言いたい!」という言葉をピックアップした状態です。ただの文章です。

中段の部分

中段では、赤丸に合わせて上の言葉を4つに分けています。”Jewelry of my life”という言葉を繰り返すと歌詞っぽいなと思いましたので、2回登場させてみました。

下段の部分

下段では、赤丸1つ分の中に入れる文字数を1文字~15文字に収めるという視点から推考しています。

まず最初の”夕立ちみたいな恋でした”は13文字で、発音してみた感じも悪くないと思いましたので、変更していません。

次の”Jewelry of my life”は英語なので、カタカナで考えず英語の感覚でとらえます。そうすると4文字分くらい。特に問題は無いのですが、繰り返してもカッコいいなと思いましたので、2回繰り返しています。歌詞っぽいし、リズムが生まれて音楽的ですよね。

3つ目の歌詞は明らかに文字数がオーバーしています。だけど、こういう事は言いたいんだよなぁ、、、という場合ですね。こういう時は「言葉の圧縮」をするのが便利です。写真の例では、圧縮の後で言い換えもしているので参考になりづらいのですが。簡単に表すと”単語にしていく”というイメージです。

例えば「夏の夜に 空を見上げれば 天の川が輝いている」という言葉があったとして、これを圧縮していくと「夏の夜 天の川」で十分に聞き手に伝わるし、思い描く光景も変わらない事が分かります。そもそも「天の川」という言葉が、夏の夜に見えるモノというイメージがあるので、もっと圧縮すれば「天の川」だけでも良いんじゃないかと思いますが、このあたりはセンスかなと思いますし、僕は「夏の夜」という言葉も雰囲気があるので残しても良いと思います。

というワケで、「あなたと過ごした日々は 僕の大切な思い出」という箇所は「あなたとの思い出 大切」というところまで圧縮して「大切」を「抱きしめて」と言い換えています。その後、微調整して「あなたの思い出 抱きしめて」に落ち着きました。

最後の”Jewelry of my life”の再登場の部分は、2つ目と同様に繰り返しでも十分良いとも思いますが、少しひねりが欲しくなったので”Jewelry of my life. You're Jewelry of my life”という感じで、少し足しています。

こういう流れで他のセクションも埋めていけば、1曲完成するという事ですね。オススメの流れは①サビを書く②頭の情景描写を書く③頭からサビの間を書くという順番が良いと思います。

2番の歌詞を書く時は、慣れていない内は”1番の内容を別の言葉で言い換えたり””1番で書き切れなかった部分を書く”ようにすると、ぶれずに進められます。ドラマのようにストーリーを進めてしまうと、世界観が崩れて収集がつかなくなる事もあります。でも慣れてきたら、ぜひとも挑戦してみてくださいね。


というワケで、今回は下ごしらえとしてテーマを決めてから、徐々に具体的な設定を作っていく方法と、文字を溢れさせてから、各セクションへのピックアップと調整をする形での作詞の方法をお伝えしました。

作詞の方法自体は他にもありますので、試してみると、たとえ同じ題材を持ってきても、また新たなアプローチで表現できて面白いと思います。

合わせて作曲と、簡単でも良いので伴奏できるようになれば、もう立派なシンガーソングライターの誕生ですね。素敵だな。

松浦洋介は、このような作詞のレッスンや、作曲、ボイストレーニングなども承っております。ご希望の方はご一報ください。

ではでは!

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