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[40] みちびく海月

まぎれこんだ ふしぎな空間が
うずまいてひずみ
もうろう
よろよろ
逃げのびた鼠たちは
味わったことのない居心地のよさを
敏感に 嗅ぎわけてゆく
果てがないように思われる暗黒においても
 くるくる
  ひょろひょろ
 ぷかぷか
さまざまに たゆたう
海月のひかりに
みちびかれながら

行き先はわからない
いつもそうだ

道案内は終わり
出迎えてくれたのは
白鳥のようにまっしろい うつくしい手だった
しなやかな指に招かれ
しつこく病みつづける背を預けると
やさしく なでてくれる
あたたかく さすってくれる
闇のなかであっても
やすらい
なんどはじかれようとも
ゆめみるこころ
いつまでも ゆるしてくれる
永遠とおぼしき哀絶を
呑みこんでしまった者さえも
見捨てることはないのだろうか?

逃げのびた鼠たちは
信じることよりも
疑うことが優っていた
見つけられない居場所
警戒心でできている ちいさないきもの
その運命を受け入れ
黙し
ひそかに肩を震わせていた
抜け出せない おいてけぼり
救い難い 大馬鹿
それでも
ただの害獣ではいられないと
足掻きつづけ
すがりついた
ひかり

行き先はわからない
いつもそうだ

たとえ だまされたって
この闇で見つけた
真実めいた希望へ 辿り着きたいから
歯を食いしばり
生きのびる道を
必死に 嗅ぎわけてゆく
じゅうぶんに休息できたなら
ほら
また
 くるくる
  ひょろひょろ
 ぷかぷか
さまざまに たゆたう
魅惑の
海月
つぎはどんなわくわくへと
連れて行ってくれるのだろうか
高鳴る胸で
終わりのない期待を
みちびきのあかりに
しのばせる


※逃亡銀河の鼠たち
(探りあてた光にすがる 後編)【了】

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。