見出し画像

[38] アンダーグラウンド

薄暗い地下通路は
どこまでも 伸びている
割れた電灯が
思い出したみたいに
ちかちか光る

たしかに彼らは ここにいた
なにひとつ形跡は見当たらなくても
ずっとここで
待っていたにちがいない
天恵のような救済を
眼識もないまま
寝ぼけているかのように
ないものねだりを繰りかえして

硬い不安ばかり
がりがり
齧ってはいられないと
アングラをさまよう宿命を
磨り減った歯で噛みちぎり
自ら求めて
這い出たのだろうか

隅から隅まで目を凝らす
まっくらな通路の途中
黒い虫のような糞が 形づくる
決意のピラミッド

彼らは
堕落できる地下通路から
抜け出したかったのだろう
見向きもされない
ちいさな存在だとしても
にぶく かがやいていたいから
いやいやながらも
刺すように 厳しい
日向へ


※逃亡銀河の鼠たち
(探りあてた光にすがる 後編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。