見出し画像

[39] Smoking area

深い夜空で
幻想的な演舞を披露するかがやき
目にした者は見惚れ
酔い痴れる
御多分に漏れぬ私は
銀河と銀河
つまり
うつくしいものとうつくしいもの
その衝突を焦がれ
充血するほどに欲している
はるか遠い 先のできごとだと
わかっていても

少年のこころ失わぬまま
どこかの星へと旅立った男は
連れ合いになるのに何十億年もかかるなんて
途方もない純愛だと
目玉をきらきらさせていた
こんな夜に 煙草を切らすなんて
運はいつだって
半々の敵味方

丘の向こうから
騒がしい声が近づいてくる
うっとうしがるのは失礼だ
その場に佇んだまま 耳を傾ける
容易に群れられる者たちが
自らを晴れ女だとか雨男だとか
興醒めの哄笑を ひびかせている
舞う銀河でさえ
ちょっと気圧されたように見えたのは
私の錯覚だろうか

名もわからぬ銀河を見あげながら
名もわからぬ惑星の
名もわからぬ丘のうえで
交わされる
ありふれた会話
不思議な朗らかとでも
名づけておこう

私は目を閉じ
ひみつの喫煙所を思い描く
気難し屋の群れられない者たちが
ぽつぽつ集い
無重力にふわふわ漂いながら
紫煙をくゆらせる
さびしくも きままな
ひととき
対抗するわけではないが
我をドブネズミだとかハツカネズミだとか
おどけ
ふざけ
苦笑しあってみたい


※逃亡銀河の鼠たち
(探りあてた光にすがる 後編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。