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[32] まぼろしの翅

耐えがたい
熱風につつまれた往来で
垣間見る
コンクリートの失神
へたりこんだ 息する傀儡は
焦げそうだ
当初の目算は擬態だった
傷つかないための
斜に構えて冷めた顔など
とっくに飽きている
まっすぐな言葉で生きてみたい
ときに 尖ろうとも

空腹のモンシロチョウが
ちょろちょろ横切るものだから
目を奪われ
ややこしい思惟が ぱちん
はじけとぶ
ぱたぱたひらり
舞い
花が隠し持つ 甘い蜜を吸いにゆく
羨ましくなるほどの
独り占め

それはまぼろしか
有する白い美が 黒々と艶めいて
隙のないうつくしさに変わる
なによりも儚い命を背負わされた

そんなふうに見まがうと
コンクリートの失神の因 思い当たり
息する傀儡も
建造物と同類の愚かしさ

満腹の黒蝶が
ちょろちょろ花を降り
ぱたぱたひらり
舞い
まただれかの くぎづけを
攫いにゆく


※逃亡銀河の鼠たち
(探りあてた光にすがる 後編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。