経営者は、プロダクトに対する狂気をなくしてはいけない
最近、プロダクトのことばかり考えています。経営者として考えなければならないことは他にもたくさんありますが、僕はやっぱりプロダクトづくりが一番好きみたいです。
もともと、人を喜ばせたり笑わせたりすることが好きですし、期待を超えて驚いてもらいたいという気持ちもあります。さらに、おせっかいな所もあり、一言で言うと「典型的な大阪人」なのかも知れません(笑)。こういう性格なので、「こんなサービスがあったら喜んでもらえるんじゃないか」「こういう機能があれば、◯◯さんが楽になるかも」と考えている時が、ワクワクできて、仕事をしていて一番楽しい瞬間です。
見た目が美しいだけのものを作ることにそれほど興味はありません。ただ、ユーザーをハッピーにすることに対して、徹底的にこだわっていたいと思っています。
自分の周りの仲のいい経営者の中でプロダクトに対して狂気的なこだわりを持っているのは、メルカリの山田さんやBASEの鶴岡さんなどでしょうか?彼らと話す度に、僕にはまだまだ狂気が足りていないなと反省してしまいます。
狂気が生んだ会計ソフト
2013年末にリリースした会計ソフトは、ユーザーとのコミュニケーションから生まれました。家計簿ユーザーから、「同じ仕組みを使って確定申告もしたい。あの面倒な確定申告を楽にしてもらいたい」というご要望をいただいたのがきっかけです。
しかし、当時、15名程しか社員はおらず、唯一のサービスだった家計簿でも満足に売上を立てられていない状況。そんな中突然「クラウド会計を作ろう!」と言い出した僕に対して、「辻さんはどうにかしている」「おかしくなってしまった」と社員は思っていたようです(笑)。そして、社内全員が反対しました。それでも、「ユーザーが求めているものを作らなければ」という使命感と狂気じみたパッションにより、メンバーを説得しプロジェクトを開始しました(この決断により、追加の資金調達も行いました)。
しかし、プロジェクトを開始したのが2013年夏。2014年1月から始まる確定申告に合わせてリリースするには、あまりにも時間がありませんでした。特に開発メンバーへの負担は大変なものでしたが、それでも社内は熱量に溢れていました。体はボロボロでしたが、本当に楽しかったんです。
(リリース直後、床で寝てしまった写真…)
(リリース直後、人生でもっともおいしかった一杯)
プロダクトを無事リリースしてからも、試練は続きます。バグがあることに加え、とにかく機能が足りていませんでした。ここから、さらなる狂気が僕を突き動かします。
全国会計事務所様の行脚です。「Web経由でのセールスもやりつつ、会計事務所様経由で企業に使っていただこう」と決めてから営業チームを編成し、とにかくたくさんの会計事務所にお邪魔しました。が、結果はあえなく撃沈。「家計簿屋がつくった会計ソフトなんて使いたくない」「自動でデータを取って来るなんて怖い」「会計事務所の仕事を奪うつもりか」など、辛辣な言葉の数々…。中でも多かったのが、「既存のソフトで出来る事が出来ない。◯◯機能がないソフトなんて使えない」という現実的なご意見でした。
こういう時、普通の営業担当なら「申し訳ありません。開発要件に追加します。」と言うのが普通かも知れませんが、僕の口から出ていたのは「すぐにつくります!」とか「明日までにつくります!」という一言。これによって開発陣がどれだけ振り回されたのかは、ご想像の通りです。難しい機能要望はさすがに1日では出来ませんでしたが、ちょっとした機能はその日のうちに開発してくれたこともありました。
この頃を振り返っても、だいぶ狂気じみていたと思います。僕だけでなく、チーム全員に狂気が乗りうつっていた時期かも知れません。
作りたいのは、マニュアルいらずのサービス
クラウド会計サービスをリリースしてから、もうすぐ7年を迎え、たくさんの人に使ってもらえるようになりました。ただ、初めて使う人が使いこなすには、残念ながらまだまだ難しいサービスです。
iPhoneや任天堂のゲームのように、触った瞬間に使い方が分かるようなサービスを作らないと、世の中のDXは進みません。コロナ禍において、日本のDX化の遅れが如実に露呈し、クラウドサービスを提供する会社として、責任を感じました。どこかで「使いたい人が使ってくれればいい、無理してまで使う必要はないのでは?」と考えていた節がありますが、「命を守るためにも、世の中をもっと前に進めていくためには、DX化を今すぐに推進しなければならない」と考えが180度変わりました。
マニュアルが必要なサービスは、全員には使ってもらえません。どんな人でも使えるマニュアルいらずのサービスを作るために、もっと狂気とこだわりを追求し、ユーザーさんに喜んでいただけるサービスをみんなで作っていきたいと思います!
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