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成功する新規事業はどうすれば創れるのか?

ロシアがウクライナに侵攻し、1週間が経過しました。
この戦争の被害が少しでも小さくなるよう心から祈っています。様々な背景や事情があるとは思いますが、力あるものが力づくて奪い取る、そんなことがまかり通る世界になれば、世界秩序は破綻しますし、大国に挟まされる日本も我が事として考えるべきでしょう。「自分の国は自分で守るしかない」という当たり前の現実を突きつけられた気がします。

実際のところ、仕事も手につきづらい状況ですが、僕たちがウクライナに対して、国際社会に対してできること(応援の寄付や人道支援の受け入れなど)を進めながら、日々の仕事に打ち込んでいくしかないでしょうか?

こんな状況ですが、書きかけのテーマがあったので、表題のテーマについて少し考えたいと思います。“成功する新規事業”はどうすれば創れるのか、起業して以来、ずっと考え悩んでいるテーマです。新規事業の分野、規模にも、もちろんよりますが、

・世の中の大きな流れ
・テクノロジーの進化
・カスタマーニーズの変化

などを敏感に捉え、未来を予測し、さらには何より、未来を自分たちで創るんだという気概とパッションを持ち、途中どんな困難に出会っても、諦めず修正を加え続けて成功に導いていく。

文字で書けば簡単ですが、実際に最後までやり通すこと、そして結果を出すことは本当に難しいなと思います。起業の多くが、残念ながらうまくいかないように、新規事業も失敗する方がはるかに多いでしょう。

当社も創業以来10年弱、数々の新規事業に取り組んできました。その結果として、現在40以上のサービスを提供していますが、その影にはリリースにさえ至らずに撤退したものも数多くありますし、リリース前に会社を解散するという本当に辛い経験もしました。

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主力サービスであるクラウド型会計ソフト『マネーフォワード クラウド』やお金の見える化サービス『マネーフォワード ME』も、軌道に乗るまでに、ものすごい数の失敗をしてきました。
ひっそり始めてひっそり閉じたサービス・機能は数知れません。だめになったアイデアの中には、僕のアイディアも多く含まれます。(その辺りの話は、拙著『失敗を語ろう』に、恥を忍んで書いているのでご興味ある方はご覧ください)

当社では、新規サービスレベルだと「スモールチーム・権限委譲」を合言葉に、最小チームを作り、まずPMF(プロダクトマーケットフィット)までの到達を目指してPDCAサイクルを最速で回す。PMF(これが一番困難ですが)がクリアできれば、マネタイズ、事業化へと進んでいきます。

事業レベルだと、話はもっと大きくなります。直近では楽天さんの携帯事業参入(2020年度の設備投資だけでも3400億円)、ZホールディングスのPaypayへの巨大投資(トータルの赤字数千億円!)、サイバーエージェントさんのAbema事業(周辺事業を含め、事業開始から毎年200億円程度の赤字)への参入。

経営者として、来るべき未来はある程度想像できますが、その時間軸を当てることは非常に難しいなと感じています。そんな中、周りからの否定の声、「できるわけがない」という声を物ともせず、この凄まじい額の投資を意思決定し、自分たちの未来とチームを信じ、自ら陣頭指揮をとって実行していく。結果がどうなるかはこれからですが、そのリーダーシップと、それを支えるチームの皆さんの実行力には心から感服します。リスクがないところに、まさにリターンなし。

新規事業の意思決定プロセス

以前、ある大企業の新規事業コンテストの審査員に呼んでいただいた事があります。
若手の方々が役員に向けて、新規事業をプレゼンするのですが、ある役員の方がひたすらダメ出しを続けて、せっかくチャレンジした若手が萎縮してしまうような事がありました。

これはちょっと気の毒だな、応援したいなと思い、思わず「新規事業なので、当然リスクもありますし、検討不足の点もあり、ご指摘はごもっともなのですが、どうしたらできるかというアイデアを役員陣から出しませんか?そもそも役員の中に新規事業を成功された方がいればその時の経験談をシェアいただくのはいかがでしょう?」と言ったことがあります。その場の雰囲気はとても悪くなり、そして以後その会には呼ばれなくなりました。。。

昔から「経営陣をはじめ、役職が上がれば上がるほど、知識も、経験もあるのだから、新しいアイデアに対して、ダメ出しではなく、どうやったらできるのか、具体的なアイデアを出して助けて欲しい。高い給料は、代案を出すためであって、ダメ出しだけをするためのものではないはずだ」と生意気にも考えていました。でも、その考えは基本的には今も変わっていません。

難しい新規事業ほど、当社でも僕をはじめ、経験ある役員陣が率先して、知恵を絞り、なんとかして実現できるように、必死にとりくむべきだと思っていますし、今のマネーフォワードの経営陣はそんなメンバーが揃っています。

そして、新規事業の意思決定プロセスには、知識、経験はもちろんですが、そういったポジティブマインドのある意思決定者が入るべきだと思っています。新規事業の立ち上げ時に必要なことは、「できない理由を考える」のではなく、「どうすればできるかを必死に考え、実行すること」であり、過去の経験をもとに、知恵と知識をシェアすること、そして何より、不確実なものにチャレンジするメンバーの心が折れないように、可能性を信じ応援し続けることだと思います。

チームの作り方

今まで、様々な新規事業に取り組んできましたが、アイデアがどんどん膨らんで、進めながらワクワクするチームに恵まれる事があります。
新しいアイデアなので、仮説ベースなことも多い中で、否定から入らず肯定から入る、また不確実な状況というのはとても落ち着かない状態なのですが、そういった不確実状態を楽しめる前向きなパーソナリティーを持っている事が重要だと感じます。

当社も導入しているFFS理論という考え方があります。

FFS(Five Factors & Stress)理論とは、「ストレスと性格」の研究において開発されたものです。人の思考行動特性を5因子とストレス値で定量化し、個人の潜在的な強みが、ポジティブに発揮されているか、ネガティブに発揮されているかわかります。さらに、人と人の関係性を客観的に把握・評価でき、チームを最適な編成にすることができる理論です。

出典:「FFS理論について」(http://human-logic.jp/about/)

全てが、この理論に当てはまるものではないとは思いますし、僕たちもまだ使いはじめで未知な部分も多いのですが、社内で使っていて非常に納得感があります。何より、この理論は、「何がいい、悪い」ではなく、「その人となり、パーソナリティ、価値観を理解して、その人となりを尊重する」ために、使う事ができます。

過去、当社で新規事業を成功に導いたメンバーを、このFFS理論を当てはめると、受容性と拡散性が高いメンバーが多いことがわかりました。このタイプは、新規事業に強い、つまり0から1を作るのは得意である一方で、リスクを軽くみがちであり、また1→100を作るところは比較的苦手とします。

また、このメンバーだけだと新規事業を行う上ではリスクを見落としがちになるので、ある程度アイディアが形になってきたところで「合理的な判断が得意な弁別性の高いメンバー」や「慎重に改善を積み重ねていける保全性の高いメンバー」を加えていくことも重要だと感じています。

「適材適所」という言葉がありますが、経営者をやっていると本当に大切な言葉だなと思います。一人では何もできませんし、人それぞれ得意分野、苦手分野があります。お互いの得意分野でのアウトプットをリスペクトし、チーム全体として会社を伸ばしていく。そんなチームを作っていくことが大切だと改めて思っています。

そして、みんなが知恵を絞って考えてもどうしてもリスクが高い、やるべきではないという新規事業もあると思います。大きな意思決定が必要となる時には、最後は、全ての責任を背負うリーダーが、やるべきかやらないべきか、意思決定するしかないのですが、それまではみんなの知恵や経験を結集して、それこそ脳みそをフル回転して、会社にとって最善の方法を検討する事が大切です。

機会損失の考え方

新規事業は10取り組んで全て成功するようなものではありません。感覚的ですが、3当たれば御の字ではないでしょうか?それぐらい、新規事業というものは、不確定要素があり、難しいものだと思います。

一方で、新規事業やM&Aが成功すれば、会社のステージが変わる、次のステップに行けるという大きなリターンもあります。

M&Aの事例ですが、ソフトバンクさんのボーダフォンの買収、楽天さんのEbank(現楽天銀行)やDLJディレクトSFG証券(現楽天証券)などが分かりやすい例です。このようなM&Aがなければ、今のソフトバンクさんや楽天さんは違った形になっていたでしょう。

失敗すれば、会社が傾くような新規事業やM&Aへの投資は避けるべきですが、投資コストが仮に10だとして、リターンが例えば100見込めるような投資だと、期待値10%以上なら取り組むべきだ、という考え方もできるかもしれません。

最後に

新規事業で成功することは本当に難しい。一方で、リスク無くしてリターンは期待できません。

リスクをとってチャレンジした人、そしてそのリスクを知恵とアクションによって低減し、成功するまで諦めず最終的に成功までたどり着いた会社だけが大きなリターンを得られると思います。

先日、たまたま日課であるモーニングサテライトを見ていたら、親友でもあり、今や当社CFOの金坂さんと並んでベンチャーを代表するCFOであるラクスルCFO永見さんが、「CFO参上。〜財務トップが未来を語る」というコーナーに出ていて、そんな彼が発していた一言にはっと思わされました。

「ベンチャー企業は安定を求めたら社会的な意義はない。重要なのはビジョンの実現に向けて、価値をより提供し業績を拡大しているかだ。」

冬季オリンピックでも若いメンバーが伸び伸びと、リスクをとってチャレンジしていました。今、この停滞感ある日本に最も必要なものは、リスクをとってチャレンジすることだと心から思っています。

当社もチャレンジし続ける会社でありたいですし、何より僕自身新規事業にチャレンジするメンバーと一緒に知恵を絞れる人でありたいと思っています。

PS .
恒例の宣伝となってしまって恐縮ですが(笑)、一緒に新規事業をワクワクしながらつくっていける仲間を募集しています。新規事業を通じてどうしても解決したい課題がある方、パッションとエネルギーがあり余っている方は宜しければご覧ください。

今募集しているCEO直下での仕事の様子もこちらのnoteに書いているので宜しければご覧ください。



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