映画「レミングたち」の覚書 | #1 岡崎森馬
最初に紹介するのは、岡崎森馬くん。映画「レミングたち」の主人公・翔を演じてくれました。僕と同い年の26歳で、現在は東京でフリーランスの俳優として活動しています。
しまんちゅ
2018年6月、種子島に1ヶ月ほど滞在しました。撮影助手として映画のロケに参加していたのです。そのとき、制作部に同い年の青年がいました。温泉に入ったりサーフィンをしたりする1ヶ月の共同生活で、彼と徐々に打ち解けていきました。話していくうちに、彼が俳優であることを知りました。とても強い熱意を持った人でした。また現場で会おう、いつか必ず一緒に作品を作ろうと約束して、その現場を終えました。
とはいえ僕は普段は撮影部で、そもそもキャスティングに関わることなどなかなかなく、約束が果たせぬまま暫くが経ちました。
そして入院中に今回の企画を考えた時に、翔として最初に浮かんだのが彼の顔でした。ちょうど良いタイミングで彼の出演作が公開されていて、それを観てお願いしようと確信しました。"生きること"というのは繊細なテーマで、だから「レミングたち」には彼の優しさが必要だと感じました。
翔び立つ
退院してから、森馬くんと久しぶりに再会し近況を伝え合うと、彼は変わらず熱意を持って俳優業に対して懸命に、真摯に生きていました。
"実は自分で映画を撮ろうと思っている、その主演をやってくれないだろうか"と相談したところ、彼は二つ返事で快く引き受けてくれました。彼の承諾を経て、企画が動き出しました。
この作品への想いを受け取ってくれた彼は、本当に親身になって協力してくれました。自身の役に対して積極的に提案してくれただけでなく、他の出演者との関係性をしっかりと築いてくれました。特に、渚役の高田歩さんは本作が初の映像作品への出演で、僕自身も監督として未熟であるため、読み合わせの段階で非常に苦心していました。森馬くんはしかし、自身の経験と技術を惜しみなく提示し、導いてくれました。後から知ったのですが、読み合わせの場以外でもほぼ毎日のように時間を作っては寒空の下、公園で2人で練習に励んでくれていたそうです。そうして2人は兄妹としての関係性を作り上げてくれました。高田さんは撮影から数ヶ月経ったあとでも森馬くんを指して「兄ちゃん」と呼んでいるのを聞いて、彼らの役への入れ込み方の凄まじさを改めて実感しました。
本作で、主人公の翔はあまり表立って感情を露わにすることはありません。しかし森馬くんは、彼の感情の機微を繊細に表現してくれました。
役に対してはどこまでも真摯に、けれど画面の外では常に笑いを絶やさない森馬くんの支えがなければ、この映画は成立していなかったと思います。ラストシーンの撮影では文字通り身体を投げ打って挑んでくれました。
彼はこよなく作品を愛してくれます。俳優という立場だときっと言いづらいことでも、作品を良くするためならばしっかりと指摘してくれるのは、固執してしまった視点を一歩引くきっかけを与えてくれます。
僕は彼の人柄が本当に大好きです。成功して欲しいと心の底から思います。けれどそれは仲がいいから、人柄が良いからというだけではなく、俳優としても確かに惚れ込んでいるからです。彼のお芝居からは優しさと真摯さがにじみ出ているのを感じます。
2020年1月に、ふと思い立って新年の抱負のつもりで短い作品を作りました。それにも彼に出演をお願いしたのですが、撮影の時期も近かったのもあって「レミングたち」の翔というキャラクターと非常に重なる存在となりました。
けれど"翔"ではなく"岡崎森馬"は、うだうだ言ってないで着実に一歩一歩上に登っていく人だと思います。
置いて行かれないようにしなければ。
-岡崎森馬 Filmography-
2017 年『#youth』(菱川勢一監督)主演 タロウ役
2019 年『かざぐるま』(松田尭峰監督)主演 中村藤吾役
2019 年『江ノ島シネマ/極楽寺駅 たからもの』(いながわ亜美)明里役
2019 年『下忍 赤い影』『下忍 青い影』(山口義高監督)薩摩藩士 稲葉九十郎役
2020 年『真言アイロニー』(石原ひなた監督)瀬田凌役
ほか多数
2人目は、高田歩さんについてです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?