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映画「レミングたち」の覚書| #3 斎藤陸

3人目、映画「レミングたち」で入院患者の大地を演じてくれたのは斎藤陸さん。俳優事務所 ハイエンドに所属する29歳。同志で、兄貴で、いつもお世話になっています。

異国の地

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2017年春、僕はロサンゼルスにいました。無謀にもろくに英語を話せない状態でいきなり映画学校に突っ込み、孤独感に苛まれる日々を過ごしていました。

そんな中で、偶然知り合った日本人の男性がいます。彼はニューヨークからロサンゼルスまで、1ヶ月かけてバイクでアメリカ大陸を横断してきたところでした。スケールのでっかい男だなあと思ったのを覚えています。

そして偶々、彼は俳優でもありました。

映画を志す者同士として、徐々に親交を深めていきました。折良く夏に日本から映画監督の渡邉聡がLAに遊びに来る予定だったので、「せっかくなら一緒に映画を撮ろう」ということになりました。我々は"せっかくなら"で映画を撮る以外のことができないようです。

何を思ったか、片道10時間かけてグランドキャニオンに行きました。ずっと雨が降り続いていましたが、撮影のわずかな時間だけ太陽が差し込んだのは本当に奇跡的でした。数十分の撮影を終え、また10時間かけて引き返しました。

グランドキャニオン-1

行けるところには全部行って、やりたい放題やって、短編映画「メンタルスケッチ」が出来上がりました。ほぼ彼の一人芝居にも関わらず、とても力強い作品に仕上がったと思います。この作品は我々を多くのところに連れていってくれました。四万十映画祭、富士湖畔の映画祭、福岡インディペンデント映画祭、釜山インターシティ映画祭などなど。そこで多くの人と出会い、また世界が広がりました。

半年くらいの差があってからお互い日本に帰国して以降も、一緒に作品作りを続けています。

『DeSQUEEZE』2018年 / 3min

『みさきへ』2019年 / 2min

共犯者

すでに紹介した森馬くん、そして高田さんの2人は今回初めて一緒に作品を作るためかなり緊張していたのも事実です。正直なところ、3人目として陸さんに出演をお願いしたのは現場で僕が安心感を得るため、という理由もありました。頼りっぱなしです、本当に。

けれど何よりも、彼の芝居へのストイックさ、的確さ、器用さが必要だと思いました。年齢にそれほど大きな差はありませんが、カメラを通して見ると29歳とは思えない大人の落ち着きが滲み出ているのです。一歩引いたところから主人公に語りかける存在として、これ以上ない配役だと思っています。何より、立ち姿が様になるんです。格好良いんです。

陸さんfilm

「レミングたち」の撮影当日、原因不明の体調不良が彼を襲いました。顔面蒼白で立っているのもやっと、撮影の続行すら危ぶまれました。図らずも病人の役であったため、表情は笑っていても如実に画面に現れているしんどさは、確かな説得力をもっていました。撮影を終えるとその体調不良もすっと引いたようで、監督としてこれを言うのは失格ですが、結果的には功を奏したように思います。グランドキャニオンの晴れ間も然り、彼は映画作りにおいての幸運すらも従えています。

陸さんは、これから間違いなく俳優として大成していくと確信しています。すでに長編映画の待機作もあります。「カメラを止めるな!!」を製作したENBUゼミナールシネマプロジェクト第9弾「河童の女」は7月公開予定だそうです。すぐに色んなところで目にする存在になると思います、彼の動向にご注目ください。

-斎藤陸 Filmography-
2020「河童の女」(監督 辻正樹)準主役 柴田新一 役 
2019 「Blue and Yellow」(監督 Cris Combs)※メイン タケシ 役
2019 「となりの岡山田くん」岡山県PR映画(監督 前野朋哉)斎藤先生 役
2018 「俺、明後日、死ぬってよ」(監督 黒川賢一)主演 森田亮介 役
2017 「メンタルスケッチ」(監督 渡邉聡) 主演 マサト 役
2017 「In full Bloom」(監督 Reza Ghassemi)日本人カメラマン 役
2017 「Magic 85」(監督 Annika Kurnick)ドラッグクイーン 役

これからも共犯者として、色んなことを企んでいけたらいいなと思っています。


次は大門嵩さんについて、書きます。


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