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排出ギャップ報告書2020 再考①

排出ギャップ報告書2020

これは国連環境計画が発行する第11版で、COVID-19が猛威を振い、政策決定過程を席巻し、世界に巨大な被害と経済社会の混乱を引き起こした年に作成された。経済や産業へ大きな影響と混乱を与え、地球の気候に関する歴史的、かつ、止まることのない人間の負担をわずかに抑えた。この負担は、自然災害やハリケーン、南北両極の氷河や氷床の融解を含む。これらの気候変動は、気象の極端な事例の形で既に観測されている。2023年には、日本では既に気温が40度を超える地点が6ヶ所あり(7月に記録)、地球の平均気温は例年より0.72度高くなった。(1991~2020年平均比)すでに、崩壊は始まっている。私たちは、こうした科学者の声こそ聞くことは少ないが、毎朝玄関を開けて気候変動の猛威を感じている。

排出ギャップ報告書2020は、国々がそれぞれの温暖化排出抑制の制約を将来実行した場合の温室効果ガス(GHG)排出量の予測値と、パリ協定の目標達成に沿った最低抑制コスト経路の排出量との差異を評価したものだ。この差異は「我々の社会がこうなりそうだ、と、そうなる必要がある」という「排出ギャップ」として知られている。

2020年版の報告書は、ギャップの解消に密接に関連するとともに、COVID-19のパンデミックでさらに関連が強まった、「国が決定する貢献」(NDCs)には含まれない船舶運輸と航空からの国際的排出およびライフスライルの変化、の2分野についても検討している。

ギャップの現状

我々はギャップをなくす方向に進んでいるだろうか。答えは否だ。

2019年のGHG排出量は、3年連続で増加し、52.4±5.2Gt(CO2e)であった。土地利用変化によるものを含めると59.1±5.9 Gt (CO2e)であった。
CO2e ー CO2 equivalent の略で、二酸化炭素換算の数値である。

化石炭素(化石燃料及び炭酸塩類を含む)からの炭酸ガスは、GHG排出量(土地利用変化によるものを含む)全体の65%と大部分を占めており、したがって、GHG排出量の予備的な推計では2019年の化石起因の炭酸ガスの排出は、38.0±1.9 Gtであったとみられる。

2010年以来、土地利用変化によるものを含めないGHG排出量は、平均して毎年1. 3%増加してきており、予備的推計では1.1%増加したと推計されている。土地利用変化によるものは、より確実性が低く、変動があるが、これを含めた場合には、世界のGHG排出量は、2010年以来平均毎年1.4%増加してきており、2019年には大規模な森林火災の結果、2.6%増大したと推計されている。土地利用変化による排出は、世界全体の排出量の11%程度であるが、この排出のかなりの部分は少数の国で発生している。

過去10年を見ると、大排出国4カ国(中国、米国、EU27カ国と英国、及びインド)が世界のGHG排出量(土地利用変化によるものを除く)の55%を占めた。トップ7カ国(ロシア連邦、日本、及び国際運輸を含む)が65%を、G20 国を含めると78%となる。図 ES.2にあるように、人口当たりの排出量を見ると、国々の順位は大きく変化する(図 ES.2)。

世界全体のGHG排出量の増加が減速していることを示唆する情報もある。しかし、経済開発協力機構(OECD)諸国の排出量は減少しているのに対し、非OECD諸国の排出量は増加している。多くのOECD諸国の排出量はピークを示し、効率の改善や低炭素エネルギー源の増加が経済成長以上にオフセットの効果を持った。効率の改善や低炭素エネルギー源の増加にもかかわらず、開発のニーズに応えるためのエネルギー消費の強い拡大があった国の排出量は引き続き増加している。

排出量は化石燃料のCO2が最多だ

一般的には、豊かな国々では消費と関連付けられた排出量(製品が製造された国ではなく、それが購入され消費された国ごとに配分された排出量)が、地理的に配分された排出量より大きくなる傾向にあるが、これは、これらの国ではよりクリーンな生産がされており、また、サービスや第1次、第2次の生産物がより多く輸入されているためである。2000年代には、消費と生産のギャップは豊かな国々では拡大していたが、2007-2008年の経済危機の後には拡大しなくなった。最近の10年間を見ると、豊かな国々では消費関連排出量が地理的に配分された排出量より大きいことが続いてきているが、これらは両方とも、同様な速度で減少している。

ギャップの捉え方

私たちは、二酸化炭素を見ることができない。だが、エアコン、自動車の運転、料理のガス、発電した電気利用など生活のあらゆる動作に、二酸化炭素は関わっている。特に、火力等発電セクタはかなりの量を排出している。

「我々の社会がこうなりそうだ、とそうなる必要がある、との差異」という「排出ギャップ」だが、報じられているのは「我々の社会がこうなりそうだ」の部分だけだ。「そうなる必要がある」という声をあまり聞いたことがない。それもそのはず、私たちは一人当たりのCO2排出量を知らないし、何をすると二酸化炭素の排出減に貢献するのか知らない。もっと言えば、「そうなる必要がある」とすら思っていない。


日本地球温暖化防止推進センター


日本地球温暖化推進センター

ここに、1人当たりの二酸化炭素排出量がある。燃料種別内訳版と、用途別内訳版だ。2つの図をみてわかることは、「照明・家電製品」を主とした生活の「電気」と、「自動車」の「ガソリン」から56.4%が排出されている。個人が排出量を減らそうとするならば、この2つの分野を減らすのが良いだろう。電力の供給源を再エネに契約し直すのも方法の1つだ。(産業分野の排出は次回記事で取り上げる)

「そうなる必要がある」を考えるには「何がどうなっている」をわかる必要がある。私たちが7月の酷暑、つまり気候変動に貢献できることは、少しの行動変革だ。21世紀を、「理想的に」創るためには、「21世紀の市民リテラシー」が必要だ。必要なことは、「知り、少し行動を変化させること」だ。

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