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京セラ美術館開館1周年記念展上村松園

展覧会は画壇時代から始まり、初期作品は師事の下で試しながら描かれているように見えました。のちに伝統や古典的なモチーフへシフトし天女や怨霊を描く事でリアリズムを追求して苦悩されていたと孫の上村淳之さんの話があります。



この章では光源氏の正妻に嫉妬し生き霊になった六条御息所を描いた「焔」は静かな念を抱え彷徨っているようです。美しいが悍ましく描かれていています。美しい姿の作品は多々ありますが、この絵は人物の感情や人物から発せられる場面の湿度温度感も感じされられます。

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愛する人が上京してしまい狂乱する照日の前を描いた「花がたみ」は魂が抜けたような表情と同時に狂乱する心情が表されています。紅葉が散っている様子は主人公の恋も散ってしまい閑散とした森を彷徨っている姿に見えます。髪の表現が繊細で松園は丁寧で忠実に描く描写に驚かせられます。松園の美人画の中でも異色の怨みを表した2枚が同時に見れる豪華な展覧会です。
全国から代表作が集結した今回の展覧会は前期後期の入れ替え数も多く、後期展示の「序の舞」も見所の一つです。後期も行きましょう〜

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後期の目玉はやはり「序の舞」です。
能の舞事の動きが静かで品位のある姿は女性に潜む強い意志が表現されています。松園も理想の女性像で気に入っていると記されています。
そこで気になったのは振袖の柄です。見事な彩雲のグラデーションが特に美しいと思います。

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同じ制作年の「志ぐれ」と同じ振袖の柿色、グラデーションが描かれています。志ぐれは裾や袖が風で捲れ上がっている女性の姿です。これは序の舞と対の作品ではないかと思われます。

サイズは序の舞は231.3×140.4cmでとにかくデカイです。志ぐれは159×55.8 cmで掛け軸サイズです。サイズは違いますが同じ柿色の振袖を着た美人画です。静の序の舞と、動の志ぐれ。他にも1936〜38年あたりは着物の裾柄はグラデーションがよく使われています。人物の頬の影や目付きを見ると腕に脂乗ってるなぁと思うほど繊細で美しい一瞬を捉えた美人画ばかりです。

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「月蝕の宵」は親子と1人の女性のそれぞれの夕涼みをしている情景です。左側は母親が手鏡に写った月を眉剃りした女性と子供達が見ている様子です。オレンジの着物の女性が月の方向を指さしていのでしょう。右側はその方向を見つめる夕涼みをしている女性です。紫色の薄物や朝顔の団扇が夏の夕暮れの涼しさを感じさせ、私はこの女性が1番好みの美人さんです。松園はこの女性のモデルを九条武子にして描いています。彼女は名家の女性で高貴な人柄や振る舞いに敬意の念を抱き、理想の女性像としています。

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生涯最後に描きあげた絶筆‼︎「初夏の夕」は最後まで衰えを感じさせない美人画です。徹底した観察で写生し細部まで忠実に描きき、鮮やかで美しい色彩感覚、空気感や温度まで伝わってくる圧倒的な画力を持った美人画の巨匠です。全国の最高の作品が一同に揃うALL 上村松園展は見事でした。




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