カサゴの焼き干しを使ったオハウ

冬になると、肌寒い日が増えてきます。
そんな時期に食卓を楽しくしてくれるのが、そう。鍋料理です。
石狩鍋、きりたんぽ鍋、水炊き、みぞれ鍋、もつ鍋、定番の寄せ鍋など、日本各地には身も心も温まる素敵な鍋料理があります。
そんな中、先日ゴールデンカムイで紹介されていたアイヌ料理の「オハウ」が気になって、作り方を調べてみることにしました。
ゴールデンカムイと言えば、アリシパさんが作るアイヌ料理が美味しそうと評判ですが、その中でも三平汁や石狩鍋のルーツとなったと言われる「オハウ」は、北海道出身の僕としては非常に気になるところです。
早速ネットで調べてみると、オハウとは、肉や魚と干し野菜などを、昆布や「焼き干し」の出汁で煮込んだ料理とありました。
ここで、「焼き干し」という珍しい食材が出てきました。
イワシを煮て干した「煮干し」は普段料理でも使いますが、焼き干しは初めて聞く名前です。
調べてみると、魚を煮る代わりに、焼いて干したものが「焼き干し」になるそうです。
魚を焼くのであれば、グリルで普通に焼いて、干せばいいだけと考えてしまいますが、キャンプ好きの僕としては、ここでピンときてしまいました。
ゴールデンカムイの時代を考えると、この「焼く」というところに現代とは違う秘密が隠されているのです。
ゴールデンカムイを読んでいくと、主人公たちはアイヌの村や山奥で野営をしています。
当然、日露戦争後の当時は電気やガスは山奥までは普及していませんでしたから、火を使うということは、現代でいうところのアウトドア料理と同じになります。
つまり、炭や薪を使って魚を焼いていたはずです。
炭や薪を使う時点で、焼いている魚には木で燻される、つまり「燻製」の香りがつくはずです。
自宅で普通にお肉を焼くより、焼肉屋さんの炭火で焼いた肉や、外のバーベキューで焼いた肉がはるかに美味しいのは、この「燻」の香りに秘密があるのです。
つまり、焼き干しでは、魚自体のうまみ成分と燻の香りがブレンドされて、野性味あふれる出汁になることが予想されます。
これは、もはや衝動を抑えることができなくなりました。
というわけで、オハウ作りに挑戦してみることにしました。
まずは、焼き干しの原料となる魚の調達からです。
出汁が濃厚に出る魚はたくさんいますが、中でも漁師さんがわざわざ味噌汁にしたいから釣りにいく魚である、カサゴを調達することにしました。
買うと高いカサゴですが、釣れば安く仕入れられる、ということでカサゴを狙いに釣りに行ってきました。
釣り場は以前25cmの良型のカサゴが釣れたところです。
時間は夜7時くらいから狙いましたが、感謝なことに良いサイズのカサゴを4匹ゲットすることができました。
アジも狙ってみましたがその日は回遊がなく不発でした。
幸い、近所のスーパーでアジが安く売っていたので、そこで調達することにしました。
カサゴとアジは、ヒレとエラ、内臓、鱗を取り、下処理をします。
次は燻製です。
おなじみの100均のステンレスボウル2つを合わせた簡易熱燻を2回繰り返します。

カサゴの焼き干し
アジの焼き干し

カサゴの焼き干し熱燻された魚は、キッチンペーパーでくるみ、冷蔵庫で乾燥させました。
焼き干しの準備ができたので、いよいよオハウ作りに挑戦です。
鍋に入れる具材は、北海道産のニシン、ゴボウ、ニンジン、サツマイモ、大根です。
寒い季節は、根菜が美味しくなります。

ニシンと根菜のオハウ

調味料は、日本酒、砂糖、塩こうじ、味噌です。鍋が煮立ってくると、この上ない良い香りがしてきます。
集まってきたお食事会のメンバーも、家の外までよい香りがすると驚いていました。
ちなみに我が家は、24時間、365日窓が開いているので、匂いが外にだだもれになります。
さて、いよいよ実食です。
だし汁を一口飲んだ瞬間に、この上ない美味しさと同時に懐かしさがこみ上げてきました。
電気やガスがなかった時代、人類は長い間、炭や薪を使って調理をしてきました。
そう。燻の香りがDNAに刻まれているのでしょう。
炭火でガンガンに熱したピザ窯で調理されたピザマルガリータとワイン。
炭火でじっくり焼き上げた、焼鳥屋のネギマとキンキンに冷えたビール。
七輪の炭火で、じっくり焼き上げたサンマと日本酒の熱燗。
どれも想像しただけで、よだれが出てきます。
さて、今回のオハウの調理では、焼き干し自体も最後にいただきましたが、ちょっと残念な結果になりました。
それは、焼き干し自体に味がしみ込んでいなかったことです。
ぱさぱさした、出がらしみたいな味で、あまり美味しくなかったです。
次回は、焼き干しにする前に、軽く塩気を浸透させてみるのもありかと思いました。
あとは、これから寒く、乾燥する季節になるので、干し野菜を作って、オハウの具材にしてみたいと思います。
焼き干しにできる魚は、ほかにもたくさんあるので、色々作ってだし汁の味を研究してみたいと思います。

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