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牛乳からアポラクトフェリンができるまで

不定期連載 アポラクトフェリン(13)

アポラクトフェリンの製造では、
まず牛乳からラクトフェリンを分離します。
これには、イオン交換樹脂という
物質を使います(写真)。

牛乳と樹脂を混ぜるとラクトフェリンだけが
樹脂に吸着するため、
残りの成分と分離できます。
残りの成分は乳清(ホエイ)として、
チョコレートやパン、
プロテインなど様々な用途に使われます。

次に、ラクトフェリンが吸着した樹脂に
塩(塩化ナトリウム)を加えます。
すると、ラクトフェリンが樹脂から外れて、
ラクトフェリンのみの濃厚な溶液ができます。
品質を安定させるため、
これを一度乾燥させ、
粉状のラクトフェリンを作ります。
こうして抽出したラクトフェリンから
鉄を抜き取れば、
アポラクトフェリンを作ることができます。

ラクトフェリンの水溶液に酸を加えれば
鉄が離れることは以前から
分かっていましたが、鉄は一度離れても、
すぐまた結合してしまいます。

しかし、UF膜を通せば簡単です。
鉄の分子に比べてラクトフェリンの分子は
大きいため、鉄の分子だけがUF膜の小さな
孔を通り抜け、鉄が離れたラクトフェリン
(アポラクトフェリン)は残ります。
短時間にワンステップで
アポラクトフェリンを大量に生産できるうえ、
成分や機能に影響を与えることはありません。

この技術は特許となり、ニュージーランドで
使われるようになります。天然の牧草で
育った牛から搾った牛乳を使って、
アポラクトフェリンの製造が始まりました。
ニュージーランドの酪農は日本と
大きく異なります。
まずニュージーランドには牛舎がありません。
一年中放牧して乳を搾るときのみ搾乳舎に
入れます。また、飼料も天然の草のみで、
日本のようなBSE(狂牛病)感染の原因となった
骨粉などの濃厚飼料を使いません。
そのため草の育ちが悪い6・7月
(ニュージーランドの冬)には、
ほとんど乳は搾れません。
さらにニュージーランドの牛乳やバターは
日本のもののような風味がありません。
トウモロコシやダイズを食べさせない
ニュージーランドの牛乳には日本人が好む
牛乳らしい風味は多く含まれていません。

井上浩義
『アポラクトフェリンのすべてがわかる本』
アーク出版 2015年 pp.39 - 41

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