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今までのレコーディングを振り返る vol.21 「Let’s Dance」Yuji Ohno&Lupintic Five(2011)

今までのレコーディングを振り返る vol.21「Let’s Dance」Yuji Ohno&Lupintic Five(2011)

さて、僕の音楽人生の中でも異色のバンドの参加となった大野雄二さんのバンド、
ルパンティック5への初参加作です。

僕自身はアニメを好んで見る方でも無く
ルパン3世といっても第一シーズンしか知らなく
それは音楽は大野雄二さんではなく
でも大野さんの作ったテーマ曲は流石に知っていて
でもそれ以外の曲は知らない
という感じでした。

もちろんルパンティック5や大野さんのトリオが活動していて
ルパンの曲をやっている事はドラマーの江藤君を通じて知っていました。
とあるジャズフェスティバルで僕は別のバンドで出演していた時
ルパンバンドも出ていたので楽屋に挨拶に行った事を覚えています。
当時のルパン関係のバンドはベースは全て俵山昌之さんが担当されていて
それは不動の地位のように思われました。
なので楽屋で大野さんに会った時に冗談で
「ベースの俵山さんが辞めたら僕を雇ってください」
などと言った覚えがあります。
そのぐらいベーシストは不動の地位のように思われたのです。

それから程なくして大野さんのマネージャーからライブのお誘いが。
御茶の水ナルの周年イベントでのライブ演奏でした。
頼まれたのはそれ一本。
しかもエレキベースでお願いしますとのこと。
しかし内容はジャズ。

エレキベースの持ち替えは他のライブで行なっていため
慣れてきた頃で違和感は無かったのですが
ジャズの演奏だけというのは逆に新鮮でした。
今思えば、これがオーディションのようなものだったのかもしれません。

ライブが終わって大野さんとマネージャーの方から「ちょっとお話が」と。
「わかっていると思うけど」
「(え?全然わかっていないのですが)はい。」
「ルパンティック5に参加して欲しいのですが。出来ればトリオも」
「(えー!聞いてないよ!)それは大変光栄なお話です。」
まさに寝耳に水。
永久に専属ベーシストだと思っていた俵山さんが脱退するとのこと。

実際に交代するのはその半年後でしたが、スケジュールを組んだり、アーティスト写真を撮ったり。

僕が加入しようと思った決め手は
大野さんのジャズに対する熱い思いでした。
なんとかジャズを多くの人に聞いてもらいたい。
ジャズというものがカッコよくて聞いて楽しいものだという事を伝えたい。
そういう願いを持っている人でした。

バンドメンバーも素晴らしいプレイヤーばかりで
これはやりがいのある仕事に巡り会えた、そう思いました。

このアルバムは僕が参加した初めてのアルバム。
ジャズのエッセンスのたくさん詰まった、そしてファンキーなビートにあふれた音楽。
これを沢山の人が聞くと思うとワクワクしました。
このアルバムではピッコロベースも2曲弾いており
僕の新しいチャレンジでもありました。

この頃は大野さんもルパンの名前を借りなくても自分の音楽で
沢山のお客さんを楽しませて行くのだという強い覚悟を感じました。

お客様もずっとルパンのアニメのファン。
そして大野さんのドラマや映画の音楽のファン。
そういう人たちが沢山集う場所でした。
その中でも純粋なジャズのファンにも増えて
とてもいいバランスで活動できていました。
お客さんもどんどん増えて
コンサート会場もどんどん広くなっていって。
歌が無い、いわゆるインストルメンタルのバンドで
単体であんなに大きな会場を埋めることのできるジャズバンドはこれしか無いように思います。

しかし、時は流れ、
大野さんもルパン回帰で制作側の意見を重要視するようになり
いつしかジャズへのこだわりが薄まって来たように感じられました。
演奏内容にもこだわりがなくなり
同じレパートリーを同じように演奏する日々。
バンドを維持する難しさと
リーダーシップの大切さを感じます。
やがてメンバー間の確執のようなものも生まれ
正直に良い演奏を届けるのが難しいと感じてきた頃に
ルパンティック5は解散。
在籍期間は6年でした。

どんな偉大なバンドでも真剣にやるほど長続きはしない
それがこの業界の宿命かもしれません。
しかし産み出された音楽は
だからこそ、その時の精一杯の輝きを放つのかもしれません。

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