プロと素人の境界線を考える

ウェブ上で、クラっときてしまうブログを見つけてしまった。
個人のブログで、web上の人気者のイベントに参加して、その場で主催者に「この中にプロのカメラマンはいませんか?発注していないので、ぜひいたら、撮影お願いします!」と、参加者の人に呼びかけるものが会ったらしい。そこでブロガーさんは「はい、自分プロのカメラマンです!」と答え、必死で撮影をしたという。

まあ、プロのカメラマンいませんか?って…参加者にちょっと呼びかけるのもどうかなーと思うけど、でも、ま、ファンミーティングな感じみたいだし、そうやってファンを喜ばせて、運営の仲間に入れて、役立たせてる、そんなイベントのやり方なんだろうなとは思う。たぶん、プロの仕事を期待しているわけでもないんだろうけど。(ありか、なしかって言われたらなしだと思うけど。そもそもプロとして仕事をしようと思ったら、プライベートの遊びで用意してくるのでは、下調べも機材も変わるだろうし、そんな頼まれ方したら「タダでいいですよ(できる範囲のことしかしないから)」ってなると思う)

ああ、このブロガーさんは偶然生業としていて、そんなふうに言われたから、嬉しくて、ファンのあの人に役立てるの最高!って思って手を上げたんだろうなぁと思い、読み進めてみて度肝を抜かれた。

「カメラの学校に行ったわけでも、弟子についたわけでもないけど、プロのカメラマンって名乗っていいんだと思って名乗りました!」

…え、この人のプロの定義、お、おお、おかしくない!?!??

そのイベント、ファンミーティングっていうか、スピ系自己啓発の祭っぽいらしく、「自己アッピール」をすることは、まあ、場の雰囲気としてありなのだろう。そういう前提があるとはいえ・・・

プロの意味、完全に履き違えているな…とうんざりした。
よく、資格取得の必要がない、新規参入がしやすい仕事ーイラストレーター、ジャーナリスト、カメラマンなどーは、「名乗ったらもうプロ」ってよく言われるけど、さすがに違うと思う。

もちろん、学校で勉強をしていなくても、高名なカメラマンの下で下積みをしていなくてもいいとは思う。
ただ、1点、これさえクリアすれば「プロ」だと思うものがある。

それは
「その技能で金をもらったことがあるか」
だ。

私も専門職につきたての頃、プロと素人の違いとはなにか?をすごく考えていた。新卒で入ったと言っても、その業界の常識や、納品物を作るための必要な手順をわかっていない時点で素人扱いされる。「プロ」と業界内の人間に認めてもらうには、お金をもらって働き始めても、それなりの時間はかかる。特に私のように勘所がわからない人間は本当に「まともに使える」レベルに達するまでの下積みがとてつもなく長かった。10年以上同じような業界でシコシコ仕事している今だって、よくその勘所を間違えて、幾夜涙で枕を濡らしたかわからない。その勘所こそ、技能がなかろうが、経験がなかろうが、「クライアントから金をもらって納品する」という1点だけだと私は思う。

このnoteっていう機能もいわば、営業活動の手間を最小限にして「クライアントから金をもらう」の小さな実績を積む、実績千本ノック道場みたいな場所だと思っている。いいね!や実際の投げ銭で「客はこういうのを求めてるんだな」というのを肌で感じていくというか。そういうのを積み重ねていく中ことなしに、「プロ」とは言えないんじゃないかなー。
(ちなみにここで、私が全くお金設定をしていないのは、プロになるつもりがないからですね。お客さんが満足してくれるようなクオリティのものは書けないし、そもそも思うがままに書きたいように書きたいんですもの)

私はスチールカメラに関してはズブの素人だ。だが、ものを作る、クライアントからお金をもらって納品する、ということは「クライアントのニーズを読み取って、ギャラに見合ったレベルの納品物を提出する」というのが肝要だと思うんですワタクシ。ていうか、それってどんな仕事でも一番求められるし、一番むずかしいとは思うんだけど。

だから、その勘所さえ抑えられるんだったら、経験もキャリアも勉強も下積みも関係なしに、プロを名乗ればいいと思う。「あれ、あの人、なんで年商◯億の映像会社の社長やってるんだ…?数年前まで世界一周旅してなかった?」みたいな、尋常じゃなく勘がいい人もいるわけで。

そのブロガーさんの記事をさすがに見間違えたかな?と思って「友達に頼まれてやった程度」とか「結婚式でちょっと撮影をした程度」とか、そんな記述を探した。「お金」と書いたけど、最悪お金をもらっていなくても、お客さんから仕事をやらせてもらったこともないのに、まさかプロをなのんないでしょwと思ったのだ。でも、そんなことを感じさせる記述は一切なく。

まあ、そういうハッタリで、実績を積んでいくのはありだと思うけど、そういう本質的なところはわかっていないと、プロとしてやっていけるのかなぁ。ていうか、カメラマンという仕事をさすがに、なめ過ぎじゃない?とちょっとイラッとしちゃいました☆新規参入が楽で、個人でもできる世界だからこそ、プロとしての矜持が必要だと思うんだけどなぁ。。。
ま、その人は、まだ技能がおいついていないだけで、そんな屁理屈を考えなくても、息をするように、自分の表現したいアート作品と、クライアントに納品する作品で、ちゃんと意図や狙いを使い分けられる理性的な人なのかもしれないけどね。

その人が「プロとして受注した写真の一部」をブログにアップしていた。
・・・これが、プロの仕事かぁ…狙いがよくわからない写真過ぎて、これどうやって、何に使うのよ…というクオリティ。いやいや、もしかしたら、あえてクライアントに渡せない、ボツ写真を上げているのかもしれないけどね。納品前っぽかったし。

しかし、我ながらどんだけ昔気質の職人みたいなことを言っているんだろうか…。こんなことを言わなくても、スマートにいろいろこなせる才能が、本当はほしかったよ…。愚痴みたいなエントリーで恐縮です。

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