【クリアした人向け】龍が如くマニアが龍が如く8プレイ感想と新主人公春日一番の魅力を語る


2024年上半期、龍の年ということで、先陣を切るかのように龍が如くシリーズの新作、龍が如く8が発売され、発売からわずか一週間で100万本売り上げる、というターン性コマンドRPGというジャンルしては異例の驚異的な売り上げを叩きだしました。

コマンド式RPGの市場規模は年々縮小してきており、大ヒットしたとしてもせいぜい、オクトパストラベラーやライザのアトリエのように2、300万本が底なんですけども、発売から僅か一週間で、イケメンでも何でもない中年のオッサン達が主人公のコマンドRPGが100万本売れる、というのは、逆に凄いんじゃないかな、と思いますね。

年末にはAMAZONプライムで実写ドラマ化も決定している龍が如くシリーズ。
今回はその最新のナンバリングである龍が如く8のプレイ感想と、新主人公春日一番の武器について書きたいと思います。

最初に、私は龍が如くは初代からずっと全作、派生作品も含めて遊んでいるユーザーで、龍が如く3、6、7、OFTHEENDはトロコンするまでやり込んでいます。


こんな感じで、龍が如くをやり込んだ男です。

【総評】

世間的には上半期ナンバー1のゲームはエルデンリングDLCを除き、売上だけで言うとドラゴンズドグマ2かFF7リバースになるのでしょうが、私個人としては龍が如く8かユニコーンオーバーロードのどちらかな、と迷った結果、龍が如く8を選びました。

龍が如く8はシリーズ物ですので、遊ぶには最低でも前作である7と、その外伝をプレイする必要があります。とはいえ、6までの主人公である桐生一馬の物語はエンディングノートというプレイスポットで、駆け足ですがある程度補完されておりますので、龍が如く8を遊ぶためだけに、無理して0から6まで全作履修する必要はないでしょう。
私は龍が如くは派生作品を含めて全作履修済ですので、0から始まる物語全体の大きな流れはキチンと理解しておりますが、7から入った新規の方は春日一番と同じ視点で桐生一馬を知り、龍が如く8で桐生一馬に本格的に触れて興味を持ったら、彼がどういう人生を送ってきたのか詳しく知りたいなと感じたら、8をクリアした後にでも過去作をじっくり振り返っていく、という楽しみ方もあると思います。
ですので、龍が如く8に興味自体は凄いあるけども、0~6までプレイして無いから遊べないや、みたいに諦める必要はないですよ。最低でも前作の龍が如く7とその外伝だけ自分でプレイするなり動画で履修しておけば、龍が如く8から入っても全然楽しめるゲームになっています。

そんな龍が如く8の一番の魅力は、前作の7から、全てにおいて洗練されたバトルシステムと、常軌を逸した圧倒的大ボリュームです。スジモンという、その筋の者、筋のモン、略してスジモンという方達にお歳暮を渡して仲間にし、戦わせていくスジモンバトルやドンドコ島、エンディングノート、不審者スナップ、クレイジーデリバリー、その他多くの今作独自のプレイスポットを全て無視してメインストーリーだけを進めていっても、エンディングを観るまでに、どんなに少なく見積もっても60時間程度はかかります。一日2時間遊んだとして、約1か月ぐらいはクリアに時間がかかります。
ちょっとでもドンドコ島で生活しようとしたり、スジモンバトルに嵌ったら最後、あっという間に時間が溶けて、人によっては100時間なんて余裕で超えちゃうほどの圧倒的大ボリュームのゲームに仕上がっていました。
更にDLCではありますが、追加ダンジョンや、高難易度の2週目もありますので、人によっては、まだクリアしていません、という人も沢山いると思います。

そんな圧倒的大ボリュームなゲームにも関わらず、2024年6月現在でのPS上でのクリアトロフィー獲得は既に59.1%と、相変わらず龍が如くシリーズは驚異的なクリア率を叩きだしています。龍が如くは非常にストレスフリーなゲームデザインで、プレイヤーをエンディングまでクリアさせるのが非常に上手いゲームです。

更にクリア後には本編のムービーが全て観られるムービーミュージアムが解放され、あの章のあのムービーもう一度観たいな、と思ったらいつでも鑑賞することが可能です。当たり前なんですが、こういう当たり前のことをキチンをやってくれるゲームは非常に少なくて、龍が如くのユーザーフレンドリーな姿勢には毎回感心させられます。

ホノルルを舞台にした新マップであるハワイの街並みもリアルに作り込まれており、ターン性RPGでありつつも、雑魚敵を倒してレベリングみたいなことをする必要がないゲームデザインになっていました。

現代のコマンド式RPGのレベリングのトレンドはダンジョンです。エルデンリングもダンジョンでレベリングしますし、ペルソナシリーズも戦闘はダンジョンのみ、今年発売されたJRPGの百映雄伝も、レベル99まで上げるレベリングはダンジョンみたいな場所でした。

龍が如く8もその時代の最先端のRPGに沿って作られており、横浜とハワイの二か所にプレイヤーがレベリングを行うためのハクスラダンジョンが用意されていました。
龍が如く8はレベル差補正はそこまできつくないゲームで、プレイヤーよりレベルが5つぐらい高い雑魚やボスでも充分倒せるようになっています。ですので、メインストーリーの要所要所で攻略推奨レベルを教えてくれますが、多少低くても、ノーマルならジョブ構成次第で充分クリア可能な難易度になってます。

前作の龍が如く7みたいに、レベル99で複数のジョブをカンストさせていることが前提の裏ボス、スーパーファイナルミレニアムタワーみたいな鬼畜なダンジョンは今作にはありません。メインストーリーをクリアするまでは凄い長いんですけども、エンディングを観たら基本的には終わりで、後はそこそこのやり込みでトロコン、全実績解除可能ですので、何か一つゲームをトロコンしてみたい、という人にも凄いお勧めなゲームだと思います。

PSユーザーならご存じかと思いますが、PSにはPSスターズというサービスがあり、その会員ランクを上げるためには、ゲームを複数トロフィーコンプリートする必要があります。ですので、龍が如く8はシンプルに面白いですし、会員ランクを上げる為にトロコン数を稼ぎたい、というPSユーザーにも凄いお勧めの一本です。
PSユーザーはトロコンが難しいゲームを非常に嫌がりますので、この辺の塩梅も実にプレイヤー目線で、ユーザーフレンドリーだと感じます。

そんなPSストアでの世界のプレイヤーの評価は以下。

総合:4.83

星5 91%
星4  5%
星3  2%
星2  1%
星1  2%

もう、これはびっくりするぐらいに圧倒的神ゲー評価ですね。龍が如くシリーズで、過去ここまで評価の高いナンバリングタイトルは、恐らく初めてじゃないでしょうか。前作はストーリーは絶賛されていましたが、ゲーム的にはまだ洗練されてない部分も散見されましたが、今作はゲームとしても前作から劇的にプレイフィールが向上しており、しっかり面白いです。ゲームとしての面白さ、ボリューム面なら、あの龍が如く5を超えて、間違いなくシリーズ最高傑作でしょう。

龍が如く8を購入しプレイして、超面白くない、買って損した、買わなきゃよかった、返金させろ、というプレイヤー、わずか2%しかいません。それぐらい、今作の龍が如く8はプレイヤー満足度が非常に高いゲームとなってます。勿論私も大満足です。

【ストーリー感想】ヒューマニズム溢れる温かい、優しい世界の物語

ここからはストーリーについての感想ですので、ネタバレが嫌だ、という方は読まないようにしてください。

龍が如く8は、私は非常にヒューマニズム溢れる物語で、とても面白いと感じました。前作から続いている春日とさっちゃん、40代のオッサンと30代の女性との甘酸っぱい恋模様も、安っぽいお昼のラブロマンスドラマみたいに描かず、ちょっとコミカルなラブコメディとして描写してくれていたのが嬉しかったですね。物語冒頭の、主人公で40代の春日一番の純朴な恋愛相談に、ナンバと定年退職した足立さんが真剣に乗ってくれる姿は、シリアスなんですが、コミカル要素と哀愁も多分に含まれていて、秀逸だなと笑わせられました。大人の恋愛ラブロマンスドラマというのは昨今需要がありませんが、ラブコメディは常に需要があります。今の時代は恋愛はコメディにしないといけないんです。ですので春日とさっちゃんの恋模様も、龍が如く8みたいにちょっとコミカルな味つけにした方がいいんですよ。龍が如く2でも桐生と狭山の恋模様が描かれていましたが、安っぽいメロドラマでは終わらせずにしっかり描ききった実績がありますし、その辺りを龍が如くスタジオのシナリオ担当達は非常によく理解していますよね。
前作龍が如く7のように倉庫が大爆発するとか、ヤクザの総本山に乗り込んで大暴れする、などという映像的にド派手な展開はやや乏しかったですが、もう一人の主人公である桐生一馬が初めて自己の内面を深く見つめ、人生を振り返っていく、黒沢明監督の名作「生きる」とほうふつとさせるシナリオ展開は、シリーズを長く遊んできたファンにとっては涙を誘うものですし、末期癌で余命半年と宣告された桐生一馬と同様に、難病で苦しい境遇にいたり、生命の危機に瀕している人達にも希望と勇気を与える、「死ぬな、生きろ」というシンプルなメッセージを伝える、素晴らしいストーリーだったのではないか、と思います。

特に、龍が如く8はね、OPムービーが、お洒落で、そして泣ける人には凄く泣けるんですよ。
主人公の春日一番が、仕事が終わって街をぶらつき、牛丼屋で牛丼をガツガツとかきこみ、異人町のグレーゾーンで暮らす街のみんなと触れ合いながら、ボロいアパートに一人で帰ってきて泥のように疲れて眠る、という非常に短い映像なんですが、この映像がね、社会の荒波に揉まれまくった働く男達の心に、なんかすっごい染みるものがあるんですよね。
特に主人公の春日一番が、牛丼を真剣な表情でかき込んでいるシーンに、私は働く男の哀愁みたいなものを感じました。春日は働いているとはいえ非正規雇用ですし、お金なんてそんな持って無いですから、夕飯も食費を節約するために牛丼並盛までしか頼めない、そういう男です。私も会社で働いてて、金欠でお金に困っていたとき、夕飯を牛丼で済ませた日が沢山ありました。本当は吉野家行きたいけど、松屋は味噌汁無料で付いてくるから、栄養バランスとかも色々考えて松屋にしておこうかな、いや、たまにはちょっと贅沢してなか卯、か、すき家とかにしちゃおうかな、みたいなね、そんなことを春日一番も考えてるのかな、とか思うと、それだけでもう、凄いなんか色々泣けてくるんですよね。
中年男性のワーキングプアが牛丼屋の並盛で夕食を手軽に済ませる、という描写は、日本社会の暗部ようなもので、普通のドラマだと、暗い音楽を入れて悲しい描写にされがちなんですが、それを辛気臭さを一切感じさせずに、ポップに明るく演出して、さり気なく挿入する、そのOP映像が本当に神がかって良く出来ており、龍が如くスタジオスタッフの演出は毎回センス抜群だなって感服させられてます。
昔から龍が如くシリーズはボス戦に入る演出が神がかってましたけども、龍が如く8のOPは、そういうスタッフの神がかった演出力、映像の魅せ方の上手さが抜きんでていて、本当にOPムービーだけで、上質な実写ドラマか映画を観ているような気分にさせられました。

そんな龍が如くには、シリーズを通して、一貫して描き続けている、大きなテーマがあります。

それは何かというと、「生きることは逃げないこと」です。

龍が如く史上屈指の高難易度と呼ばれる龍が如く5を難易度ノーマルの状態のまま、かつ一度もイージーに下げずにエンディングまでクリアすると、「生きることは逃げないこと」というトロフィーが獲得出来るんですが、まさに、龍が如くはシリーズを通して「生きることから逃げるんじゃない」と、シンプルに熱いメッセージを、桐生一馬の背中でずっと伝え続けてきたシリーズです。

そのテーマを体現するかのように、これまでの龍が如くの主人公桐生一馬は、過酷な状況下に置かれても、決して「生きる」という選択を捨てない男でした。
ですがその桐生一馬が、今作の8では末期癌で余命半年と宣告されてしまいます。そして、これまで生きることから逃げてこなかった男が、初めて「生きる」ということに迷いを抱き、そして諦め、半ば自暴自棄状態に至ってしまっておりました。そんな桐生一馬がハワイで新主人公の春日一番と再会し、更に前作の仲間達と触れ合い、ナンバに提案されたエンディングノートをしたためる過程の中で、自身の人生を振り返り、今一度生きることの意義を見出していこうとしていくまでの過程の物語は文学的であり、美しさすら感じさせてくれました。
龍が如く8はずっとシリーズを支え続けてきた主人公の桐生一馬の引退試合のような作品で、新主人公の春日と仲間達が窮地に陥った桐生一馬を救う、と、1からずっと遊んできた私は、今作をそのような物語と受け取りました。

レモネードを販売する少年を助ける春日の話や、子供を育てる為に娼婦をする女性のエピソード、更にもはや準レギュラーになりつつあるススムちゃんこと権田原組長など、今作のサブストーリーにも、泣ける話、心がほっこりする話、笑える話が豊富に用意されていました。
メインストーリーの中で、私が特に感動したのは、主人公である春日一番と実の母とされる茜さんが、二人きりで夕日が差し込むビーチで会話をするシーンですね。そこで春日は実の父親とされる荒川真澄の遺骨の入ったペンダントを茜さんに手渡しし、「産んでくれてありがとうございました」と爽やかな笑顔で言うんです。
前作の荒川真澄が春日の本当の父親なのか、茜さんが実の母親なのかは、DNA鑑定をしていないので真実は解りません。ですが春日は、そんな茜さんにも一切照れずに明るく、そういう言葉を言い切ったんです。決して映像的な派手さは無いのですが、夕日をバックに語られるそのシンプルなメッセージには何とも言えない重みがあり、演出なども相まって、私は作中で一番心を揺さぶられ、涙腺を少々潤ませてしまったシーンでした。

【新主人公春日一番の魅力と龍が如くの新たなコンセプト】

 龍が如く8では、裏社会に人生を狂わされた人間が沢山登場します。元極道者を全員更生させて社会に戻す事を自らの生きる目的にしている春日一番にとって、そのような境遇に置かれた人達は、悪に堕ちたとはいえども断罪することは出来ず、むしろ元ヤクザの責任として、絶対に救わないといけない存在です。
 それは6までの主人公であった桐生一馬も同様です。桐生編のラスボスも、やはりヤクザによって人生を狂わされてしまった男であり、桐生はそんなラスボスに対し、元ヤクザとして、最後に謝罪をします。これまでの龍が如く、そして桐生一馬であれば、拳で解決し、ラスボスは死んでしまったと思いますが、今作ではそういうことは一切せず、ラスボスが命を落とすことのない優しい世界、「罪を憎んで人を憎まず」のような、そんな明るい結末に描かれていました。

春日一番はハワイで悪事を働いていた人物を制裁しましたが、命までは奪わず、トミザワや新キャラの三田村、千歳など、自らを陥れ追いこんできた相手や裏切った仲間にさえも、桐生一馬が主人公の龍が如くとは異なる解決策を取りました。
これは元々正義感が強い新聞記者として真面目に社会で生きていた三田村が、ヤクザに人生を狂わされて破滅の道に進んでいってしまった人間だったから、というのも理由にあるでしょう。

龍が如く8の直前に発売された龍が如く7外伝にて、ヤクザの夢を嬉々として語るラスボスに、主人公である桐生一馬が「お前が語るヤクザの夢なんてものは、日々の日常を一生懸命生きている普通の人達に比べたら、ゴミみたいなものだ」と断罪していましたね。
日々を一生懸命生きていた正義感が強い男であった三田村の純粋な夢は、そんなゴミのような存在であるヤクザによって、無慈悲に奪われてしまったんです。

三田村は悪役でしたが、そういう背景もあり、事件解決後、春日一番は行方をくらました彼を探し出します。

春日は建物に身を潜めて怯えていた三田村の前に姿を現し、彼に「俺とお前は友達だ」と言いつつも、出頭するように、と優しく呼びかけました。私はこのシーンを観て驚愕しました。これは春日が善人だとか、ただのお人よしだとか、そういう話ではなく、新主人公春日一番のネゴシエーションであり、春日一番って、実は一流のネゴシエーターなんですよ。

ネゴシエーターとは交渉人で、主に凶悪犯罪などで籠城したりしている犯人と交渉する役割を担当する特殊な仕事です。昔踊る大走査線というドラマでユースケ・サンタマリアさん演じる登場人物がネゴシエーターとして活躍するスピンオフ作品が制作されていましたが、春日一番が今作のラストで三田村に行ったことも、完全にネゴシエーションなんです。

一般的に、ネゴシエーターというのは、立てこもっている犯人の主義信条を否定したり、神経を逆なでするようなことは絶対に言いません。むしろ相手の立場に寄り添い、「私だけはキミの友達で、味方なんだよ」と優しく呼びかけていきます。主人公である春日一番が潜伏していた三田村に対して取った行動とその発言は、まさにネゴシエーションそのもので、そういう意味で、春日一番は、天性のネゴシエーターといえるでしょう。
前作でも、春日はラスボスを追い詰めることはせず、むしろラスボスの立場に寄り添い、「俺達は家族だろっ」と涙を流して呼びかけていました。これもある種のネゴシエーションであり、実際前作のラスボスは、最後にほんの少しだけ人間としての良心を取り戻した、かもしれません。
桐生一馬が主人公の龍が如くだと、ラスボスなどはぶん殴って終わりで、作品によっては死んでしまいましたが、龍が如く7以降の新主人公春日一番の龍が如くでは、ラスボスには、まるで刑事ドラマの主人公のように犯人との対話を重んじて、悪事を働いた相手を力ではなく、対話で説き伏せ、出頭させようと試みます。
主人公が桐生一馬から春日一番に変わったことで、物語のコンセプトや、ラスボスに対するアプローチの仕方が180度変更されたのです。
ですので、龍が如く8のラスボス戦後のエピローグでの三田村と春日との邂逅は、桐生一馬のように何でも拳で解決する男とは異なり、対話を重んじて、極力対話で解決しようとする新主人公春日一番という男のスタンスをプレイヤーに強く印象づけるシーンだったといえるでしょう。私はこのシーンを観て、春日はそういうスタンスの男なんだな、と理解しました。

龍が如く7からの新主人公である春日一番の物語は、おとぎ話の桃太郎の鬼退治のように、お供を連れて悪い鬼を懲らしめるような話であり、任侠映画のように命を奪って登場人物が次々死にまくるという殺伐とした話ではありません。勇者春日一番は桃太郎みたいな存在であり、悪い鬼を改心させようとする男です。
そういう物語の性質上、春日一番は作中屈指の人格者で、聖人のように描写されています。罪を犯した人間に、お坊さんが説法をするように、新主人公の春日一番は罪を犯した者の罪を許し、説法し、反省させ改心させ、自らの仲間に変えていくわけです。
ですのでシリーズを重ねる毎に敵を作り主要人物が次々いなくなっていく桐生一馬の龍が如くとは異なり、春日一番の龍が如くは、シリーズを重ねれば重ねるほど仲間が増え、登場人物も増えていきますので、今後益々シリーズ全体が盛り上がっていくと思われます。
春日一番の龍が如くは、男はつらいよ、みたいなコミカルなヒューマンドラマ路線で、明るい物語として描かれていくことでしょう。

【あえて不満点をあえて挙げるなら】

 冒頭にも述べた通り、私は龍が如くはナンバリングと派生作品含めて全て遊んでおり、今作は非常に満足していますし、露骨な不満はありません。あえて苦言を述べるなら、ストーリーが前作の7と比べると、やや見劣りしてしまうかな、という程度です。ジャッジアイズのような一話完結物の探偵作品ならともかく、同じ主人公で連続したストーリー性があり、過去作の人気キャラを新作で絡ませ、かつファンが納得するような面白い話を書き続ける、というのは、プロの小説家でも困難を極める作業ですから、そこまで高望みするのは良くないのでは、とも思ってしまいます。全体的に少々描写不足を感じる点もありましたが、そこはプレイヤーが読解力を駆使して「行間を読む」ことで充分埋められる範囲であり、少なくとも龍が如く3,4,5よりはずっと真面目で面白みのあるストーリーだったと思います。
杞憂になってくれればいいんですが、今後のナンバリングの展開を考えて不安要素を上げるとしたら、今作でファンの心を掴み人気キャラクターとなったソンヒが春日と本編で深く人間関係を構築する機会がなかった点ですね。今作では桐生一馬絡みで上手くソンヒを登場させられましたが、次回作には桐生一馬は流石に出てこないと思いますので、春日と接点が薄いソンヒをどのように次回作に絡めてプレイアブルキャラにもっていくか、というのは次回作のナンバリングを制作する上での大きな課題の一つになるでしょう。ハンジュンギと趙さんも、本来は登場させる予定はなかったそうですが、人気キャラなので話に絡めることになり、出番後半、終盤と遅かったですが何とかプレイアブルキャラに出来ました。が、次回作では、どうしようか、どうなるのかな、という不安はあります。また、今作はクリアまでに最低60~80時間程はかかる大ボリュームでしたので、次回作でメインストーリーのボリュームが落ちたりすると、ストーリーは面白かったとしても、龍が如く7外伝のようにボリューム不足を指摘され、プレイヤーの満足度も若干下がってしまいますから、その辺も不安要素ではあります。ですが龍が如くスタジオは毎回毎回ゲームとしてウケる、キッチリ面白いゲームを作ってくれてきているスタジオですので、次のストーリーの出来はともかく、次回作でも面白いゲームになるか、という不安が杞憂に終わってくれることを願うばかりです。

ということで、龍が如く8の感想は以上です。私の中の個人的評価では、龍が如く8は上半期ナンバー1のゲームといえる出来でした。ハワイに行ったことは一度もありませんが、いつか機会があれば行って、ゲームの舞台がどれだけ実際の舞台を再現しているのかを確認してみたいと思いました。

まだ気が早すぎますが、既に開発が発表された龍が如くスタジオの新作、あるいは龍が如く9?にも期待したいです。龍スタは開発が速いので、来年か、2026年には、キムタクの続編か、龍が如く8の外伝?か、何かしら新作が発売されると考えているので、今後も一ファンとして完成を見守り、出来上がった作品を楽しませてもらいたいですね。

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