見出し画像

5月14日 「風邪の時に見る夢か!」っていうツッコミ

 僕は見覚えのあるような、ないような、曖昧なショッピングモールをうろうろしていた。するとへそのしたあたりがキュッとしだして、「おしっこいきてえ」と思った。しかし、探せど探せどトイレは見つからない。歩いていればいつかはtoiletの看板が目に入るかと思ったが、いつまでたっても見つからない。それどころか、イオンの端にすらたどり着かない。自分以外に人もいない。
 まさか、あの無限イオンに閉じ込められたのか?
 一生、イオンから出られないのか?

 そう思ったとたん、肩に絶望がのしかかり、お股には尿意がたぎり、体がズンと重たくなったような気がした。

 しかし、視界の端に、釣り看板がちらついた。思わず顔を上げた。

 ユニクロと銀だこの間を指し示す、質素な矢印と、そう、toiletの文字!

 僕はたまらず駆けだした。

 助かったー! おしっこしまーす!

 ………………ハッ!

 飛び起きると、そこは寝室だった。

 なんだ、夢だったのか。ビックリした。っていうか「無限イオン」ってなんだよ。聞いたことないよ。
 僕はくびっと水を一口飲み、トイレへ向かった。一生出られないイオンは夢だったが、尿意は現実だった。
 

 少し話は変わる。
 夢と言えば、とあることを思い出す。

 というツッコミ。極めてカオスな状態のものを指す。生まれてきて1000回は聞いたツッコミだ。そろそろ禁止カードにしたらいいのに、と思うくらいには何回も聞いている。

 しかし、何回も聞いてはいるものの、僕はこの形容にいまいちピンと来ていない。

 僕は、風邪のときに夢を見たことが無い。

 いや、実際はあるのだろう。夢は本来なら毎晩見るもので、そのほとんどを忘れている、なんて話も聞く。であれば正しくは、風邪のときの夢を、ちっとも覚えていない、ということになる。なんであれ、僕はこの形容に共感を覚えたためしがない。ほんとにみんな風邪の時に変な夢を見てるの? 皆が言ってるから使ってたりしない? 

 ということを化物語を読んでいる志摩君に聞くと、「自分も風邪の時に変な夢を見ることはないけど、まあ、感覚としては理解している」と、呪術廻戦の日車みたいなことを言っていた。また、「さいきんエッチな夢ばかりみて困る」とも言っていた。共感できるかは人によるらしい。

 そもそも夢というのは一概にしてカオスなものではないのか。
 知らない場所や知らない人が、夢の世界では親しい人という設定になっていたりする。情景の展開が、現実の地理とは辻褄が合わない、なんてこともある。むしろ整合性のとれた夢なんて見たことが無い。アニメや漫画では、切なめな回想シーンを、そのキャラの夢として扱われることがしばしばある。しかし、それはあくまで演出のはずだ。実際にそういう夢を見る人っているのだろうか。できるならば僕も、「ちょっと懐かしい夢をみててね」とか言ってみたい。

 話はそれたが、つまり、カオスな状況を表すのに、「風邪のときの夢」はやはり半端ではないかと思う。現にこの世には最低でも二人、風邪のときに悪夢をいない人間がいる。やはり、例えを用いて何かを形容するのならば、多くの人間に伝わるべきである。
 しかし、何も「風邪のときの夢」に評価する点が一つもないわけじゃない。眠るときに見る、この「夢」を見たことが無いという人間は、ほとんどいないだろう。先述した通り、夢それ自体に、カオスの萌芽が眠っている。夢の要素を流用し、さらにアップグレードさせようではないか。
 
 カオスな夢といえば悪夢。悪夢といえば、そう、僕が今朝見た夢。

 おしっこをしそうなときに見る夢!

 僕はなぜか、膀胱が悲鳴を上げているときに奇妙な夢を見る。尿意マックスという状態異常を抱えながら、ゾンビなどに追われり、体が宙に浮いたりする。これは八割くらいの確率で見るから、風邪よりよっぽど共感できる。

 つまり、風邪夢ツッコミに対する新たなツッコミはこちらになる。

 

 
 おしっこはみんなするし、これならみんな納得してくれるんじゃないか。 

 ご納得できない方は一度使用例のほうを見ていただこう。

 とある高校、美術の時間にて。
A「ふうー。これで完成かな」
 Aさん、地獄の炎に焼かれる老婆の絵を掲げる。
 Bさん、それを指さし言う。
B「ちょっっwwwwwおしっこしそうなときに見る夢か!wwwww」

 いかかでしょうか。
 まだまだ改善の余地はあるだろうが、これが現時点で出せる最高のものじゃないだろうか。

 というわけで今後は、「夢のときに見る夢か」改め、「おしっこしそうなときに見る夢か」へと変えていってほしい。これで君もクラスの人気者だ。僕は使わない。じゃあ僕はちょっとお手洗いに。

 

 

 

 

 
 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?