気になるあの人

僕にはここ1年間とても気になる人がいます。

僕の住んでいる町の最寄り駅付近を歩いていると、かなりの確率で出会う女性です。
恐らく60歳以上の女性で、長めの白髪でワンレンロング。
腰は曲がり気味でキャリケースを乳母車代わりにして体を支えるようにして歩いてる方です。

気になり始めたきっかけ

気になり始めたのは昨年の冬でした。
僕の住む町はそこそこ大きい駅なので、人通りはとても多く、一々町で見かけた人のことを気にかけることなどはありません。
ただ、上述のようなルックスで、かつダウンジャケットを着るような真冬の日に、コートも着ずに、バブル期を思わせる千鳥格子柄の肩パッドの入ったスーツを召してるご年配の女性が、どこか行く当てもなさそうに、道をゆっくりと歩いていたので、なんとなく記憶に残ったのです。

そして、僕が駅付近に出かけるとかなりの高頻度で見かけるようになり、
昼夜問わず、同じジャケット姿で、どこに行くわけでもなく、道端で立っているのです。

毎度同じ服装で、日付が変わるような深夜の時間帯でも見かけることがあったので、ひょっとしたらホームレスの方なのかもしれない、とも思いましたが、身なりは綺麗にされていましたので、
お気に入りのジャケットを着ているだけのようにも思われました。
僕も冬はほぼ毎日同じアウターで過ごしたりもするので、毎日同じ格好でも、そんなに珍しいことではないかと。

気にはなるけど、声をかけるのも変な気がして、見かけるたびに「あ、今日もあの人いるな。寒くないのかな。」と思っていました。

季節の移ろい

春になって少し暖かくなってきた頃、パートナーと出かけたときに、その方がいつものジャケット姿で歩いているのに出会いました。
パートナーといる時に見かけるのは初めてだったので、「あの人、いつも駅の辺りを夜遅くまで一人で歩いているんだけど、大丈夫なのかな」と話してみましたが、
「へぇ~」と完全に興味ない感じで流されてしまい、
僕にとっては結構印象的なルックスだから気になってしまうのに、パートナーはなんでこんなに興味ないんだろう、と不思議に思い、
ひょっとして僕にだけ見えている幽霊とか…などと失礼な妄想を膨らましていました。

しかし、季節は夏になり、猛暑日が続くころになると、
女性は水色のワンピース姿になり、駅の高架下にあるちょっとした窪みに腰かけて、暑さにうなだれながらもハンカチで汗を拭いて休んでいる姿を見かけるようになりました。
幽霊がどういうものか分からないけど、しかめっ面で汗をかいているイメージはないし、こんな猛暑日の真昼に現れるものではないだろうから、幽霊説は棄却しました。
そして、少なくとも服を着替えているし、この暑い中で清潔感を保った格好をしているわけだし、僅かに疑っていたホームレスである可能性も排除されました。

そんなわけで、その女性が幽霊でもホームレスでもないことが分かってなんとなく安心しました。
僕が変に気にしてしまっているだけだったな、と。

結局

しかし、幽霊でもホームレスでもないことは分かったけれど、
あの女性が、あてもなく駅周辺を夜遅くまで歩いている理由は謎のままです。
ただ暇だからとか、街を歩く人を見るのが好きだからとか、ただの散歩とか、リハビリとか、そういうポジティブな理由だったら良いなと思いますが、
曲がった腰でつらそうに歩いているように見えるので、何か家に居たくない理由があったりするんじゃないかとか余計な心配をしてしまいます。

本当に余計なお世話でしかない可能性が高いので、何か行動をしたわけではないのですが、
ここ最近急に見かけることが無くなったので、なんとなく気になって書いてみました。
勝手に心配しているだけなので、実は何でもない理由で、僕が失礼にも変に気にしていただけであればいいなと思います。


ゲイである僕にとっては、匿名性の高い街で暮らすのは、とても暮らしやすいのですが、
それゆえに、お年寄りの方とか、何か困っている人が見えにくくなるという側面もあるように思います。
今後高齢者が益々増えていくなかで、孤独な高齢者の方というのも増えていくように思います。

お互い干渉はしないけれど、気にはかける、みたいな、丁度良い関係性を保てるような社会の形になっていったらいいな、と思います。
そのために、自分がどんな風に行動していけばよいのか、なんとなく答えがでない気持ちです。

自分だったら声をかけてほしいと思うか、というと、放っておいてほしいと思うような気もするし。でも、声をかけてほしいと思う時もあるかもしれないし。明らかに体調が悪そうとかだったら声かけしますが…悩ましいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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