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「貧乏だけど贅沢」沢木耕太郎 著 文春文庫

沢木耕太郎さんの対談集。


対談相手に、高倉健、井上陽水、群ようこ、田村光昭の名を見つけ、こりゃ、買わなきゃと思いました。


対談相手によってその場の空気感が違って、どれも面白かったのですが、一番しびれたのは高倉健さんとのエピソードです。


1980年10月、沢木さんが、モハメド・アリ対ラリー・ホームズの試合を見た時の話が出てきます。その時、沢木さんは、少し出遅れてしまってチケットが手に入らない。この試合は、「モハメド・アリが引退してもう一回カムバックしようという試合」で、アリにとって最後の試合になるかもしれないので、沢木さんは八方手を尽くしてこのチケットを手に入れようとするのですが、それが叶わない・・・と諦めかけた時に、ある人が「私が見るよりは・・・」と、共通の知人を通してチケットを譲ってくれたのです。そのある人が、高倉健さんです。


この試合でアリは、かつてのスパーリングパートナーだったホームズにめった打ちにされ、TKO負けします。そして、この試合を最後にアリはプロボクシングの世界から引退するのです。


沢木さんは、「この試合について何か雑誌に書くのではなくて、チケットを下さった方に書こう」と決意し、レポートを手紙の形で高倉健さんに送るのです。沢木さんの文章は間違いなく素晴らしいものだったと思うのですが、その文章を読んだのは高倉健さんしかいなかったのです。なんとカッコいい2人なんだろうって思いました。


沢木さんの文章は、やがて、アリが亡くなった2016年に追悼文として雑誌Numberに載ったのだそうです。高倉健さんも2014年に亡くなっていました。

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