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新事業BytePlusでどんなことをやるのか?

こんにちは、小島です。
2023年5月15日、ちょうど4週間前から、Bytedance Japanの新規法人事業「BytePlus」で、日本市場立ち上げのためにジョインしました。
現在は日本チームはエンジニアを除きビジネスサイド10名ほどで、純粋な日本人は私1人だけで日本語を話せる各国出身のメンバーとやっており、いつも私は渋谷ヒカリエのオフィスにいます。

BytePlusはカタカナで「バイトプラス」と書きますが、カタカナ名でGoogle検索しても1ページ目に出てこないですし、チャットGPTに聞いても変な答えしか返ってきません。

今回の転職に際して、多くの方からご連絡をいただきました。
応援や激励(ありがとうございます!)と合わせて、
「BytePlusは、そもそもどんな事業戦略なの?」
「BytePlusは代理店制度はあるの?」「今どのくらい売れているの?」
「小島さんが、Indeed日本の一発目をやっていた時のような面白そうな空気を感じるから、とりあえず話を聞かせてほしい」
といったご質問やご意見を多くいただいたため、今回入社エントリー的な形でブログにまとめてみました。今日以降あと2本くらいは別のテーマで書いてみようと思っています。

今回は、3つのトピックでまとめています。

  1. BytePlusとは何をやる組織なのか

  2. 何を狙って日本市場に参入したのか

  3. 入社して、早速感じた日本企業の実態

(本編に入る前に、前提情報を少しだけ🤏)

🙋‍♂️自己紹介
小島慶之(こじまよしゆき)
・これまで4社で働き、主にテック企業で新規立ち上げを、グローバルな環境でやってきました。アジアマーケット、ディープラーニング、採用関連、SaaSなどが関連してきたものです。
パナソニック海外営業→Indeed日本立ち上げ→HR系スタートアップ事業立ち上げ→【現在】BytePlus日本立ち上げ
・札幌生まれ横浜育ち
・10年前にIndeedに1人目としてジョインした際に、他の採用サービスにはないディープラーニングの凄さを目にした感動と確信が、今のBytePlusでの仕事につながっています。
・今私がまずやろうとしていることは、「日本企業へのディープラーニング・AI活用の民主化」
・海外旅行・サッカー・アウトドア系のアクティビティ好き
※昨年ワールドカップにもカタール現地で21試合を見ました。メッシが好きで10年前のメッシの車に足を轢かれたこともあるなど、色んな意味でサッカーが大好きです。


BytePlusとは、何をやってる組織なのか?

- 事業概要・組織体制

BytePlusは、Bytedanceグループが持つ先端技術を外部オウンドサービスに外販するビジネスソリューション事業です。SaaS、PaaS、SDKなど多数の形で販売しています。
ByteDanceのTikTok、Toutiao、Capcut、Lemon8といったC向けサービスとは全く異なります。
これまでLark(SlackのようなビジネスチャットApp)というBtoB事業もありましたが、BytePlusはもっと横断的かつ大胆なアプローチです。
どれだけ大胆なアプローチかというと、世界No.1という評価を得ているTikTokの秒速パーソナライゼーションとレコメンデーションアルゴリズムを、各企業でも使える形にして同クオリティで提供するというわけです。
事業サイドとして初めて聞いた時は、色んなことを考えてしまいましたが、本当にByteDanceらしく、非常に合理的かつパワフルな構想だと思います。
このパーソナライゼーション、レコメンデーションは1つのソリューションに過ぎなく、既に他15種類以上のサービスラインナップを日本では展開しています。
AmazonがAWSを、GoogleがGCPを立ち上げて広げたのと近いですが、2社が得意なインフラ系に比べて、BytePlusはクリエイティブ領域、レコメンデーションの専門性、ビデオ領域、エフェクト技術などTikTokが得意とするByteDance事業らしい強みをソリューションにしています。

今では、アマゾン全体約65兆円の15〜18%10兆円近くをAWSが占めてることを考えると、そのレベルまでもっていけたら面白いと思っています。

具体的には、TikTokが持つ世界最高のレコメンデーションアルゴリズム、Capcutをベースにした生成AI搭載のビデオ製作ツール、TikTokLiveで使用されているライブ放送技術、ライブコマースシステム、その他AR(バーチャル)技術などどれも面白いです。
特にレコメンデーションやARは無理して自社開発をすることなく、SaaS、PaaS、SDKの形で活用することが100%良いことは間違いありません。
同レベルの精度を自社開発しても、日本には同レベルの基盤がありませんのでMLエンジニアの人件費と基盤構築費など全コストでも投資金額は100億円は軽く超えてしまうのと、開発しても成功する保証がありません。
特に日本の全サービスには同レベルの基盤がありません。
既にこのあたりの話を21年にブロガーの方が少し取り上げてくれていました。


BytePlusは、シンガポール本社の企業で、中国以外の全世界を管轄しています。中国ではVolcano Engineという名前で同様に開発しています。

中国では、ナショナルラージエンタプライズがVolcano Engineを活用して各社での開発と事業成長を支援しています。
シャオミ、Oppo、Vivo、CCTVなど素晴らしい企業に支持いただいています。


 BytePlusのサーバーは中国国内になく、シンガポールにおいてあり、将来的には日本にも置くと思われます。GDPRやCCPAの認証はあり、とにかく中国政府の介入対策をグローバルでは行っており、日本企業も安心して使用できる形になっています。最も個人情報に厳しい業界の1つ、日本の大手人材業界企業のセキュリティチェックもクリアしています。
組織は単体で数百人以上おり、社員数もかなり増やして成長しています。
日本は最重要マーケットの1つで、今後もかなり社員を増やす予定です。来月も新しいセールス、SDR、マーケティングがジョインします。今は色んな国のメンバーと働いており、イギリス、シンガポール、インド、韓国、中国、台湾といったバックグラウンドも多種多様で、かなりエネルギッシュな組織環境です。
入社して早速笑ったのは、毎日時間帯関係なく日本の市場に関する質問や、どうすればもっと日本で拡大できると思うか?などの質問が海外の若いエンジニアから頻繁にチャットで来ることですね。 そのくらい一生懸命だということです。

ちなみに、Bytedanceはグローバルで既に15万人を超える大組織で半数以上がエンジニアです。特に驚いたのはBytedanceアメリカには社員数が既に1万人近くもいることです。アメリカはTikTokネタで長らく話題になっていますが、社員数が1万人まで増えているという話を聞いて、納得しました。 そんなアメリカは、TikTokのMAUで人口の半分1.5億リーチしています。

2022年のBytePlus 社内イベント時の写真

- プロダクト

BytePlusのプロダクトラインは主に3つで、細かいプロダクトは15個近くあり今後もどんどん増加予定です。
Recommendation、CDN、RTC、Live Commerce、VoD
AI-Effect、Video−Editor、Speech to Text、Text to Speech、Translationなどです。来年以降は早ければLLM、生成AI系のプロダクトリリースも有り得、LLMのテストは中国本土で開始しており、どこかのタイミングで日本に来ることは間違いありません。
ここは完全な憶測ですが、きっとBytePlus 生成AI系は動画、写真などのクリエイティブ系への品質は世界トップクラスになるのではないかと予想しています。サービスラインナップはHPで確認可能です。

プロダクトのメインラインは、

  1. レコメンデーションエンジン

  2. AIエフェクト

  3. ビデオクラウド

3つです。どれもBytedanceが誇る世界屈指の先端技術ですね。
特にBytedanceのレコメンデーションはMIT Technology Reviewでも2021年のBreak Through Technology 10の1つに選ばれています。
同列にGPT3やRNAワクチンもあり、いかに凄い技術かが分かります。


TikTok(中国アプリではDouyin)を始める前のTouTiao(中国ニュースアプリ)の時代からレコメンデーションエンジンはずっとR&Dされ続け、TikTok後からはこのクオリティが一気に世界No.1になったと評価されています。
日本ではたくさんその類の本でベンチマークされています。

入社して早速様々なアプリを触りましたが、個人的にかなり感動したのはとにかくレコメンデーションの精度です。
日本のどのレコメンデーションサービスよりもすごいクオリティで、これであれば導入後に各社で起こっているような改善率200%、160%UPなどの数字も納得です。
日本のレコメンデーションエンジンと比較して2世代か3世代ほど別次元となっているためです。(ネットワークで言えば3G→5.5Gくらいに突然進化されるような話です)
このレコメンデーションは本当にすごくてTikTokではない外部サイトであっても秒速リアルタイムでユーザー行動を分析しパーソナライズし、いつの間にか自分だけにマッチしたコンテンツがレコメンデーションされる形になります。サイトのトップページに設置すればトップページから他人と全く違ウコンテンツを見れるSheinにようなUIになります。そして、実装がここまで簡単にできるのかというのも驚きでした。優秀なAIエンジニアが導入とその後もずっと支援してくれるため、自社にAI関係の専門家なしで実装できます。
もう1つの技術でARはまだ活用チャネル側が追いついてないですが、時間の問題で間違いなく広がるでしょう。
BytePlusは、こういった技術を本家アプリとほぼ同クオリティでそのまま外販してます。よくあるのは、本家本元よりもややクオリティダウンさせることですが、BytePlusはそれをしない利用側としては有り難い方針です。
毎年数十個のアプリを立ち上げてはスクラップ&ビルドを繰り返している企業なので、このスピード感と思い切りの良さは当たり前だと思いました。
ディープラーニングで作られたTikTokのレコメンデーションエンジンを、自社サービスにも同クオリティで実装できるというわけです。
私がいたIndeedが日本の多数の求人サイトを圧倒してきたのは、まさにこのディープラーニングによるものでしたので(詳しくはSEOのハックもすごかったですが)、これを自社開発せず自分たちのサイトに入れられるというのは企業として間違いなくチャンスしかありません。
リクルートがIndeedのディープラーニングを得た、その他HR系企業+Byteplusレコメンデーションを得て、太刀打ちしていくことになっていくと思います。Indeedはディープラーニングでも、日本で一番大きいアルバイト求人サイトのタウンワークには同レベルのレコメンデーションアルゴリズムはおそらく入っていないと思うので、そういった意味ではタウンワークに他の競合サイトが技術面で勝ることも可能です。
これは憶測ですが、前職のIndeedよりもBytedanceが持つディープラーニングの方が間違いなく基盤が圧倒的に大きいため、基盤規模が物を言うレコメンデーションの精度面は間違いなく勝っているのと思われます。

既に、日本ではアルバイト系求人サイトのバイトルや、海外ファッショングッズを買えるECサイトのBuymaに始まり、動きの速い大手サイトを中心に使っていただいています。導入直前のPOCに入っている企業もかなり増えてきています。とにかく早く試すことが大事です。

- ここで何をやっていくのか?

日本のウェブサービス、アプリに向けて、3つのプロダクトラインを広げていきます。とにかく日本で、相性が良いのはとにかくレコメンデーションエンジンです。
今後大きなトレンドになるのは生成AIが入ったUGC、既定路線でライブコマース、ライブショッピング、もう少し先でARだと思っています。並行してレコメンデーションエンジンと相性の良いDI系のプロダクトも考えていきたいです。来年のLLMやGenerativeAIとどんあシナジーを生めるかも楽しみです。

まずは日本でBytePlusはこのクラスのレコメンデーションエンジンの販売を開始した認知が低いため、導入事例を増やしながら、とにかく高めていきたいと思います。
これはどんなウェブサービスでも使える超横断的かつ超パワフルなもので、データ量やコンテンツ量が十分ある企業であれば、ほぼ100%現状からパフォーマンス改善が可能と言われています。
BytedanceがIPO前の今でも時価総額数40兆円以上を叩き出すのは、このレコメンデーションエンジンやその他先端技術のコアがあるからと言われてますので、まずはどんな企業にも実際に触リテストしてみてほしいです。
自社開発が難しい日本企業はこういうサービスをどんどん活用していただき、事業成長させていくべきです。自社開発にこだわりすぎず、どんどん便利なSaaSやPaaSを入れてDXさせていけるかは日本の企業にとって本当に重要です。

ここはすでに当たり前になっていますが、中国に遅れをとっているライブコマースは、日本全体がリアル販売以外の収益率を上げるために絶対に高めないいけない点ですので、この数年で一気に当たり前になると見込んでいます。アパレル企業、電気量販店、化粧品販売、外食企業などでどんどん盛り上がっていくでしょう。
最近のユニクロのライブステーションはまさに日本のフラッグシップモデルだと思います。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/live-commerce/

またプロダクト的にはBytePlusの今のAR技術を見た時には、細部まで精度が高くて本当に感動しました。実際に私がAR技術を使ってスニーカーの着せ替えと、時計の着せ替えをしてみました。動画は張れなかったのですが、スクリーンショットを下に貼ってみたので見てみてください。
非常に精度が高いのがわかるかと思います。まるで本物かのような画像クオリティですし、足や腕との不一致も少ないですよね。洋服のARは人の体型のバラバラさと、服の画像を一致させるのが難しく、まだきれいな形になるまでに時間がかかりそうですが、時間の問題で自分の体型にある洋服のARが見える時が来ます。
こういうエフェクト技術はまだ単体ではマネタイズされないビジネスですが、一部の企業が上手く活用して流行らせることで一気に民主化する可能性があり、注目です。まずファッションECサイトには導入をチャレンジしてほしいです。

スニーカーAR
時計AR

なぜBytePlusに決めたのか?

あくまで個人的な話なので、短めにまとめました。
・この5年で大きく伸びるポテンシャル
・社会へのインパクト
・先端的なAI関連事業
・グローバル環境
この4つを重視しており、これが揃っていたのがBytePlusでした。
今年はChat GPTに始まりAIを活用したプロダクトが山ほど出てくるAI元年となるのと、この5年で一気にAIベースの産業の進化が進むはずなので、必ずAI産業の中心に行こうと決めていました。
AIが専門的なものではなく、誰もが使えて、人間の生活を豊かにするものになるために、「日本企業へのAI技術の民主化」を目指していきます。

入社して早速日本顧客に感じたこと

3週間、日本の顧客と話してみて

入社して自分の仲良くさせていただいている大手メディア、求人サイト、スタートアップの責任者と多数お話をさせていただきました。
そこで早速気づいたのが下記の2つです。
1. AIに詳しいエンジニアが顧客側に非常に少ないこと
2. プロダクト側の進化があまり起きていないこと
です。 AIに詳しいエンジニアが顧客側に非常に少ないことについては、
危機感を感じました。前から予想はしていましたが、実際に話してみると状況は予想以上でした。ここ数年でAIの話が多数出ていながら、AIの開発、モデル構築、データ分析に長けた人が各会社に多くないとのことです。
ある年500億円近い年商を出す有名メディアと話した際には、レコメンデーションエンジンの改修をしたのがなんと4年前とのことでした。今は早速未登録ユーザー向けのみのテストでPOCをしてもらっています。
なぜ4年間も放置してきたのか?を聞いたら、サイト改善よりも得意なデジタルマーケティングの方が順調にの伸ばせていたため、こっちに目を向けられなかったとのことです。
私は、SEOや広告マーケティングを通じて集客を伸ばすことは当然良いことですが、ここに集中する企業が多すぎると感じています。
集客も大事ですが、美味しい料理がなければレストランは成り立ちません。味が普通の料理で、一生懸命集客マーケティングをしてもCPAが高いのは当たり前ですし、最近はCPCも高騰化してるので尚更です。
レコメンデーションエンジンのSaaSは劇薬ではないですが、まず非常に美味しい料理を作り上げるために必要不可な打ち手なことは間違いないと思います。

最後に

この数年でディープラーニングの活用事例は一気に大衆化し、部分的ではなく全方位でフル活用する時代が来ます。こんなに簡単にディープラーニングは活用していけるんだ、という時代です。そしてすぐに「え、まだディープラーニングも使わないで事業をやっているの?」と時代が来ます。
これまでディープラーニングはテック企業の競争優位性の1つでした。私がいたIndeedがまさにその一例です。しかし、ここからはそれが変わります。BytePlusのようなディープラーニングで、どんどん企業にはディープラーニングが入り、これまで実現できなかったようなサービスの進化が起きます。
テキスト検索して行きたい旅行先を探す、選択カテゴリーに沿って興味にある求人を探すというデザインは一気に淘汰されていくのではないかと思います。今後はテキストボックスデザインは小さくなり、選択カテゴリーはトップページから不要になり、トップページを開いてから少し行動するだけで、いつの間にか自分の趣向にあった旅行情報や求人情報で埋め尽くされていきます。
既にBytePlusのレコメンデーションディープラーニングを活用した求人サイトではサイト全体CV数がBefore/Afterで+25%〜+50%のスケールで伸び、これはテスト段階であるためまだまだ伸びると予想しています。
日本は世界的にもコンテンツ面は非常に強く良いコンテンツが多数ある大変に恵まれた国です。コンテンツがなければ勝てない時代で日本はこの条件をクリアしています。しかし、旅行サイトも、不動産サイトも、求人サイトも大きな変化を遂げているとはあまり感じないというのが正直なところです。
一方でアパレルECサイトや、ライバー系サービスは少しずつ変わってきている印象があります。
是非今後はディープラーニングをフル活用して、サービスの可能性を一気に高めていってほしいです。

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