見出し画像

老人ホームにとうとうコロナがやってきたよ(2日目以降編)①

今回は2,400文字あります。割と多めです。
#ごめんて

激動の24時間を終えて2日目以降のことをまとめていきたいと思います。

ここからは詳しく時系列ではなく、ポイントとなった箇所を取り上げて掘り下げていきたいなと思います。 

▼音声で聞きたい方はこちら


—————————
▼感染を拡げない
—————————
陽性者となった職員さんを起点に考える(行動履歴を辿る)と3ユニットの入居者さんが感染するリスクがありました。
そこはそれで警戒しておこう。

非清潔区域に出入りする職員を固定しないといけません。
非清潔区域から他に出歩いたりすると感染が拡がってしまうので。

非清潔区域は日中(7時〜21時)と夜間(21時〜翌7時)を4人の介護職員でまわさないといけません。夜間は1人です。

職員の出退勤は裏口から(会うとやっぱり喋ってしまうからね)。
職員の着替えはユニットの中の脱衣室(普段は入居者がお風呂に入る時に使用)。
職員のトイレはユニット内のを使用(ユニット内には3つトイレがある)。

非清潔区域の職員さんから「家に帰ると高齢の母がいて。家にウイルスを持ち帰って母に移してしまわないか心配で。施設にしばらく泊まってもいいですか?」

たまたま非清潔区域の1部屋が空いてた(入院中の入居者)のでそこを使っていいよとその場で伝えました。
#僕にその権限はないよ
#上司には事後報告
即答したのは少しでも不安を解消させてあげたかった。
「自分がコロナに罹ってしまうのではないか」の中で勤務をしてもらわないといけないので。

施設内の感染を拡げないことも大切ですが、職員さんの家庭にも持ち込ませないようにしないといけませんでした。

ユニットのお風呂(普段は入居者が利用)のシャワー使っていいよとも伝えました。
こんな時がくると思っていたのでストックしておいたシャンプーとボディーソープを渡しました。
#準備万端
#ダヴ

最低10日間は隔離が続きます。体力もそうですが、精神的に疲れてしまうことは容易に想像できます。

入居者の食事は紙皿で提供することで感染対策にもなるし、食器を洗うコスト(人件費)も減らせます。

主食はお粥、副食は刻み食の場合


————————————
▼ピンチはチャンスやで
————————————

「今まで変えることができなかったことを変える千載一遇のチャンス到来」
#黒よしよし

何度も議論を重ねて極限までユニット固定しています。
※ユニット間を職員が移動していた
今回のリスク(ユニットを超えてフォローすると感染が拡がる)は把握していました。
「これ以上はユニットの固定できない。それでもコロナが来た時は最小限で食い止める」を決めていました。

ユニットを固定しすぎると職員1人への負担が増します。
やりすぎてしまうと職員自身が疲弊してしまい辞めてしまうリスクがコロナ禍では常につきまといます。

「これ以上は仕方なし」と考えていたユニット固定を「やっぱりもっと固定しよう」となってきています。
そのためのたたき台をこの頃からコツコツと積み上げていました。

————————————
▼熱が出る入居者さん
————————————

2月4日 △ユニットの入居者さん(職員Bさんと接触なし)
2月5日 △ユニットの入居者さん(職員Bさんと接触あり)
2月6日 ○ユニットの入居者さん(入居者Aさんと食事席が近い)
3名抗原検査行い「陰性」でした。

入居者さんの熱が出る度に「感染が拡がったか!?」とドキドキしていました。
▼流れはこちら
①発熱確認
②個室隔離(この時点では全入居者居室で生活中)
・居室に入る時に新しい防備装着。ケアが終わり居室内で全ての防備廃棄
③後方病院報告
④抗原検査
⑤熱が下がった翌々日から解放
・居室での生活は継続。入室時の防備交換はしない

————————————
▼終末期の入居者さん
————————————
コロナ騒動の前から「少しずつ食事量が減ってきたな。足や腰の浮腫(むくみ)が増えてきたな」の103歳の入居者さん。
※特別養護老人ホームは終末期(看取り)を行う施設です。毎年4~6名の方を看取ります

2月6日朝食を少し食べた後からほとんど食べれなくなりました。
水分を無理に口の中に入れても苦しくなるだけなので口を湿らす程度に。

家族に連絡しました。面会を希望すれば居室まで来ることを許可しました。
コロナ禍ではありますが、終末期になれば居室まで面会をしてもらっています。
面会方法は1組2人までで10分。居室は換気をしています。
もし、面会者が陽性者や濃厚接触者だった時に、10分なら感染リスクは低くなります(絶対感染しないではないよ)。

濃厚接触者とは?
□陽性者と同居している人
□陽性者と長時間接触した人(車内、航空機内などを含む。機内は国際線では陽性者の前後2列以内の列に搭乗していた人、国内線では周囲2m以内に搭乗していた人が原則)
□適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた人
□陽性者の気道分泌液や体液などの汚染物質に直接触れた可能性が高い人
□マスクなしで陽性者と1m以内で15分以上接触があった人
厚労省HP「新型コロナウイルス最前線」20220217

面会後、家族と相談しました。
「無理の病院に連れていき検査をするのは本人が大変です。このまま施設でお願いしたいです」

面会したい家族と施設に感染を持ち込ませたくない施設。
周りに陽性者や濃厚接触者がいないか。面会当日に体温を計測し体調を聞き問題なしなら面会OK。
「東京から曾孫が会いに来たいと行ってますが、大丈夫でしょうか?」
次から次へと来るキラーパス。
#中田英寿
正解はありません。
ここまでならOKですとその度に交渉。
「死」というものがすぐそこにある僕たちと、滅多にない人たち。
「コロナだから」と突っぱねるのでなく、曾孫(20代)にも「死」を経験してもらう良い機会なんだ。

それはそれで激動な毎日。そして…
2月14日 呼吸停止。

出すものを全部出しきったので苦しそうではありませんでした。

103歳。お疲れ様でした。合掌。

次回に続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?