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 いつの間にか日が暮れかかっている。萱の茂みの中で何かが動いた! クギが言った。どこどこ? さっきまで怠そうにしゃがみこんでいたルナが勢いよく立ち上がった。ほんとかよ。ハトはねむそうな声を上げた。きっと鳥か何かだろう。もう帰ろうよ。確かめもしないで何言ってんの? ルナが甲高い声を上げた。クギはすでに茂みの中に踏み込んでいた。ガサガサと密集した植物をかき分ける音がする。ダメだ! 何もいない。やがて茂みの中からクギの声が上がった。逃げられた! チキショウ! だから言っただろ。鳥か。何か。ルナはハトの隣で何も言わず立っていた。腕組みをしているらしい。きっと不貞腐れているのだろうとハトは思ったが暮色に沈みこんで表情はうまく見えなかった。クギ、もう終わりにしよう! 俺はも帰るよ、クギってば! ちょっとあんたさっきから帰るしか言ってないの、すこし黙っててよ! 苛々した口調でルナが怒鳴った。ハトの方というよりは、目の前の萱の茂みの方へ向かったまま叫んでいるようだった。うん、もういいよ、今日は撤収! 以外にもさっぱりした口調の返事が帰ってきた。ガサガサと音がして人影が茂みから這い出てきた。ルナはクギが両手に煌煌と輝く満月を抱えて現れるのを期待していたが、そんなことはなかった。やっぱりなかったね。暗くなる前に見つけたかったんだけど。ごめんね。ルナ、ごめんね、ハト。もう仕方ないよ。また明日探そう。ルナが妙に柔らかい口調で言った。三人でね、もちろん? 暗くなっていたけどハトはルナがこっちを見たことがわかった。二つの瞳には満月が宿っていたので。

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