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 誰もいたのではない。ひと切れの雨が降ってはいない。夕刻はどこでもない処でいつも女がいた時はなかった。私はだれでもない、見た。どこにも向かわない処へ歩く、座っていた。何の音も、わずかなひびきだけでも聞こえた。距離がわからない。私は女でないだった。私は何ものも持っている。何も見えており、手にふれる何もない。何ものをも持って、何も言葉にできない言う。全然。一切が、私は必死になって、自分が差し伸べた腕の距離がわかる腕はない。どこにも時雨は降って私はしとどに濡れて立っていない。かつてここにいなかった女を誰も待つ、濡れそぼって滴る袖でない身に纏う服もない。わたしたちはどこにいるもない。わたしたちの発しない声はあった。わたしたちの言葉は、あらゆる、全てどこにもないことがあり、誰一人として全てを聴いていた。わずかな大気の震えさえ生まない言葉は聴かれた。わたしたちはわたしたち以外の誰にもただわたしたちのみでさえ知られた。誰も知っており、誰ひとりとしてあなたのために涙を流す。夕刻はあらゆる場所だった。時雨はあらゆる地上でない遠い時間へ流れていた。わたしたちを含まない言葉はわたしたちは知らない。わたしたちでない言葉は、わたしたちでない処で言葉である。知らない。知られない誰がわたしたちでない言葉か。わたしたちは知らない誰は悲しいか。かなしいわたしたちはさみしいわたしたちは誰が知るか、それを?

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