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 屋外劇場には月が昇っていた。冬が間近の凍てつくような夜は人っ子一人客席はおろか舞台上からも姿を消す程の。
「リボンが解けるのと同時に」気配は消えつつある、夢の夜のようにくらい声で。
「バレリーナの少女は」亡霊の様に白煙が風に散ってかすかな匂いだけが残るようだった。
 疎らな拍手の残響が、まるで遠い山むこうから届いた汽笛の音のように月光にかき消えている星星を一つ一つ数え上げる。
「月に衝突(ぶつか)って花火が散った後の火の粉のように降った」月に衝突って花火が散った後の火の粉のように降った。

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