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 ヒルマは目を閉じた。眠たくなったんだ。雨が降っていた。しとしとしとしとしとしと。曇り空だった。木の葉が擦れ合う音がする。目を開いていた。「ねえ。」語りかけた。隣へ眠る姉へ。「ねえ、ヒルマ。」
 眠たい目を擦った。目を開けた。寝返りを打つ。もう真夜中を過ぎた。ねえ。
 雨が降っていた。曇り空だ。雨は止んでいる。風も吹いていない。水音がする。雨水だろうか? 川が増水したのかな。でも川なんてなかった。小さな水路があるだけ。
「ねえ。」
 もう一度。寝返りを打つ。起きてくれない。もうすぐ真夜中だというのに。
 シーツの擦れる音だ。ふいに気づいた。水音ではなかった。ヒルマの細くて小柄な体がせせらぐ音。雨は降っていただろうか?
 僕はヨル。目を閉じると満点の星空。目の前でフラッシュが覆る。フラッシュ! フラッシュ! って。笑っちゃうんだ。
「ねえ。」
 せせらぎがきこえる。虫が鳴いている。遠くで。雪が降っている。吸って、吐く。
 ほら、もうおやすみ。
 ヒルマは目を閉じた。霧が懸かった三日月だ。それはもう知っている。ヨルがずっと見ていたから。

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