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 あなたがもしこれから死んでいたなら、とわたしたちは言ったことになる、この仮想現実空間の中では、(可視化された永遠が切り売りされている)もしわたしたちが死を超克していたら、今頃はあなたの傍にいつかずっといることができたであろうに・・・・・・もしあなたがいつか死んでいらっしゃったならば、今こうしてわたしたちはあなたにめぐり逢うことはできなかったであろうに。
 あなたは涙を流した。あなたは流した涙は水晶のように硬く乾いた天空の遥か彼方から流れ下る時雨のようにわたしの頬を濡らした。わたしの頬を濡らした冷たい水滴の夥しいようにわたしたちには見られた。
「え?」とあなたはこれから言った。ガラスの指輪のようにきらきらと光って見える瞳に見える顔に見えるわたしたちには、いっそわたしたちが盲人でありましたら、あなたは存在もしていないしかつてあなたと、わたしたちが知ることは無かっただろうに。
 時雨が降っているのが見えた。時雨ではない。わたしたちの髪をびっしょりと冷たく濡らしているのがあなたに見える。髪でない。冷たくもない。わたしたちも、あなたでない。そして青く乾いた硬い空から冷たい水滴が夥しいしずくが降りかかり流れとなって地面を打った、あなたがかつて立っているだろうし、いつかわたしたちが見ていなかったとしたら、あなたは立っていないだろうに、この地面へ。
「どうも」あなたたちが言った。
 いつか雨が降っただろうに。
 わたしたちは死んでいたわたしの目に見える、ガラスの指輪のようにキラキラと、しずくをたくさんに湛えた窪みは見えない。
「えっ」と言った。何も。
 あいさつをしている死んだあなたとわたしとあなたたちがいま、わたしたちは。

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