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君たちはどう生きるか(レビューではありません)

noteを書くのは久しぶりになりました。

というか、文章を書くこと自体、約一ヶ月ぶりです。
この一ヶ月は、ある映像作品のディレクションにかかりきりでした。

僕はコピーライターなので本来的には文章を書くのが仕事ですが、クリエイティブディレクターという肩書きもあるので、文章以外(映像や写真、デザインなどのディレクション)の仕事もします。

この一ヶ月の間に、話題の映画「君たちはどう生きるか」を観させていただきました。

宮崎駿監督の映画は大好きです。
初めて宮崎作品に触れたのは、僕が小学六年生の頃です。
映画「魔女の宅急便」でした。

当時、「魔女の宅急便」にものすごく感動をして、映画を観終わってからもしばらくの間、毎日のように、映画館で購入したパンフレットを読んだものです。
映画のCMがテレビで流れるのに気がつくと、欠かさず見ていました。
それくらい、どハマりしました。

以降、宮崎駿監督の作品は、必ず劇場で観させてもらいました。

作品自体ももちろん素晴らしいのですが、上映前後の宮崎監督密着ドキュメント番組がテレビで放送されたり、作品とコラボした様々な商品やサービスが販売されたり、それらのテレビCMが流れたりといった、一連の”ジブリ祭り”のような雰囲気が僕は好きでした。

ところが、皆さんもご存知の通り、今回の「君たちはどう生きるか」は完全な情報統制がなされており、公開までにタイトルとメインビジュアルのみしか世の中に知らされませんでした。

僕は公開から数日後に観に行きましたが、作品のパンフレットはまだ売られていませんでした(いまは売っているのかもしれません)。
映画のCMやドキュメンタリーの類も、現在までに一切放送されていません。

ネットで探せば作品のレビューはたくさん出てくると思いますが、映画評論家の方などによる公式のレビューは、僕はまだ見かけていません。

タイトルの通り、僕は今回のnoteで映画「君たちはどう生きるか」のレビューは書きません。

映画や小説はそもそも受け取り方によって感想はまちまちだと思いますし、単純に「おもしろい」「おもしろくない」で分けられるものではないと、僕は思います。
また、自分自身もクリエイターなので、雲の上の存在とはいえ、同じクリエイターである宮崎監督の作品を公に評価したいとは思えません。

僕が今回のnoteで読者の皆さんにお伝えしたいことは、80歳を超えた、いわゆるシニア世代の方が、一本の映画を作り上げることのすごさについてです。

僕はいま、47歳です。
まだまだ老け込む年齢ではないのですが、それでも、老いは確実に実感しています。
それも、いろいろなところ、いろいろな場面で、です。

仕事に「強弱」をつけるべきではないとは思うのですが、それでも、「重い仕事」というものがあります。
「通常より力を入れる仕事」という言い方もできるでしょうか。

僕の場合、そういう仕事を終えると、具体的に、度々全身が痺れ、嘔吐します。
仕事の期間が長くなると、髪の毛の一部やヒゲが白くなります。

それだけ、クリエイティブにエネルギーを注いでいるというわけです。

こんな仕事のやり方では、この先何十年もは続けられない、と感じています。
テンプレ、とまでは言いませんが、もう少しテクニックに走った仕事をしないと、本当に早死にすると思っています。
(生と死については、別の機会に書きたいと思います)

それでも、僕は不器用なタイプなので、なかなか妥協はできません。
妥協するくらいなら、仕事自体を断った方が良いとすら思っています。

さて、宮崎監督のお話に戻ります。

47歳の僕がこれだけ老いを感じているわけですから、80代の宮崎監督はすでに「老いきっている」はずです。

それなのに、長編の映画を作り上げるとは…。
僕には、超人にしか思えません。

何が、あの方をそうさせるのか。
答えはシンプルだと思います、「リビドー(初期衝動)を抑えられないから」。

これをつくって世の中に発表しなくてはならないというリビドー。
この作品を通じて、いまを生きる人たちに伝えなくてはならないというリビドー。

宮崎監督は、もう一生食べていけるだけの資産をお持ちだと思います。
誰かに頼まれて「君たちはどう生きるか」をつくったわけではないでしょう。
そもそも、10年前に引退宣言をされてますもんね。

それでもご自身の中から湧き出てきたリビドー。
抑えることのできなかったリビドー。

周りからは止められたかもしれません。
いや、止められたと考える方が自然です。

だけれども、あの方としてはもう、「つくるしかなかった」。

年齢的に、「君たちはどう生きるか」が宮崎駿監督の最後の作品になる、と見る向きもあります。
ですが、そう決めつけるわけにはいかないとも僕は思っています。
宮崎監督のような超人になると、もしかしたら、すでに次の作品づくりに向かっているかもしれないわけですから。

僕はジブリの回し者ではありませんので(笑)、「君たちはどう生きるか」を観た方がいいですよ〜とお伝えしようとは思いません。

ですが、宮崎監督が超人であり、生ける伝説である、ということだけはお伝えできたらと思います。

宮崎駿監督、現在82歳。
「生きていたとして」という前提が付きますが、僕が82歳になった時、まだクリエイターでいられるだろうか?

「君たちはどう生きるか」が、僕に問いかけてきます。




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