見出し画像

雑多な雑感――NPOの戯言⑱

《「田舎暮らし」の悲喜こもごも②》
 前回、虫との闘争で殺生に明け暮れているかの印象を与えたかもしれないが殺生はごく限られた範囲の話。そもそもポンコツにそんな元気もないし無益も承知の助。
 他方で田舎には有益なことも多々ある。季節限定は当然だが、例えばタケノコは気づけば周辺に。ツワブキも自由に取り放題(イノシシ注意!)。スイセンやヒガンバナなども歩けば採取できる。自然に咲き誇る菜の花も山桜も自然の理を知らせてくれる。かわいくさえずる小鳥たちも。トイレから眺める小鳥たちは二日酔いの荒んだ心身に慰みを与えてくれる。自然と人間の間での貸借対照表を総覧すれば「0」に行きつくような気になる。

 さて、田舎暮らしには別途困ることがある。そもそも自動車がなければ生活できない。もちろん生活できる人もいるが、わたしにはできないし、するつもりもない。心意気でどうなるものではないのだ。
 今回は病院。病院が遠いのは致し方ない。少ないのも道理である。以前は「最寄りに」二つあったらしいが今は一つ。祖父母の時代は病院だったが今は診療所に。過疎地の医師と看護師は少なくなる一方らしい。
 健康診断に病院へ行った話は以前記したが、やむなく検診が受けられる唯一の病院である。なんせ「最寄り」である。ところがどっこい。もはや医師がヤバい――内科医と推察されるが70歳ぐらいのジイサンが最終の検診と記録を行う。
 いきなり「面倒くさいな!」「どこに書くの!」――看護師らしき人が内科医らしきジイサンのチェックすべき箇所、書くべき箇所に10ほど黄色の付箋を貼ってある。医師が直接記録する義務があるのだろう?
 「医師らしき人」(ここからはこの呼称で)は「どこ? どこ?」「ここか、ここもか」「あぁ」など、のたまいながら震える筆跡で記録していく。看護師らしき人が「ここと、ここです」など「医師らしき人」に指示をして「面倒くさいなぁ」と3回以上繰り返しつつ書類1枚を7分ほどかけて完成させていく。
 お前が病院行きやろ! と心中で叫ぶが、田舎の田舎にヒポクラテスの名は馳せず、仁術を期待するなど夢の夢である。酔っ払いの戯言と侮るなかれ――検診では害もないが、人手のいない過疎地に(限らず)ロクデナシの「医師らしき人」もいるかもしれない。

◆注:もちろん過疎地にあって(こそ)奮闘する医師・看護師はあまたいる。わたしの田舎には離島があり多くの医師・看護師らが心血注いでいる。伯母は看護師として長期努めて(勤めて)きたのでそうした事情に暗いわけではない。個人的にはどうでもいいが褒章まで授与されている。上記はあくまで体験談。
◆注:「医師」「看護師」という括りには法律上慎重でなくてはならない。病院の施設・体制に応じ、それぞれの配置に関してきめ細かい規定がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?