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アストル・ピアソラの青春 ニューヨーク〜ブエノスアイレス〜パリ (2023年6月10日 東京・品川区 スクエア荏原ひらつかホール)

2023年6月10日はバイオリン奏者の宮越健政さんの企画・構成によるコンサート「アストル・ピアソラの青春」に行ってきました。

副題に「少年は、どのように世界の知る作曲家になっていったのか?」とあるように、ピアソラの少年時代からモダン・タンゴの旗手として活躍するようになるまでの様々なエピソードを宮越さんが語りつつ進行するコンサートでした。

演奏メンバーはタンゴのエキスパートであるバイオリン、バンドネオン、ピアノ、コントラバスの4人と、バイオリン×6、ビオラ×2、チェロ、フルートの品川フィルハーモニーアンサンブル。演奏された曲目の大半は、ピアソラの「弦楽オーケストラ」でのレパートリー、すなわちが1955年にパリ留学の締め括りとして録音したレコード、及びアルゼンチン帰国直後に録音したレコードの収録曲で、バンドネオン、ピアノと弦楽アンサンブルによるものでした。これらのレパートリーを中心に据えたコンサートは非常に少ないと思われ (少なくとも私は聞いたことがない) それだけでとても貴重な機会だったはずです。

演奏も見事で、タンゴミュージシャンである4人がしっかりとタンゴの芯を保ちつつ、アンサンブルが豊かさと厚み、広がりをプラス。古い録音で接してきた曲たちの音が目の前で新たに生まれる瞬間を目の当たりにするような、そんな歓びに浸ることのできた時間でした。

他に、タンゴミュージシャンだけの四重奏による演奏が第一部、第二部それぞれ1曲ずつありました。第一部4曲目の「パリのカナロ」はオマール・バレンテによるかなり技巧的かつ楽しい編曲で、ピアソラの楽曲とは異なる空気感を持った現代タンゴ。第二部6曲目「リベルタンゴ」はピアノの松永さんの編曲で、もしプグリエーセが「リベルタンゴ」を演奏したら、という仮説を形にしたもの。どちらも面白くかつ聴き応えのある演奏でした。さらにフル編成で演奏された第一部5曲目「心のすべて」は加藤真由美さんが志賀潔さんのために編曲したバージョンで、宮越さんの渾身のソロが心を打ちました。

ピアソラの少年時代から青年時代までの様々なエピソードを散りばめた曲間の語りは、ちょっと緩めなトーンで親しみやすく、宮越さんの聴衆を楽しませようとする気持ちが感じられました。ただ、特に前半はやや詰め込み過ぎだったかもしれません。また「すごく暗いです」「(XXXという曲に)どの辺がXXXなのかよくわかリませんけど」等のコメントは、ちょっと自虐を入れたユーモア的な意味合いだったのかもしれませんが、これから曲を聴こうとしている人の印象を誘導してしまう危険性を感じました。作品への評価は、特にネガティブなものに関しては聴衆に委ねるべきかと思います。私自身もやってしまいがちなことなので、自戒の意味も込めて書いておきます。

アストル・ピアソラの青春 ニューヨーク〜ブエノスアイレス〜パリ

日時:2023年6月10日 14:00〜
場所:東京・品川区 スクエア荏原ひらつかホール
出演者:

曲目:
【第一部】

  1. Prepárense 用意はいいか (アストル・ピアソラ)

  2. La cumparsita ラ・クンパルシータ (ヘラルド・H・マトス・ロドリゲス、編:アストル・ピアソラ)

  3. Nonino ノニーノ (アストル・ピアソラ)

  4. Canaro en Paris パリのカナロ (アレハンドロ・スカルピーノ、フアン・カルダレーラ、編:オマール・バレンテ)

  5. Todo corazón 心のすべて (フリオ・デ・カロ、編:加藤真由美)

  6. Marrón y azul 栗色と青色 (アストル・ピアソラ)

  7. Vanguardista バンガルディスタ (ホセ・ブラガート、編:アストル・ピアソラ)

【第二部】

  1. Río Sene セーヌ川 (アストル・ピアソラ)

  2. Picasso ピカソ (アストル・ピアソラ)

  3. Triunfal 勝利 (アストル・ピアソラ)

  4. Chau París さらばパリよ (アストル・ピアソラ)

  5. Miedo ミエド (エルビーノ・バルダロ、オスカル・アローナ、編:アストル・ピアソラ)

  6. Libertango リベルタンゴ (アストル・ピアソラ、編:松永裕平)

  7. Del bajo fondo 街の底から (オスバルド・タランティーノ、ホセ・タランティーノ、編:アストル・ピアソラ)

【アンコール】

  1. Imperial インペリアル (アストル・ピアソラ)

第一部4、第二部6は宮越、北村、松永、田中の四重奏のみで演奏


ブログとの同時投稿です。

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