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Vol.507「トランプ銃撃と老いと民主主義」

(2024.7.23)

今週のお知らせ
※「ゴーマニズム宣言」…日本でもアメリカでも、民主主義は劣化し続けていると思わざるを得ないが、そんな中、大統領選の最中のアメリカで共和党候補・トランプの暗殺未遂という未曽有の事件が起きた。今回はそれによってもたらされた、予想外の状況の変化について書いておきたい。アメリカ大統領選は今度どんな展開が予想されるのか?トランプが大統領になった場合、ウクライナ戦争はどうなるのか?政治と「老い」、若い世代の劣化、そして民主主義をどう考えるべきか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…先日、長崎県島原市を訪れた。島原市は、長崎県南東部の有明海に突き出した半島にある。島原には、私にとって記憶に残る出来事がある。1991年(平成3)の雲仙普賢岳の噴火だ。当時は中学2年生で、テレビで知った災害だったが、連日の報道の様子を、30年以上経つのにやけにはっきり覚えている。実は、この雲仙普賢岳の噴火以降、日本のジャーナリズムは大きく変化しているのだ。現代の日本は、残酷な現実を知ることは拒絶しながら、「見たことないけどそういうことにならないために議論しましょう」という仮想空間のような感覚が当たり前のように形成されているのではないか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…皇室への有り難みなんて微塵も持たず、沖縄県民の犠牲で成り立ってる安全圏で平和デモをやることに意味はある?SNS上では時々話題になる「無痛分娩」の普及についてどう思う?もし日本で一夫多妻制の導入を始めたら先生はどうする?かつて「わしズム」に掲載されていた漫画『10万年の神様』は単行本化されない?愛子様立太子に前後するタイミングで、NHKに制作してほしいドラマはこれだ!小学生にオススメの本は?…等々、よしりんの回答や如何に!?


1. ゴーマニズム宣言・第536回「トランプ銃撃と老いと民主主義」

 日本でもアメリカでも、民主主義は劣化し続けていると思わざるを得ないが、そんな中、大統領選の最中のアメリカで共和党候補・トランプの暗殺未遂という未曽有の事件が起きた。
 今回はそれによってもたらされた、予想外の状況の変化について書いておきたい。

 81歳のバイデンと77歳のトランプの「老人対決」という、民主主義の劣化でしかなかった構図は、トランプの銃撃事件によって一変した。トランプは「老人」であることが全く問題視されない存在になってしまったのだ。
 銃弾が耳をかすめていった直後にあれほど毅然とした態度をされたら、もう仕方がない。わしだって凄いと思ってしまう。
 一方のバイデンはひたすら老いをさらけ出していくばかりで、ついに撤退を表明した。しかしこうなってしまうと後に誰が出てこようと、ただ「若い」というだけではトランプに勝つことは不可能だろう。

 トランプの銃撃に使用された銃は「AR15」という軍事用ライフルで、殺傷能力は拳銃の約5倍。アメリカでは銃乱射事件に度々使用され、その際の犠牲者の遺体は身元確認が困難なほど損傷されていたという。今回も、トランプをかすめた銃弾が命中した観衆1人が死亡、2人が重傷を負っている。
 銃撃は120m離れたところから行われたが、もちろんAR15は正確に照準が合わせられるライフルで、その距離なら普通に射撃訓練をしていれば、まず外すことはないらしい。今回の犯人の射撃能力がどれほどだったかはわからないが、一部報道では射撃クラブに所属し、前日には練習もしていたという。
 これで耳をかすっただけで済むなんてことは、普通はありえない。顔を吹き飛ばされていても全くおかしくはなかったのだ。
 トランプは銃撃の翌日、メディアに「私はここにいるはずではない、死んでいるはずだった。病院の医師は『こんなことは見たことがない、“奇跡”だ』と言った」と語ったそうだが、この言葉に誇張は全くない。

 その時トランプは演説中で、銃弾が通過する直前に顔の向きを変えており、もしそうでなかったらまともに被弾していた可能性が高いという。
 そしてアメリカのXには、「なぜ(銃撃寸前に)突然頭の向きを変えたのですか?」という記者の問いに、トランプが「それは…一瞬、古い友人の声が聞こえたような気がしたからさ…」と答えたという投稿があった。
 すると日本のネトウヨたちが、この「古い友人」を勝手に「日本の古い友人」と書き加えて拡散し、さらに勝手にそれは安倍晋三だということにして、「安倍さんがトランプさんを救ってくれたんだ」「もしこれが本当なら泣けてくる」「涙が出ます」などと大騒ぎした。
 そもそも安倍がトランプの「古い友人」だったなんて事実はないはずだが、その元ネタのXにしても、投稿した当人は、これは「ジョーク」だったと言い、あくまでも作り話だと認めている。
 にもかかわらず、その投稿が特に日本人によって拡散され、これによりアメリカのXで「Shinzo Abe」のワードが「トレンド入り」してしまったことに、投稿者は当惑していたらしい。

 日本のネトウヨ・安倍シンパって、本当にアホチンで国際的な恥さらしだとしか言いようがないが、じゃあそもそも、安倍晋三ってどうなんだ?
 安倍は「手作りの銃」で撃たれて死んじゃったんだぞ。その差を無視しちゃいけない。
 安倍を撃った銃は鉄パイプを2本並べて木の板にテープで巻いて固定したもので、火薬や銃弾を含めても数千円程度の材料費で作れるという。構造はほとんど「火縄銃」と変わらないほど原始的で、下手をすると銃自体が破裂して、持っている者が爆死する危険性もあるような代物だったらしい。射程はせいぜい100m程度で、照準器も付いていない。
 安倍晋三はそんな手作り銃の弾丸が命中して死んだ。なんて運の悪い男だろう。
 トランプは軍用ライフルで狙撃されたのに当たらなかった。なんという強運の持ち主だろう。
 それが当たり前の見方というものだ。安倍にトランプを救えるような霊力があったなら、そもそも自分が死んだはずがないのだ。

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