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うたになるにはまだ遠い

しあわせは忘れがちである

きみとわたしはどうやらカルピスのセンスが似ている。
濃すぎず薄すぎず、でもふつうのひとが飲んだら「薄くない?」て言われるくらいの、2、3こ入れた氷が溶ける途中くらいのぜつみょうな味。きみんちで飲んだカルピスが、わたしんちの具合といっしょだったから、どうだ、結婚でもしませんか、とくちばしる、夏。


携帯電話を持ってない

雪山にのぼってたら門限をはじめて破ってしまった
あと知らない妖怪 木の実ばあさん(通学路に生えてるおんこのみを勝手にたべて、今年の出来はいまいちね、とか言っているばあさん)に、雪山のぼって落っこちたら前歯折れるよとおどされた
あのころのわたし、ちゃおかりぼんの漫画家になる気でいました
キックボードで近所の子を追い回していました
自分のこともうすこし天才だと思っていた、無敵なわたし、まだ携帯電話を持ってないころ


初恋は宇宙人

やみくもに好きだと言ってはいけないのだと大人の女はいう
そう女のしごとは 仄めかす こと
口に出すなど野暮なまねはしない
さて話は飛んで
わたしの初恋は宇宙人みたいな人で
たぶんもう今は自分の星に帰ってる
ただフェイスブックは宇宙でも使えるらしい
こないだ、人間の女と結婚してた
ちくしょう  と、口には出さない
わたしはもう大人の女だから


きみにやみつき

飯田橋駅にてくだりのエスカレーターをおりるとき
シャツにかぴかぴのごはん粒ついてるの見つけたとき
ほどけた靴ひもをむすぶのに、みんなより少し早めに走って電柱のところでしゃがんでむすびなおして立ち上がって、ちょうどみんなと合流しなおせたとき
しんだ犬のこと考えるとき
人差し指だけでタイピングするとき
夢からさめる1秒前
うん、そう、何時も。


某わたし

サイゼリヤの壁に飾ってある絵画たちについて
自分のことをかわいそうだと平気で言う女にゾッとした
こんな日はかわいい犬とかを抱きしめて眠りたいです
今日わたしに起きた事件はたいていの人にはどうでもいいできごとで、そして明日になったらたぶんわたしにとってもどうでもいいことになってしまうのです
絶対今日のこと忘れちゃだめだ、て思っても
だれかに  イイね!されなきゃどうせ忘れてしまうのです

ばーか、しんじまえ、でも踏ん張れ
某日のわたしへ 某日のわたしより


憂うつ

よりによって満員電車でのまんなかでまえの人のリュックとうしろの人のリュックに挟まれているとき、
きょうはカードの引き落としの日だってこととか、きょう返すはずのツタヤのDVDを家に忘れてきたってことを思いだしたりする
箱入りのみんながそれぞれ元気なトウモロコシだったとして、これから働くのなんてやめてみんなで出荷されてしまおう
それかディズニーランドにでも行きたい
扉がひらくとつぶつぶが一目散に駆け下りていく
そんなに急いでどこいくの


誕生日アレルギー

退職金で犬を飼ったら、「ハッピーアマゾンの奥地」という名前にしたいといって母をこまらせた
誕生日がくるのがいやだ
年をとるのがまだこわい

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