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運動苦手なMちゃんが新体操部にスカウトされた本当の理由

どうも!
打楽器演奏したり教えたりしています吉岡です。

クラシック業界は「親(親族)も音楽家!」といった2世が多いイメージですが、私の両親は音楽関係ではありません。

母は子どもの頃やりたかったオルガンを習わせてもらえなかったので、娘には夢だったピアノ(オルガン)のレッスンに通わせたそうです。

いやー。ピアノに出会ってなかったら私、打楽器やってませんでした。
ありがたい、ありがたい…!!

という話はさておき、今回の主人公はタイトルのMちゃんこと私の母です。

昭和30年代に生まれ、東京で育ったMちゃん。
勉強はできても、オルガンも弾けず運動も苦手で、音楽と体育にコンプレックスを持ち続けていたMちゃん。

大阪での万国博覧会やオイルショックなどを経験しながら、中学生になったところで物語はスタートします。

怖い体育の先生に声を掛けられる

中学2年生になったMちゃん。
「どうせうまく出来ないし…」と体育の授業が憂鬱で堪りません。
他の教科は何とかなっても、体育の成績だけはどうにもなりませんでした。

そんなある日、体育の先生に呼び止められます。
苦手な教科の先生。しかも厳しい先生…。

「新体操部というのを新しく作ろうと思うんだけど、Mさん、やってみない?」

先生はMちゃんが運動苦手なことをよ~く知っているはずです。

「縄跳びやボールなどの手具を使う、新しい体操の種目なの」

「運動の基礎になる柔軟性やジャンプ力が自然と身につくのよ。体育が苦手でも大丈夫!」

「〇〇さんや、△△さんも誘ってるんだけど…一緒にやってみない?」

先生が集めているメンバーは、なぜか運動が苦手な子たちばかりでした。

「???」だったMちゃんも「それならやってみようかな…」と挑戦してみることにしました。

得点でもタイムでもない魅力

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新体操は、陸上競技や球技と大きく異なります。

体育の授業についていけない子たちでも、毎日ストレッチを続けていれば柔軟性は上がります。基礎体力も少しずつ上げることができます。

ひとりひとり適切な指導を受けることで、マット運動のコツやバランス感覚をつかむことができます。

授業よりもきめ細かく指導することで、運動が苦手な子でも各自のペースで少しずつ出来ることを増やせたようです。現在よく言われるようになった「インナーマッスル」や「体幹」を各自のペースで鍛えることができたのでしょう。

また、この新体操部は球技のような「得点」による勝ち負けや、水泳や陸上の「タイム」との戦いとは無縁でした。(大会に出場する目的ではありませんでした)

リボンやボールといった種具とともに、爪先や指先まで行き届く動作を「軽やかに美しく行う」という新体操の本質に触れた部員たち。

得点やタイムではなく、躍動感そのものの喜びを知った部員たちは、切磋琢磨しながら日々夢中で練習を重ねたそうです。

うれしい結果

新体操部に入部して数か月。
Mちゃんは体力測定でそれまで見たこともない数字を目にしました。
ジャンプ力や柔軟性、瞬発力が大きく伸びていたのだそうです。

「自分にもできるんだ!変われるんだ!」とMちゃんは感動し、一生忘れられない思い出となったそうです。

新体操を通して「躍動」の歓びに目覚めた部員たちは、憂鬱だった体育の授業にも前向きに取り組めるようになりました。

飛び箱や平均台やマット運動では、クラスのお手本になるほどの成果をあげました。

その結果、部員それぞれ体育の成績もグーンと上がったのだそうです。

Mちゃんにとって、コンプレックスが形を変えて自信に変わった経験は、一生の宝物になったようです。

先生も部員ひとりひとりの変化と成長を心から喜んでくれました。

本当の目的

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先生の目的は、ただ創部する為の人集めではありませんでした。

運動が苦手で体育の成績もあきらめてしまい、体を動かすことに対して後ろ向きだった生徒たちに、部活動を通して運動を好きになってもらうこと・自信をつけてもらうことが本来の目的だったのだと、Mちゃんは大人になってから気が付きました。

新体操は他の競技に比べて「ひたすら走ってタイムを縮める」「アクロバティックな動作を繰り返す」など、激しい運動を伴いません。
よって、怪我をする可能性が低かった点も先生が「新体操」を選んだ大きな理由だと思います。

部活動によって授業で出来ない部分を補う。
母から伝え聞いた話ではありますが、先生の教育にかける情熱と行動力に、心から感銘を受けました…!

学校部活動の在り方

Mちゃんの話を聞いて一番胸に響いたのは、決して大会で好成績を残したわけではないけど、大きな自信に繋がっていたこと。

他人からの評価だけではない、自分自身の評価が大きく変わったこと。
他人からの評価は手段を選ばなければすぐ与えることができます。しかし、自分自身の評価は本人にしか変えられず、また時間が必要なものです。本人の気力と体力の充実、そして他人との信頼関係も必要になってくる非常にデリケートな問題です。

体育館の片隅で練習していた小さな新体操部が、確かに、母の人生を明るく良い方向へ向かわせました。

そして、その母の経験が私に勇気を与えてくれています。

現在、部活動はどんどんハイレベルな活動となり大会も過熱化していますが、ふるい落とす場ではなく拾い上げる場であってほしいと願うばかりです。(特に公立小中学校の場合は…!)

そんなMちゃんに育てられた私は中学校吹奏楽部の部活動指導員として3年目の夏を終えました。

生徒たちの人生を豊かにするヒントを、きっかけを、種をいかに多く蒔けるか。
育てる育てないは本人の自由です。
私の使命は「機会を作ること」にあると今は考えています。

目の前の人と過ごす時間。
一瞬は一瞬だけど、その人の一生に繋がっている。
母の体験を胸に、日々生徒との音楽の冒険を続けたいと思います。

(…けっきょく真面目END。笑)

ありがとうございました!
それでは、また次の記事で!

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