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Eduble日本語教室 2022年への課題〜2021年Eduble日本語教室の振り返り②【Aflevering.170】

 オランダの2021年も残り数時間を残すところとなりました。新しく2022年を迎えるにあたって、日本語教室の来年に向けての課題をまとめておこうと思います。

 今年は昨年に比べ、生徒数が増えたため個別学習と小集団学習をどのように展開するかについてたくさん考えました。
 子どもたちは、いつも元気に教室に来てくれて、日本語のコミュニケーションや学習に前向きに取り組んでくれます。そのため、何とか日本語の力をつけられるようサポートしたいと思っています。

「日本語習得度チェック」から見えてきたもの

 9月から新しい学年を迎えたため、それと同じタイミングで「日本語習得度チェック」を行いました。これは、「読む・聞く・話す・聞く」の4つの観点から、日本語がどれぐらいまで理解できるかを確認するために行ったものです。子ども一人ひとりができていることや不足していることに注目しながらチェックを進めていきます。
 評価の出し方としては、1点刻みの点数を出して評価するというよりは、結果によって大まかなグループ分けは行います。
 これからは、このチェックを毎年同じ時期に行い、子どもたちの日本語能力の成長を目で見て確認できるようにしていこうと考えています。 

 結果について分析したところ、「聞く・話す」に関しては概ね問題なく、それぞれ年齢相応の理解や受け答えをすることができていました。
 ただ、教室に通っている子どもたちの家庭言語が日本語なのであまり問題にならないのかもしれません。

「読み・書き」に関する分析

 「読み・書き」については、日本で国語を教えたときには感じたことのない問題があることがわかりました。それは、「読み・書き」のレベルにはかなりの差が生まれていたということです。

 ただ、「書き」は全体的に年齢よりは遅れていました。これについては当然で、仕方のないことだと思っています。
 「読み・書き」というのは、人間の歴史を振り返ってみても「聞く・話す」よりは新しく備わった能力だそうです。また、それらの能力を身につけるためには、当然「聞く・話す」よりも負荷がかかってしまいます。
 そのため、日本に帰国予定の子どもは別として、海外で暮らしていく子どもたちに「書き」のレベルを求めすぎることは酷であり、日本語の学習が嫌いになってしまう可能性があります。

 また、ひらがなに比べてカタカナの「書き」はかなり苦手意識が強いようです。
 私が授業をしていて感じるのは、カタカナが出てくると、年齢に関わらず読む速度が落ちてきます。これはひらがなとカタカナを目にする頻度の問題だと捉えています。

「読む」レベルを分けたもの

 問題は「読み」のレベルのバラつきでした。
 本が好きな子や、家庭で定期的に日本語を読む機会のある子は比較的読むレベルが高いのです。
 その一方で、読むのが嫌いな子や家庭で読む習慣がほとんどない子に関しては、なかなか「読む」力が伸びません。それは当然のことかもしれませんが、週に1回の授業では日本語の刺激を継続的に与えることができないので、維持することは難しいと考えられます。

 宿題の中に「家庭での読書」について記録してもらっているのですが、家庭での読書や日本語の文字に触れる習慣があるかどうかが、読むレベルに関係していることがわかりました。これは当然の関係性とも言えると思いますが、大切なのはその子が日本語で読みたいと思うものがあるかどうかです。
 ちなみに、読書量は多少関連があるものの、ある程度まで読む習慣があるかどうかがポイントです。

 書くことが苦手であっても、「読む」ことができれば、自分で日本語を学びたいと思ったときに学ぶことができます。
 授業の中では、4技能バランスよく取り入れますが、特に「読む力」にフォーカスして学習サポートをしています。
 子どもの興味関心に刺激を与えながら読む力を高めて、自主学習ができる準備を進めていきます。

「漢字」と「語彙」が課題

 漢字に関しては、私の日本語教室の子どもたちが自信を持って書けるのは、今のところ「1年生まで」という印象が強いです。
 子どもによってバラつきはありますが、2年生の漢字からは、その読み方を聞いてもいまいち意味がイメージできないということが出てきます。そのことから、漢字学習はその子が持っている語彙力とつながってくるということが分かりました。

 特に、熟語で「音読み」が並ぶと、もうちんぷんかんぷんになってしまう子がいます。訓読みの漢字は日頃使っている言葉であれば意味がわかるのですが、熟語になったときに、言葉の意味も分からなければ、漢字もわからないとなって学習がなかなか前に進まないという状況がありました。

 そのため、現在は漢字をイメージしやすいように、漢字の成り立ちをしっかり学ぶのに加えて、日常会話や授業の中になるべく熟語のような言葉を使うようにすることが必要だと感じました。つまり、語彙力の強化です。

子どもたちが成長を感じられる場所にしたい

 以上が今年日本語教室での授業をしていて感じた課題でした。とは言っても、子どもたちの日本語学習に対する前向きな姿勢は守り続けなければなりません。
 子どもたちの日本語の力も伸ばしつつ、子どもたちの学習意欲も守り続けたいと思っています。

 私は日本の教育現場で、大人から与えられる学びを続けてきた子どもたちが、学びの消費者と化し、学びに対して消極的になり、大人が言わないとやらないような状態になっているのを見てきたので、なるべく自主的に学ぶ姿勢は大切にするよう心がけています。

 この記録が海外で生活する子どもたち日本語学習の役に立てば幸いです。
 それでは2022年もよろしくお願いいたします。最後までお読みいただきありがとうございました。

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