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Cambridge IGCSE「経済(Economics)」2-1ミクロ経済学とマクロ経済学[391]

 IGCSEのカリキュラムについて学んでいます。現在私が日本語のサポートをしている中学生が学ぶ「経済」に興味があって、記事にまとめています。前回までの第1章は「基本的な経済問題」について触れてきましたが、ここからは第2章「資源配分」に入っていきます。経済学の捉え方や市場の仕組み、価格、経済システムなどについて見ていきます。

手元にある商品はどこから来たものなのか

 チョコレートのアイスバーが初めに事例としてあげられています。スーパーで陳列されるまでに、どのような過程を経ているのかを考えていきます。
 最近では、本当にお店で全部作られて販売されていると考える子どもも多いようです。そのため、実際に目の前の商品がどのように店までたどり着くのかを学ぶことで、物流システムが複雑であることを理解するきっかけにもなります。実際に、カカオ豆が採集されるところからチョコレートバーという商品になるまでの旅路はとても長く複雑なものです。

 ここでチョコレートの歴史について着目します。チョコレートには長い歴史があり、現在メキシコに位置するメソアメリカから始まりました。先住民オルメカ人がカカオの木を発見し、それからカカオを生産してチョコレートドリンクを製造していました。それがきっかけとなり、中米の部族や帝国で数千年にわたって生産・消費されてきました。この段階ではチョコレートが広がる範囲は限定的であるため、ミクロなレベルでのローカルビジネスとして、ラテンアメリカ内での取引や個人の需要を満たしていました。

 しかし、スペイン人の到来によって他の国々もチョコレートに関心を持つようになりました。チョコレートドリンクは固形のものになり、世界中で人気のものとなりました。チョコレートが世界的な需要に拡大したことで、マクロレベルでの生産・消費が行われるようになりました。つまり、かつて部族内で決定されていたことが、大企業や政府が決めるようになっていったのです。チョコレート歴史については、以下の動画で観ることができます。

 このように、チョコレートの歴史を振り返ることで、ミクロ経済学とマクロ経済学の違いを理解することができます。ミクロ経済学は、個人または企業によって行われる意思決定を研究したもので、マクロ経済学は、国と政府全体の決定を研究したものになります。

ミクロ経済学とマクロ経済学

 それぞれの経済学分野には専門用語があり、ミクロ経済学に関しては「消費者・生産者・供給・需要・価格」などがあり、マクロ経済学に関しては、「国民所得・インフレーション・GDP(国内総生産)・失業」などがあります。

ミクロ経済学の研究

 ここでは「個人の意思決定」を研究します。具体的には、どのような要因が消費者・生産者・家計に影響するのか、それぞれ個人の決定が市場において価格・需要・供給にどのような影響があるのかを分析します。そして、個人がどのように適切な資源配分を決定し、市場における商品やサービスの価格をどのように選択・交渉・決定するのかを調査します。
 例えば、燃料を例に見てみましょう。燃料の価格が上昇すると燃料の需要は減少します。それによって、燃料が補完材となる自動車の需要も変化し、自動車産業と石油産業が影響を受けることになります。また、新たに油田が発見されると、供給量が増えるため燃料価格は下落します。

 以下は、ミクロ経済学で考慮すべき問題を掲載しています。

個々の消費者による決定

・商品やサービスの組み合わせ
・商品やサービスの選択に影響を与える要因
・仕事内容や働き方をどのように決定するのか
・将来に向けての支出もしくは貯蓄を決定する方法

企業による決定

・希少な資源の整理や割り当ての決定
・生産や販売の量や価格
・雇用
・資金の調達
・事業の拡大、縮小、閉鎖の決定

政府による決定

・個々の企業やその行動への影響
・社会に役立つ製品やサービスの提供
・不健康な商品の消費を減らす
・企業のコスト削減と生産量の増加を支援するための補助金

ミクロ経済学とは?

 ここでは、ミクロ経済学で学ぶ内容が書かれています。

①製品価格
 消費者の需要、生産者の生産コストが影響する
 商品やサービスの需要と供給の構造
 価格変更に対する消費者の反応(需要の価格弾力性)

②価格設定
 土地(家賃)、労働(収入)、資本(利息)、企業(利益)の要因によって価格が決定する
 市場の構造と生産におけるビジネスコスト

③社会福祉
 社会的有害物への政府の介入
 有害な商品(タバコなど)を求める理由
 有害物を制限する政府の介入の重要性

④その他(経済システム)
 自由市場と混合経済

ミクロ経済学的な分析とは?

 ここで、ミクロ経済学が現実世界の中のどのような経済的な問題とリンクするのでしょうか。以下のような事例が紹介されています。

・イギリスの商品やサービスの生産量が数年で減少している
・処方箋の価格が年々上昇している
・インドでの教師不足と賃金の問題
・UAE政府はタバコの製造時に100%の税金を課す
・インド政府が失業者向けに訓練センターの開設を計画している
・燃料価格の高騰で自動車の需要が減少

 このような事例を用いて、個人の意思決定に関しての経済的な事象やそのプロセスを学びます。

マクロ経済学の研究

 マクロ経済学は、経済全体の経済行動を研究します。それは、ミクロ経済学の対象である個々の消費者や生産者ではなく、経済全体に対する政策や意思決定がどのように行われるかに焦点を当てます。つまり、すべての商品とサービスの総需要と総供給や価格の変動(インフレやデフレ)を考えていきます。このような観点で、マクロ経済学では以下のような問題を扱います。

・経済における政府の役割
・所得の再分配における政府の措置
財政政策(政府支出と税金)の経済への影響
サプライサイド政策(総供給量の増加)が重要な理由
・安定したインフレ率が重要な理由
・政府が失業率を低くしたい理由
・貧困をくい止め、生活水準を向上させるための政策

 マクロ経済学では、経済の特定要因が変化した場合に、どのように経済全体に影響するのかを説明することができます。
 例えば、ジンバブエで近年起こっている物価上昇は現在も続いており、パンを1つ購入するのにジンバブエドルが何百万も必要です。この激しいインフレによって、消費者にとっては物価の高騰、生産者にとっては原材料価格の高騰につながります。これは多くの産業の雇用水準の低下につながり、最終的にはジンバブエの経済成長に悪影響を与えると考えられます。

経済成長と発展

 政府の政策の実施を通じて高レベルの経済成長と発展を達成することに、マクロ経済学は焦点を当てます。ここでの政府の主な目的は、物価の安定を達成し、雇用水準を高め、経済成長を促進し、国際収支を安定させることです。
 さらに、さまざまな政府の目標と実施される政策に関しての研究も行われます。つまり、政府が掲げる目標、需要側・供給側(サプライサイド)の政策について学習することで、経済をより広い視野から捉えることができるようになります。

政府の補助金〜パリの事例(2020)〜

 パリでは、2019年に電動自転車購入に500ユーロ相当の補助金を与えることを検討しました。電動自転車は環境に配慮された乗り物で、自動車などに比べて使用時の温室効果ガスが排出されません(ゼロエミッション)。さらに、環境に悪影響を与える騒音、大気、その他の種類の汚染に対する排出がゼロです。他の交通手段と比べると、環境への悪影響がほとんどありません。

 世界中の政府は、環境を汚染する産業に課税したり、環境に積極的に貢献する企業に補助金を与えたり、環境への有害な影響を減らそうとしています。二酸化炭素排出量の削減と人々の健康のために、電動自転車への消費者の需要を高める取り組みとして、フランス政府はパリ住民に電動自転車の購入を支援する財政援助を提供したいと考えています。約1,000万人の国民に500ユーロ相当の経済援助が与えられる見込みです。

 補助金の形で与えられるこの財政援助は、電動自転車の購入コストを下げるのに役立ちます。これはパリ市民の健康に良い影響を与えることが期待されます。また、国民がより健康になれば生産性も向上し、経済成長の拡大と経済の失業率の低下に貢献します。

 フランス政府の2つのマクロ経済目標は何でしょうか。それは、経済成長の拡大と失業率の低下です。補助金によって、個人の購入決定を変える可能性があり、最終的には電気自転車という特定の市場に影響します。

 最後に、生徒たちに課題が課されます。それは、「新聞のニュース記事をマクロ経済学とミクロ経済学のトピックに関連する記事を見つける」というものです。前回の記事にも書きましたが、学んでいることと現実世界を繋げるアプローチが随所で働いていることから、難しい内容も理解しやすくなることや物の見方に変化が起こることで興味が深まっていくことが期待できます。

 今後も経済をインターナショナルスクールではどのようには学ぶのかについて、これからも記録をしていきたいと思います。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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