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やらなければならないことからではなく、「学びの本質」から考えてみる - オランダと日本は教育でつながっていた - 金森俊朗氏から学ぶこと①【Aflevering.31】

 私は、日本の公教育に関わっている時に抱いていた「教育に対する疑問」を解決するヒントが欲しいと思いオランダに来ました。
 そして、子どもが世界一幸せだと言われている教育について日々学んでいます。
 妻が移住して2年、私が1年、オランダ生活を経験してから感じたことは、教育だけではなく、社会全体をよく見ないといけないということでした。
 さらに、オランダの教育は、子どもたちが社会に出て幸せに生きていくためにあると、特にオランダの小学校で働いている先生方が話しておられるのを聞いたことがあります。そして、教育に関する日本とは違う考えを学び、学びの本質を考える機会になりました。
 そこで、今回はオランダで子どもたちの教育について講演をされた金森俊朗氏の書籍から学んだことを紹介したいと思います。この記事では、金森氏の本から学んだことを、日本語教室での取り組みにどう活かすのかについて、私が考えたことをまとめています。

金森俊朗氏の書籍との出会い

 私がオランダに来る前、高校の教員として働いている時のことです。私が目指していた「子どもが社会の中で幸せに生きていく力を付けるための教育」と、当時学校現場で自分が行っている教育との間に、どうしようもない乖離があることに気づきました。その乖離に気づいてから、「学びの本質」について一度しっかりと考えたいと思っていました。
 それからは本を読んだり、勉強会に参加してみたり、職場で同僚の先生と議論したり、生徒も議論に参加してもらって考えるヒントを探していました。今考えてみると、学校の外で働いている方や職種の違う友人などに教育について尋ねるべきでした。

 そんなことを考えている時に出会った本が、金森俊朗氏の、
・『子どもの力は学び合って育つ』(角川oneテーマ21、2007)
・『学び合う教室 金森学級と日本の世界教育遺産 』(角川新書、2017、辻直人氏も同著者です)

という本でした。

 私はこれらの本に出会い、実際に読んでみて、感動したとともに安心することができました。

オランダで有名な日本の先生

 妻がこちらの学校の先生などにインタビューをさせていただくと、必ずと言っていいほど「ミスター金森は知っているか?」と聞かれるそうです。
 高校教育に携わっていた私たちでも、金森氏の著書は読んだことがありました。また、オランダに講演に行かれたことも知っていましたが、そんなに有名になっているとは知りませんでした。
 2020年に亡くなられた金森俊朗氏が、今も世界一子どもが幸せと言われるオランダの先生たち心の中で生きていると思うと、胸が熱くなります。

日本で授業をしていた時の違和感

 私が高校で社会科を教えている時に考えていたことがあります。それは、社会科を学ぶことによって、過去の失敗を繰り返さない平和な社会を作ることに意欲的になったり、自らが社会に関わろうという気持ちを持ってほしいということでした。
 しかし実際に授業をしていると、授業での学びが大抵は実感を伴わない「テストのための勉強」になってしまっていることにふと気がつきました。
 また、生徒からも「世の中のことを知ったり考えたりすることが大事なのは分かるけれど、大学に行けないと困るので、まずは大学に入るための勉強を教えてほしい。グループワークなんてやらなくて良い。」と言う意見もありました。授業のあり方については、入試制度などと絡むので本当に難しいところです。
 しかし、「本当の学びとは?」という疑問だけにフォーカスすると、教室という空間で行う勉強だけでは不十分なのではないかと少しずつ考えるようになりました。
 そう思ってはいたものの、その頃の私は、物事をゆっくり考える時間的な余裕も広く捉える力もなく、常に業務に追われていました。そして、「考える視野」自体が狭くなっていたのです。結局は、教室の中でどうベストを尽くすかということばかりでいっぱいいっぱいだったのです。

子どもの学びは教室の中だけではない

 オランダに来て日本語教室を開き、日本語学習のサポートをするようになってから、物事を広く丁寧に考えるようにしました。
 海外では、子どもたちが日本語を使う環境は限られていることが多いです。そのため、思いっきり日本語で遊べる機会を作りたいと思い、教室外での子ども向けの日本語イベント「あおぞら教室」を開催しました。その時に、私はあることに気がついたのです。

 日本語教室に通ってくれる子たちも、いつも日本語を学習するメンバーも場所も違うため、いつもとは違う一面を私たちに見せてくれます。
 例えば、教室では大人しく授業を受けている子が、「あおぞら教室」では年下の子たちが上手く参加できるように、分かりやすくレクリエーションの内容を積極的に説明してくれていました。
 その姿を見て私は、この子には私のまだ知らない素晴らしいところがあることに気がつきました。その後の日本語の授業で、私がその子のあおぞら教室での行いについてフィードバックしました。すると、とても嬉しそうな誇らしげな表情を見せてくれて、教室でも元気いっぱい取り組んでくれるようになりました。

 子どもたちのいろんな場面での様子を見ることによって、こちらからのいろんな声かけが可能になります。また、子どもにとっても先生とのいろんな時間を共有したことによって、自分を知ってくれているという安心感もあるかもしれません。
 そのため、今後はトータルで子どもの日本語がサポートできるように、教室の外の学びも充実させたいと考えています。

教室での学びも、より磨きをかける

「日本語を学ぶのではなく、日本語で学ぶ」
 日本語の学びを、こちらが学んでほしいと思っていることだけに限定するのではなく、子どもたちの興味関心まで対象を広げています。
 そして友達と遊んだり、何かのプロジェクトに取り組んだり、何か新しいことを発見するという生きた経験を提供したいと思っています。
 私は、子どもたちの日本語の力だけでなく、子どもたちの人としての成長も支えてあげたいと思いました。

 今は、基本的な日本語学習をベースとして、小学生クラスの生徒たちが、それぞれの自己紹介をみんなでつなぐ動画を作り、その感想を集めてそれを共有したり、教室でできるミニ実験をして、予測と結果の分析をする練習に取り組んだりしています。もっともっといろんなアイデアを出したいと思っています。
 私がここまで考えが広がったのも、金森氏の書籍との出会いがあったからです。

 次回の記事で、金森氏の書籍から学んだことについて記録しておきたいと思います。
 教育に関わる方には、教育制度の変遷に関することも書かれていますので、ぜひ読んでいただきたい書籍です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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